最終話~覚悟を決める~

あれから数日が過ぎだが、未だに行方はわからないそうだ。


何故オーガがいたのかも……。


もしかしたら、飼っていたのでは?と推測されたようだ。


貴族の中には、そういった趣味の者もいるらしい。




そんな中、俺は実家へと顔を出していた。


親父と兄貴がいない隙を狙って……。


「エリカ、ただいま」


「お兄ちゃん!」


勢いよく抱きつかれる。


「おい? はしたないぞ?」


「関係ないもんっ!」


「ふふ、良かったわね、エリカ」


「うんっ!」


「母上、お無沙汰しております」


「どうやら、また成長したみたいね」


「ありがとうございます……お聞きになりましたか?」


「騎士爵位を得たのですね? ええ、ランドが荒れていましたから」


「申し訳ないです」


「いいのよ、前も言ったけど貴方は貴方の道をゆきなさい」


「……はい、わかりました。エリカ、俺はこれから成り上がるつもりだ」


「えっ?」


「そして、お前に無理強いなどさせない。親父と兄貴が、お前が嫌がることを強制するなら、俺がそれを阻止しよう」


「お兄ちゃん……」


「まあ、何もなければそれでいい。お前は、自分の好きなように生きなさい」


「でも……」


「今はまだ考えなくて良い。ただ、覚えておいてくれ。お兄ちゃんは、何があろうとお前の味方だと」


「……うんっ! お兄ちゃん大好きっ!」


そう言い、花が咲いたように笑う。

そして、この笑顔を守りたいと強く思う。




親父達に気づかれる前に、屋敷を出る。


バレたら母上やエリカ、セバスとクリスが怒られてしまう。


そして、家臣に当たり散らすのは目に見えている。


いつか……和解できる日は来るのかな?


親父や兄貴が改心をして、家族仲良くなれる日が……。


俺は別に我慢できる。


せめて、母上とエリカには優しくしてほしいと思う。


「……考えても仕方ないか。さて、この後はどうするかな」


仕事休みいうことで、今日も特に予定はない。


「あっ——いましたわっ!」


「いましたねっ!」


「はい?」


二人に腕を組まれる。


「ワタクシのが早かったですわっ!」


「いーや! 私の方が早かったですっ!」


「ま、待てっ! これは何だ!?」


両方の腕が、とても柔らかい物に包まれている。

しかも両隣から……脳内を刺激する甘美な香りがする。


「へっ? ……わ、ワタクシったら!」


慌ててホムラが離れる。


「えへへー、これで独り占めですね!」


「いや、お前も離しなさい」


「え〜……まあ、仕方ありませんねー」


「で、なにがどうした?」


「いや、その、休みならお出掛けでもと思いまして……」


「2日は我慢したんですよー? ユウマさんにも予定があるでしょうし」


「なるほど。それでかち合ったと?」


「途中で出くわしまして……」


「見つけた方が出かけるってことでー」


「同時に見つけたと……あれ? 俺の意思は?」


「こ、このワタクシの誘いを断るのですか……? うぅー……」


その綺麗な顔に、暗い影がさす。


「えぇ!? こんな可愛い私の誘いを断っちゃうんですか!?」


いつもの天真爛漫な笑顔が、驚愕に染まる。

……ハァ、仕方ないか。

俺とて、興味がないわけじゃない。

ただ、自分のことは後回しにしているだけで……。


「わかったよ。母上にも、女性に恥をかかせてはいけないと言われているし……」


「素晴らしいお母様ですわっ!」


「全くです! じゃあ、行きましょう!」


「わかった! わかりました! だから——引っ張らないでくれぇー!?」


俺の叫びも虚しく、二人に付き合わされるのだった。


まだ時間はかかるけど、二人の気持ちにも応えないといけない。


大事な仲間であり、素晴らしい女性である二人に……。

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