【四】もう何も怖くない

~~~『不運☆品目』とは?~~~

「第X位、XX座。アンラッキーアイテムは・・・」と、ラジオ番組。明け方に1度だけ放送される。テレビでは企画が通らずラジオになったと噂される番組だ。SNSで話題になっており放送後に誰かが結果をアップする。

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【不運☆品目 『風呂』 ×タクヤ 『31歳/独身/システムエンジニア/いて座』】


『いて座のアンラッキーアイテムはお風呂。1日くらい入らなくても大丈夫。気になる人は制汗スプレー、シューで乗り切りましょう!』

 タクヤは早起きをして番組をチェックする。アイテムに興味はない。声優のファンなのだ。タクヤは大のアニメ好き。幼女から大人の女性まで幅広く演じるこの声優のアニメは欠かさずに見ていた。


 その日、タクヤがワンルームマンションに帰宅したのは夜10時。システムエンジニアは残業が多い。

「やっぱり帰ったらすぐに風呂だな」

 アンラッキーアイテムだとしても、風呂をめる気はなかった。

 熱めのお湯をめた湯舟にドボンとかった。

「これをめるなんて無いわー」

 タクヤは目を閉じて1日の疲れを癒した。


 2分後。

 パッと照明が消えた。

 タクヤは慌てて目を開けた。

「停電か?」

 その時、ギギっとドアが開く音。浴室ドアではない。その向こうにある洗面所の横のドアだ。

「!?」

 ぴしゃ、ぴしゃと雪が解けたあとに地面を歩くような足音。


 タクヤは息を呑んだ。


 浴室ドアの半透明のパネル越しにシルエットが映った。

 長い髪の女性・・・・・・。

 手に何か持っている。


「ひぃ」

 






 

「手のんだことは止めろ。カエデ!」

 照明がいた。そして、浴室ドアがガラっとひらく。

「なんでばれたの~」

 タクヤの2つ下の彼女、カエデが顔をのぞかせた。

 合鍵を持っており、週に何度か泊まりにくるのだ。


「『不運☆品目』 をネタにするのこれで何回目だよー」

 カエデはペロッと舌を出して笑顔。

「たっくんが帰ってくるのをベランダで1時間も待ってんだよぉ」

 手にはれたモップを持っている。そこまでやるか? タクヤは失笑した。


「これはバツだー」

 タクヤは湯舟のお湯をカエデに向かってけた。

「キャッ。床、塗れちゃうでしょー」

「お前がらしたんらから一緒だろ」

 カエデは浴室ドアを閉め、いそいそと床を拭き始めた。


 タクヤは改めて湯舟で目を閉じた。

 来週、二人は入籍する。来月にはここを出て二人で暮らすことになっている。

「きっと、楽しい家庭になるんだろうな」

「たっくん、何か言った?」

「いいや、なんにも。ちゃんとくんだぞ」

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