黒水仙
鉄条網に
指を絡ませ
唇に
血を
滲ませながら
羊歯色の
微笑みを浮かべて
発情し
人間どもを俯瞰する
ガードレールには花束
矩形に切り取られた
ビロードの蒼い空
滴り堕ちてゆく夢
ただハルシオンだけで
自分に酔いながら
嘔吐する
もやい綱を手繰り寄せるように
低く永く循環する離人症
手足と痙攣するサーキット
概念だけの死と死と詩
熟れ切った乳房と
腐れかかった苔桃に繁茂する胞子植物
ブロンズの吐息で
走り抜けるメトロ
そして世界は沈んでゆく
器としての子宮のなか
木偶人形のカップルが踊っている
硬いものと軟らかいもの
襞と襞との間
そこにはロボトミーを施された
リーマンサイボーグたちから
毟り取られた無数の耳
びっしりと鈴生りとなって連なり
労働者階級の哀しい
物語が物語られるのを
今か今かと待ち望んでいる
深爪をした指で
ささくれのある指で
髪を梳く
ラジオから
インダストリアル・ノイズが
長閑に流れ
一輪の
黒水仙
見上げれば
富良野の夜空は
満天の星
流れ星に願いをかけたなら
世界はきっと
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