43話乱入者

 さて……入る前も思ったが。


「屋敷というか、もはや城だな」


「広いですねー。どこから行きましょう?」


「分かれるのは愚策だろうぜ」


「いや、その心配はなさそうだね」


「誰か来ますわ」


「オイラが前に出ます!」


 それぞれ武器を構えて、臨戦態勢に入る。


 すると……十数名が現れる。


「団長、賞金首が何人かいるぜ」


「しかも四級クラスまでいますねー」


「えっと賞金首の強さは、冒険者ランクと一緒だから……オイラ達、か、勝てますかね?」


「余裕ですわっ!」


「まあ、アタイも本気でやるよ」


「戦力は倍か……不思議と負ける気はしないな。一応聞いておくが、大人しく捕まる気はあるか?」


「もう後にはひけねえ」


「お前達を殺す」


「悪く思うなよ!」


 鬼気迫る表情か……どうやら、殺す以外には解決策はないようだ。

 そもそも手加減なんかできる相手じゃない。


「ユウマさん、解放しますかー?」


「いや、まだ良い……何か嫌な予感がする」


 悪寒……? 寒気がする? いや、今はこちらに集中だ。


「イージス、お前はホムラを守ってくれ」


「はいっ!」


「ホムラは俺達を巻き込まないように魔法を撃て」


「仕方ありませんねっ!」


「アテナさん、援護を頼みます」


「あいよ」


「アロイス、シノブ、俺と共に突っ込むぞ。ガードと回復は任せろ」


「おうよ!」


「あいさー!」


「では——いくぞ!」


 皆が一斉に動き出す。


「シッ!」


「遅いねっ!」


「ぐぁ!?」


 弓兵を、アテネさんが仕留めていく。


「魔法を撃て!」


「オホホッ! ワタクシの出番ですわっ!」


 魔法は、ホムラが相殺する。


「オラァ!」


「ヤァ!」


 前衛をアロイスとシノブに任せ、俺は全体を俯瞰する。

 戦力はどうだ? 力量は? 一番強い奴は?


「どこ見てんだ!」


「ユウマさん!」


「問題ない」


 間合いに入ってきた敵を一刀のもとに斬り伏せる。


「クハッ!? な、何故……こちらも見ずに……」


「ふむ」


 最近、また自分が強くなっている。

 今のも、間合いに入って瞬間に身体が動いた。

 やはり、叔父上との稽古の成果か?

 魔力量も上がって来ているし……。


「ユウマ! ごめんなさい!」


「いや、良い——ホーリーガード」


 ホムラが相殺しきれない魔法を、俺がガードする。

 やはり、そうだ……普段より魔力が減っていない。

 家を出る前は十回が限度だったが、今なら倍は余裕だな。


「は、話が違うぞ!?」


「たかが中級クラスの冒険者じゃないのか!?」


「どけっ! 俺がやる!」


 一番強いのは……あいつか。

 最後に言葉を発した奴だ。


「団長、あいつが四級クラスの賞金首だぜ」


「確か、ドランとか言いましたっけ?」


「では、俺が相手をする」


「あぁ!?調子にのるな——アベェ!??」


「なっ——!?」


「グルァ——!!」


 今、ドランを踏んづけた生き物は……。


「お、オーガだと!?」


 俺の頭の中を一瞬で情報が駆け巡る。

 オーガ、それは三級の魔物。

 魔物も人間も食う雑食の魔物。

 大きさは三メートルほどで、がっしりとした体型。

 手には棍棒を持ち、その怪力で全てを粉砕する。

 その強靭な肉体は、多少の魔法や武器すらも弾く。


「ギャァ!?」


「や、ヤメロォォ!!」


 敵側は、あっという間に蹂躙される。


「オァァァァァ!」


 咆哮する——両手に人間の首を持ちながら。

 俺の身体から冷や汗が止まらない。

 どうする? 逃げる? 勝てるか?

 いや……逃げ切れる相手ではない。


「やるぞ!」


「おう!」


「はいっ!」


「仕方ないね!」


「オイラが前に出ます!」


「まずはワタクシが——フレイムランス!」


 威力のある中級魔法が、オーガに向け飛んでいく。


「スゥ——ゴァァァ——!」


「っ——!」


 なんつー咆哮っ! しかも、その咆哮で魔法を消しやがった!


 しかし、それでもイージスが奴に突撃をする!


「ガァァァ!」


「くっ!? 団長! 今のうちにっ!」


 盾により、攻撃を防いでいる。


「少し耐えてくれ!」


 どうする? 倒すには? 魔法はもっと威力がないとダメ。

 俺の魔法剣ならどうだ? シノブの真祖化は?

 ダメージを与えて、相手を削った上でトドメを……。


「ユウマさん!」


 シノブが目で合図をする。


「……出し惜しみしてる場合じゃないか。許可する!」


 なんで、こいつがこんなところにいるとか。

 伯爵は?? アテナさんは?

 そういった疑問も尽きないが……それも生き残れたらの話だ。


「ヤァァァ——!」


 シノブの状態が変化する。

 ちなみに、ホムラやアテネさんには教えてある。


「アロイス! ダメージを恐れずに突っ込めるか!?」


 おそらく、生半可な攻撃じゃビクともしない。


「おうよ!」


「アテネさんは牽制を! もしくは急所狙いで!」


「あいよっ!」


「ユウマ!わ、ワタクシは!?」


 振り向くと、少し震えているホムラがいる。

 無理もない、自信がある魔法をかき消されてはな。


「あれより、威力のある魔法は放てるか?」


「も、もちろんですわっ! ただ、時間がかかるのですっ! あと、この建物が持つか……」


 時間稼ぎと、建物に押しつぶされないようにするには……。


「よし……決まった。ホムラ、準備を進めてくれ。タイミングは、俺が合図を送る」


「ユウマ……わかりましたわっ!」


 さて、後は上手くいくかどうかだな。

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