第2話 ミスフィート

 目の前で、罪の無い人を簡単に殺した、明らかにヤバイ奴ら三人に囲まれた。

 ヤバイというか、もう見た目が世紀末でヒャッハーしてそうな雑魚敵だ。


 いや、一般人からしたら、雑魚敵というよりも手に負えない凶悪な存在か。

 今ならあの有名な漫画の、悪党に一瞬で殺される村人の気持ちが良くわかるぞ・・・。



「なんだコイツは?変な服着やがって!」

「黒い髪ったぁ珍しいな」

「どーでもいいわ!とにかく生意気だ。ぶっ殺してやる!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺が一体何をしたって言うんだ!?」


 俺を珍しそうに見てるんでワンチャン助かると思いきや、やっぱり殺す気マンマンじゃねえか!

 マズイぞ・・・、このピンチをどうやって切り抜ける!?


「テメー、こっち見てただろうが!」

「とにかく気に入らねえんだよ!」

「ちょっと聞いてくれ!俺はこの国の人間じゃないんだ!上の偉い人に会わせてくれないか?」


「あぁ?他国の密偵だと!?生かしちゃおけねえ!」

「もういい、死んじまえよ!」

「怪しい奴だ!殺せー!」


 ダメだ!こいつらまったく話が通じねえ。クッソオオオ!万事休すか。


「ぐあッ!」

「あ?どうし、ガハッ」


 な、なんだ?何が起きた!?


「クソ野郎共が!死んで詫びろ!」

「テ、テメーは反乱軍の!?」


 なんか急に現れた美女がヒャッハーな男達を倒し始めたぞ!?

 もしかして俺、助かった?


「ぎゃああああ!」


 その女は最後に残ったモヒカンを剣で薙ぎ払い、全員に剣を刺し息の根を止めて行く。

 筋骨隆々な屈強な男共を一瞬で斬り伏せるとか、この女は一体何者なんだ!?



「すまない、本当に助かった!あンた、いや、貴女はとんでもなく強いんだな!」


 女が剣を鞘に納め、俺と向き合う。


「キミは・・・、この国の人じゃないな?こんな酷い所に何をしに来た?」

「気付いたらこの場所にいたんだ。理由はむしろ俺が聞きたい!」

「??」

「教えて欲しい!一体ココはどこなんだ?」


 助けてくれた恩人に質問責めなんてしたくないが、何としてもこの人から情報を聞かねばならない。


「キミは、此処がどこだかもわかっていないのか?尾張の国だよ」


 ・・・へ?オワリ?終わり?・・・いや、尾張??


「尾張って、え?ココは日本なの?」

「ニホン?何だそれは?」


 もうまったく意味が分からない。やっぱりオワリって名前の国か。


「とにかくこんな場所でずっと話しをしてるのは拙い。兵士に見つかるとやっかいだから場所を移すぞ。私について来い」

「わ、わかった!」


 確かにこんな現場にいたんじゃ何が起きるかわからんので、美女について行くことにした。




 ・・・・・




 裏道を進んで行き、今にも崩れそうなボロ小屋に入った。

 埃を払って適当な場所に座る。


「此処なら大丈夫だろう。聞きたい事があるなら話してみろ」


 もう聞きたいことがありすぎて、何から聞こうか迷うな・・・。


「変なことを聞くようで申し訳ないんだけど、ココは地球なのか?」

「チキュウ?なんだそれは」


 なるほど、今のセリフだけでよーくわかった。ココは異世界だ。

 ただ、それならなぜ言葉が通じるのか意味不明だが。


「俺が住んでいたのは、ちきゅ、いや、日本という国だったんだけど」

「さっきも言っていたな?ニホンという国から来たのか。それは一体どこにあるのだ?」

「えーと・・・、そもそも世界が違うようだから説明しにくいなぁ、東の果てにある島国とでも思ってほしい」

「ほう。東の果てか・・・、随分遠い所から来たのだな」


 もう国の話しはいいや。違うことを聞こう。


「話は変わりますが、貴女がさっき倒した三人組って何者なんです?いきなり殺されそうになって驚いたんだけど、ココじゃその辺を歩いてるだけで悪者に襲われたりするの?」

「ああ。この国じゃあんなの日常茶飯事だ。ジャバルグが大名になってからは、奴の手下共が好き勝手に暴れるようになった。まあこの国は地獄だな」


 ・・・・・・そんなんで国が成り立つのか?


「っていうか大名?戦国時代の殿様がそう呼ばれていた気がするけど、その大名のこと?」

「戦国時代?・・・とにかく大名ってのはその国で一番強い奴の事だ。ジャバルグを倒せばキミが大名になる事も可能だぞ?」

「えーと、すなわち強い奴が国で一番偉くて、好き勝手出来る世界なのか」

「そういう事だ。キミは他国の人間だから大丈夫だろうという事で話すが、私はこの酷い現状を打破する為に反乱軍を作り、ジャバルグの軍と日々戦い続けている。名はミスフィートと言う」


 反乱軍のリーダーか!確かに強かったもんな。


「俺の名は、織田小烏丸」

「オダコガら?なんか難しい名前だな」

「ああ、スマン!小烏丸と呼んで欲しい」

「コガラス、マル?短くしても呼びにくいぞ」

「長ったらしい名前でスマン」


「で、キミはどうするつもりだ?外に出たらきっとまた兵士に襲われるぞ」


 ジャバルグ軍ってホントとんでもない集団っぽいしなあ・・・。こんなクソみたいな世界で、俺は一体どうしたらいいんだ?


「他の国の治安って、どんなもんなんです?」

「んー、そうだな・・・。隣の三河の国では最近大名が倒されて交代したらしい。この国よりはマシだろうけど、治安が良いかは正直わからないな。美濃の国や伊勢の国は大名が腐ってるから治安も当然悪いだろう。それでもこの国よりかはマシか」


 なんか三河とか美濃とか伊勢とか言ってるよな?じゃあやっぱココは尾張なのか?でも日本じゃないとか、ワケが分からなすぎて頭がどうにかなりそうだ。

 とにかくこの世界で生き残る為には、今この場で決断しなけりゃならん。


 よしッ!決めたぞ。



「俺を反乱軍に入れてはもらえないだろうか?」

「だが断る!」



 ・・・は!?いやいやいやいや、そこは軍に入る流れじゃないんかーい!

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