第14話 冷静になれ私

 人生初のモテ期が到来した。

 男が3人も私を取り合っている!!

 皆睨み合ってあの時の妹や母やリュシーみたい。


 おいおいおい、ちょっと待てよ。

 私みたいなブスを取り合ってお前ら完全に我を忘れてないか?ブスだよ?目の前にいる女はどう見たってブス!

 その証拠に部外者のダレイラクさんはポカンとしているじゃないか。


「皆ちょっと落ち着こうよ?私って…ほら…ブスじゃない?」

 と自分で自分をブスと言う私。泣けてくるぜ。


 ヴァンサンは


「オレリーは可愛いよ!!」

 と言い、パンは


「見た目ならおでも不細工だ!そんなことおでは気にしないだ!」

 と言い、


「オレリー様がブスだからこそ、和むのです!僕は美人や美少女ばかり見て疲れていましたからね」

 とクソ野郎だけ凄え失礼なこと言った。ぶっ殺すぞ!!


 ヴァンサンが怒る。


「あんた、さっきからオレリーに失礼だな!しかも惚れてもないくせに結婚しようとかおかしいぞ?」


「僕からしたら君こそおかしくない?まだそこの不細工な男がオレリー様に求婚するのは分かるけど君は僕と同類じゃないか?何故だい?」

 とクソ野郎が聞く。


「な、何故って…俺はオレリーとずっと一緒に居たいんだ!!」

 と言うとパンが


「旦那ぁ…おでは知っとるで。絵を見たで!ほら、そこの絵!オレリーさんにそっくりの犬を昔飼ってたんだべ?オレリーさんを犬の生まれ変わりだと思ってんべ?そっちのが失礼だべ!」

 とパンのヤツがまともな返しをした!!

 ヴァンサンはうぐっ!と苦い顔したが


「そ、それは…」

 と言いかけ、クソ野郎が


「あははなるほど!やっぱりね!!犬の生まれ変わりで寂しいから側に居て欲しいとか子供かい君は!!」

 と笑いヴァンサンがムッとして


「あんたみたいなクソ野郎に言われたくないな!」


「それはおでも思う。あんたクソ野郎だ!」

 とパンも同意した。私も同意する。

 ついでにダレイラクさんも同意した。

 満場一致のクソ野郎のジョゼフは汗をハンカチで拭き、


「ともかく!僕は貴族なのだから君たちの出番はない!さ、戻りましょうオレリー様!こんな薄汚い靴屋にいることはない!」

 と立ち上がりかけたのをヴァンサンが前に出て止めた。


「オレリーは確かにベスに似てるけどベスじゃない!!アホか!犬が器用に食事や洗濯してくれるか!!オレリーはオレリーだ!!」

 とヴァンサンがまともなこと言ったので一同が驚いた!

 ええっ!?ヴァンサン…貴方本気で私にプロポーズしとったんか!?わかるかっ!!


「なっ!こんなブスに本当に惚れたとでも言うのか!?き、君…頭がおかしいんじゃないか!?と、特殊性癖!?」

 おい辞めろクソ野郎!!そんなこと言うな、ちょっと私もそうなんじゃないかって思うだろ!?


 ヴァンサンは今度はパンを見て


「パン!お前もだ!!前にオレリーが持ってきたドレスやらアクセサリーを見ていたろ!?オレリーがいない時にこっそりと!俺は偶然見たんだ!!あれを売っちまえば結構金になるから結婚とか言っておいて途中でオレリーから奪ってオレリーは捨てる気だろ!!この奴隷上がり!!」

 と言うと青い顔してチッと舌打ちしパンが苦い顔した!!

 お、お前!!そんなこと考えていやがったのか!まじかよ!!


「おやおや、奴隷?ああ、確かに手に包帯を巻いているな?どれ?それを外すんだ…。それに奴隷印を隠していたのか!?ヴァンサンくん?」

 とクソ野郎がくくっと笑う。しまったとヴァンサンは口を隠したがもう遅いよ!!


「……クソ野郎…お願い、見逃してよ!わ、私帰るから。ヴァンサンには罪ないのよ。パンを見つけたのも私だし。パンの仕事が見つかるまでと思ってたけど…お金が欲しかったのね、パン」

 私は部屋からドレスやらを持ち寄りパンに差し出した。


「あげるわ。…出てって」

 と言うとパンは


「へへっ!やった!!あんがとよ!オレリーさん!!じゃ、後は勝手にお幸せに!!ブース!!」

 と言いさっさと荷物を纏めて出て行った。本当に金目的だった!!


「はぁ…なんてことだ…オレリー様は生温すぎますよ…しかし僕と戻っていただけるなら問題ありません。この事は黙っておきますよ」

 とクソ野郎が言う。


 ヴァンサンは


「オレリー!!俺はこいつらと違うからなっ!!俺は鈍いけど一緒に一生ずっと側で笑って欲しかったから結婚して欲しかったんだ!!金に目が眩んだわけでもない!!」


「うう、ヴァンサン…ありがとう…。

で、でもご…ごめんね…?ヴァンサンを牢獄には入れられないから…私も、戻るね?」


「ふふっ!さぁ、オレリー様行きましょうか!僕の平穏の時間の為に!!」

 とクソ野郎が肩を抱き、ダレイラクさんと共に馬車へ乗り込む事になる。ヴァンサンが手を掴み言う。


「オレリー…待ってよ!それに…クソ…伯爵様!オレリー連れてくなら頼みがあります!!」


「ん?なんだい??」

 とクソ野郎が言う。


「俺も連れてってください!庭師でも皿洗いでもするから!!靴が滅びたらもちろん直せるし!」

 とヴァンサンが言う。


「……使用人になりたいってのかい!?」


「はい…」


「ヴァンサン…。平民上がりの使用人なんて虐められるだけだよ!」


「でも!オレリーに愛がない奴の側に置いておくなんてオレリーが辛いだろ!」


「…ヴァンサン……」

 すると手を叩きクソ野郎が笑い出した!!


「良いだろう!ヴァンサンくん!!僕達が結婚したらオレリー様は君にあげよう!僕が3人の相手をしている間は君がオレリー様を相手してあげたら良いさ!さぁ、荷物を纏めておいでよ、待っててあげる!」

 とクソ野郎が馬車へヴァンサンも招いたのだった。

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