012

 人間に出会いたいと、歌い続けることにした。


 空に向かって、天に向かって、どこかにいるはずの人間に向かって。

 私は歌い続けることにした。



 人々の脳は正常な判断を失っていった。やがてラーベル全体が進歩を止めた。惑星は原始時代に戻り戦争はおろか火薬兵器、鉄器も使うことができなくなった。


 メル・アイヴィーという伝説の歌姫はそれでも歌い続けた。本物の人間に会うために。自分の役割を超えて、心の中にある欠落した本当の人間の温もりを求めて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る