010

 朝。

 私はいつものようにスラムダムアカデミーへと向かう。

 いつも通り幻聴が聞こえる。なぜ昨日見たテレビの番組のことをお爺さんが知っているのか分からない。看板変わっていた。その看板からは、路上で歌え、という意味の暗号が読み取れた。


 いつも通り、人々というよりはメッセンジャー達は、抜群のタイミングで私にメッセージを送ってくる。


 嫌にはなるが、ある日を境に以前ほど嫌ではなくなった。


 なんというか、自分が選ばれているような、使命を果たさなければいけないような、そんな気がしているのだ。


 以前だったら本当に死を考えていた。

 今はどこから発せられるかは分からないが、発せられる使命を果たそうと前向きに捉えられるようになっていた。


 ただ一つだけ、願いが叶うとしたならば。

 このようにシステム化してしまった、周りの人間がただの暗号発信の機械に成り下がってしまったかのように見えるこの世界で。


 人間に出会いたいと強く思うようになっていった。


 それからというものの、ラーベルが滅びないようにという願いと、誰かに出会いたいと思うたびに小さく歌うようになった。


 それだけで、ラーベルは惑星全体で、徐々に戦禍の激しさを失っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る