第8話 戻ると修羅場だった私の家

「はー…」

 ゴトゴトと揺れる馬車で半日かけて邸に戻ってる。ナタリーさんは


「どうしたのです?さっきから折角元気になったと言うのに?」


「いえ…別に…」

 このまま着かなきゃいいのになー。

 しかし無情にも馬車は普通に着いた。


 しょうがないか。


 馬車を降りると慌てて従者が駆けてきた。


「オレリーお嬢様!!お帰りなさいませ!!長旅ご苦労様の所申し訳ありません!な、なんとかあれを止めて下さい!」

 と従者が叫ぶのは玄関の方角。

 頭がガンガンしてきた。

 嫌な予感。



 *

 玄関にナタリーさんと入るとそこは修羅場であった!


 妹のジャネットとお母様のエリーヌ、侍女のリュシーとそしてジョゼフさんが勢揃いで女達は睨み合いジョゼフさんは汗を垂らしていた。


 うわぁ!戻っちゃいけないとこに来た。


「あっ!お姉様!!」

 ジャネットが涙を浮かべながら飛びついてきた!


「ど、どうしたの?」

 と聞かなきゃならん状況だ。


「お姉様が療養に行っている時に!あろうことかジョゼフ様とお母様が!お姉様という婚約者がいるのにお二人がみだらな事を!!ああっ!とても信じられませんわ!!」

 と顔を覆いすすり泣くジャネット。お前もそうやんけ。

 それにお母様も


「なんてことを!う、嘘よ!ジャネット!貴方こそ!ジョゼフさんといやらしい事をしていたじゃないの!私は見たわ!」

 お前も嘘つくな。


「お母様こそ!嘘だわ!!」

 どっちもやろ?


「やめてください奥様、ジャネットお嬢様!」

 とリュシーが困る。


「「貴方もよ!!リュシー!!」」

 と突っ込まれるリュシー。そらそうよね。どうなるんだこの茶番は!


 そしてあわあわしとるジョゼフ。お前が元凶やろ!!


 それにナタリーさんが青ざめてブチキレた!!


「奥様!ジャネットお嬢様!リュシー!ジョゼフ様も一体どういう事なんですか!!?貴方達全員!オレリーお嬢様をなんだと思ってらっしゃるのですか!!全員揃いも揃って舐めているのですか!?オレリーお嬢様が…ブスだからと!!」

 いや…うん…言いたいこと言ってくれて手間省けたけど最後のブスは酷いな。


「ナタリーさん…あ、安心して?私知っていたのよ。だから悪いけどジョゼフさんとは婚約破棄しますので後は皆さんで話し合って侯爵家を纏めていってくださいな。私は平民として家を出て行きますから、ほほ」

 と遠慮がちに部外者アピールしといた。

 だが…


「は!?お姉様どういうこと?何故出て行くのですか!?」

 何故ってお前!こんなん出て行くやろがい!!


「そうよ!オレリーちゃん!どうして!?悪いのは…そ、そうこの人よ!ジョゼフさんが!!」

 まぁそうやろね。こいつ三股しとるからな。


「オレリーお嬢様聞いてください!私は被害者なのです!誘ってきたのはこの男です!いくらお嬢様の婚約者でも奥様と妹様にも手を出していたのですから!」

 とリュシーも反論してきた。

 ジャネットも


「そうよ!私も!!ジョゼフ様が夜に部屋に訪ねてきてお酒を飲まされて無理矢理口説かれたの!この人が悪いの!」

 お母様も


「わ、私もよ!!ジョゼフさんが昼間お仕事が大変だからと、手伝ってくれてたんだけど途中から私を口説いてきたのよ!!夫が死んで一人で可哀想だとつけ込まれたの!!信じてオレリー!襲ってきたのはこのケダモノよ!!」

 と言う。すると黙ってたジョゼフさんも綺麗な顔を歪め逆キレた。


「なんですか!揃いも揃って!それに貴方達全員僕の事を愛していると何度も言ったし僕を求めて来たのも事実でしょう!!」

 と言う。


「そんなっ!私は違う!」

「私も!」

「嘘は辞めて!」

「誰が嘘つきなんだ!!」

 と大揉めだ。言っとくけど全員嘘つきだ。ナタリーさんが心臓を抑え出した!ヤバイ!


 私は息を吸い込み言った!


「うるさーーーーーい!!!!いい加減にしなさい!貴方達!!見苦しいったらありゃしないわ!!」

 その場がしんとなる。


「もうどうでもいい事だと思っていたわ。…まず私は浮気された時点でジョゼフさんのことはもはやクソ野郎としか思ってません!!」

 ジョゼフさんが青ざめた。


「クソ野郎…」

 と呟いた。そうだ、クソ野郎黙ってろ!!


「それから私はお母様の子供では無くお父様と娼館の平民の女との子だと知りました!今まで育ててくれてありがとうございましたわ!」


「オレリーちゃん!し、知ってたの?私は本当の娘として…」


「お姉様!?嘘でしょ?血が繋がってないなんて!?」


「いや、ジャネット…そこは見たらわかるでしょ?これで私が侯爵家を継ぐ理由はないしジャネットが後を継いでいってね!」


「お、お嬢様がへ、平民!?そ、そんな…」


「リュシー…そうよ!伯爵家出身の貴方より余程格下の身分よ私は!!だからもう気にしなくていいわ!これから私は出て行くから!!クソ野郎とは婚約破棄します!!後のことは4人でじっくり話し合ったらいいのよ!」

 バーンと指を刺し全員に私ははっきりと告げて自分の部屋で荷物を纏め始めた。

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