第15話 また家に戻った私

 クソ野郎の馬車に私とヴァンサンは乗り込んだ。ヴァンサンはクソ野郎を睨みつけ隣に座る私の手を握った!


「本当にパンを匿ってた事は黙ってて貰えるんですか?」


「もちろん!僕は嘘は付かない」

 いやついとった!私と最初婚約してた時ついとったやろ!!浮気しまくりやったろ!!


「それより君本当にオレリー様の事を好きなの?錯覚じゃないの?侯爵家に着いたら僕の愛してる美しい三人に手を出さないでくれよ!?」

 と眉を潜めた。


「出すかっ!!」

 とヴァンサンもキレ気味だ。流石にヴァンサンは美的感覚がおかしいから美人とか見ても大丈夫だろうよ。

 でもこんな事にヴァンサンを巻きこんでしまった事に私は後悔する。それに…お母様や妹やリュシー…ヴァンサンを見たらどう思うだろうか?このクソ野郎にそろそろ飽きて新たな顔のいいヴァンサンに近寄っていったらどうしよう…。残念ながらあり得るんだよなぁ。


 これもしヴァンサンと誰かの甘い声聞く羽目になったら流石の私も立ち直れん。しかも形だけとはいえ、このクソ野郎と結婚することになる…。ため息しか出ない。

 パンを助けなければこんなことにはならんかったのかもしれない。私のせいだ。


 パンめ!ちゃっかりさっさとドレス類持ってとんずらした!!一瞬でも平民仲間で打ち解けてた私を殴りたいわ。


 ゴトゴト馬車で気まずい中、ようやく懐かしの侯爵邸が見えてきた。


「おおっ!凄え!貴族のお屋敷!デカイ!!初めて見た!!」

 とヴァンサンが言う。クソ野郎が何故か


「ふふふ、ヴァンサンくん、君も使用人になるのだから口は綺麗にした方がいいよ?それにもう直ぐあの家は僕のものさ!僕が侯爵家の当主になるだからね!」

 と威張った。なんてクソ野郎だ!

 結局のところ侯爵家の地位が欲しいだけなんじゃないか!?


「んー?俺口に何か付いてる?」

 ガクっ!


「違うよ…ヴァンサンくんは面白いね!使用人としてマナーを身に付けるんだよ!丁寧な言葉遣いを覚えるとかね」

 と言うとヴァンサンは


「ああ…そういうことか…。わかった」

 と言ったらクソ野郎は片目を開け


「わかりました!次期ご当主様だ!」

 と言う。偉そうに!!


「……」

 ヴァンサンは睨みつつも


「わかりました。次期ご当主様」

 と言う。

 ああやだなぁ。こんなの。


 家に戻るとお母様やジャネットやリュシーがクソ野郎を待ち構えていたのか玄関でまた揉めていたし!!なんと言うことか!!

 三人ともスカートをめくりあげて


「ジョゼフ様!!私可愛い下着を手に入れましたのよ!!」

 とジャネットが可愛いパンツ見せながら言い、お母様も黒の大人下着を見せつけて


「あら、そんなお子様の下着より私の方がセクシーでしょ!?今日は私と!」

 と言い、リュシーはメイドスカートをめくりあげ


「ジョゼフ様お帰りなさいませ!お待ちしておりました」

 と言いながらスケスケのエロ下着を誰よりも自分のが凄いことを見せ付けていた。

 しかし私とヴァンサンがいるのを見てきゃあ!と三人はスカートを下ろしパンツ隠した。

 アホかこいつら。いつもこんなことやっとんかい!


「オレリーちゃん!!?そ、それにその方は??」

 とお母様がヴァンサンに早くも色目使っとる。


「お、お姉様…お帰りなさいませ!ど、どうしたのですか?忘れ物!?」


「お嬢様…はしたない所をお見せして申し訳ありません」

 とリュシーも頭を下げたが、お前の下着が一番凄いのちょっと自慢げにしとったやろ!!

 ヴァンサンはボケっとして


「下着を見せ合う習慣の家なの?」

 と聞いてきた。違う!辞めてくれ!そんな家嫌だ!!

 私のが恥ずかしくなったわ!!


「私が帰ってきた事情は、このクソ野郎から聞くといいですわ」

 と言い私はヴァンサンを連れ空き部屋に案内することにした。


「ヴァンサンごめんね?こんなとこに連れてきて」

 と言うと


「いや、オレリーの家凄いや。あ、俺は金とかあの人達には興味ないからね」

 と言う。ヴァンサン…いい奴…。


「後…いつか一緒にここから逃げよう。俺それまでここでお金貯めてやるんだ…楽しみにしててよオレリー!」

 とヴァンサンは言う。


「ヴァンサン…。私を助けようと考えてくれたんだね…」

 と言うといつの間にか出ていた涙を手で拭いヴァンサンは言う。


「うん!オレリー。この家に着いてから嫌な顔ばかりしていて息が詰まりそうだった。こんなとこにいたらオレリー病気になっちゃうな!!


 だからあのクソ野郎と結婚する前に隙見ていつでも出て行けるようにしよう!最悪俺は顔を焼いてもいいんだ!指名手配されたらかなわないし」


 えっっ!!


「そんな!ヴァンサンの綺麗な顔を焼くのだけは勘弁してよ!私の顔ならともかく!」

 そんな芸術品は壊してはならん!!


「?俺の顔が綺麗?変なこと言うんだなオレリー」

 いや、わかってねえな!!この天然め!


「ヴァンサン…。一つ言っておくけど…本当に私といっ、一緒になりたいの?」


「うん?当たり前だよ?オレリーが嫌なら俺は何も言わないけど」


「…嫌…?なんてそんな私みたいなのに勿体ないわよ…。私本当はヴァンサンにはもっといい人が見つかったら応援する気でいたから…」


「そうか…。俺見つかったよ…。オレリーが俺のいい人だよ!」

 と言う言葉に私は俯いていた顔を上げブワリと泣いた。泣いたらもっとブスになるのに!!ヴァンサンはよしよしと私を撫でて軽く抱きしめてくれた。

 ううっ!!


 ヴァンサン…が私の探していた新しい恋の相手なのだと私はようやくわかった。

 そして…恐らくそんな純真で天然なヴァンサンに手を出そうと待ち構えている女三人と私は戦わねばならないなとも思った。

 悪いけどヴァンサン…。ここの女達はしたたかな奴等だ。


 私が守るから!!

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