5日目、ごめんなめてた露地栽培

 もうさ、勘弁してやるが良いと思うんだ。


「あ?」


 タイトルでさ、正直に告白してるわけじゃん?


「……だから?」


 これ以上さ、弱者を追い詰めても何も出ないよ。


「……」


 ジトるなジトるな。

 怖いから。


「そーゆーのいいから」


 いや、そーゆーのいい、って言うのが、こっちサイドとしては、そぉゆぅのぉもぉいいですぅ、って感じで。


「出せ」


 えww

 出せって何を?


「はよ出せって」


 だから何も出ない、って言ってんじゃんww


「なに開き直ってんだ、アンタ」


 いや、開き直ったわけじゃないけどさ。

 そりゃぁ、出せ、と言われれば出しますよ。


「じゃ、さっさと」


 だけど、出せてもせいぜい老廃物よ?

 これじゃただのデトックスだよww


「アンタをデトックスしちゃったら、コジカ、という存在そのものがこの世から排出されちゃうじゃない」


 上手いこと言うじゃないっ♪

 って、誰の存在そのものが毒素やねーん♪


「ってか、この妄想日記? いや、すでに日記の体すら整ってないけど。これ自体が老廃物? 毒素みたいなもんでしょ」


 ヒドイな毒素ってww


「だってさ」


 はい?


「考えなく書き散らかした本人だけが、出すもん出したみたいにスッキリして。それがメチャクチャ面白かったなら、まぁ、まだ許されるけど。別に……ねぇ」


 う……ぐ……。


「その上、読んで得られる知見だとか、気付きだとか、そういうのもあるわけでなく? ただダラダラと垂れ流したような文章が続くだけ」


 あの、ちょっとメブちゃん……。


「まぁ、脳ミソースのムダ。とは最初に言ったことだしねぇ。なにひとつ役に立つことなんか、アンタに、書けるわきゃない、よねぇ」


 いや、そんなことは。


「書・け・る・わ・きゃ・ない、でしょ」


 いいいいいいいや、ありますって!


「へぇ」


 ひ、一つくらいは。ほんの一握りの砂、いやさ、砂粒ひとつ分くらいのお役立ち情報は書けますってコジカにも!


「期待値0」


 ぐぐ、ぐぐぐっ……!

 あれでしょ?

 露地栽培で、速攻で苗をダメにしちゃった理由でしょ?

 もしも、これから同じように家庭菜園やるとか、まかり間違って露地栽培メインで『新規就農しよ~』とか、思い付いちゃうウッカリさんの役に立つこと書きゃいいんでしょ!

 簡単っすよ、そんなの!


「それで?」


 だ、だから、まずインゲンマメが発芽しなかったのは、種が「古」過ぎたからっ!


「は? 種なんて、古いも新しいもないでしょ」


 いや、あるんですって。

 種にはね、発芽に対する有効期限ってのがあるの。

 今回まいたインゲンマメの種は、冷蔵庫で保管はしてたものの、およそ3年ほど有効期限を過ぎてたの。

 要するに、種自体が、もう「死んでた」ってことなのよ。


「種の有効期限って、そんなんどうやって知るのさ?」


 いや、種の入ってる袋に印字されてるから。


「じゃ、見たら一目で分かるってこと?」


 そ、そうね。


「はーww じゃ、期限切れなの分かってて、なんで蒔いたの?」


 ワンチャンある……かな、と思って。

 捨てるの勿体ないな、と思って。


「うーわ。失敗を引き起こす典型的なムダ思考」


 たまに期限切れてても発芽することあるんだって!


「それで今回は全滅だったと?」


 はい。


「アンタ、バカァ?」


 うわ。

 突然のアスカ。

 ツンデレヒロインに言われてみたいセリフ、堂々の第3位くらい。


「で? 他のは? あと何あったっけ? スイカは? あれは種じゃなくて買った苗だったでしょ」


 スイカは……1本はネキリムシに株元からちょん切られて。

 もう1本も同じように株元から切れてたんだけど、これはおそらく、風でキリキリ舞いさせられて、ネジ切れたんだと思う。


「風でネジ切れた? そんなことあんの?」


 ほら、スイカって蔓性で伸びていくでしょ。

 ある程度の大きさまで伸びれば、ちょっとした強風に負けることもなくなるんだけど、初期はけっこうクルクルと風にもてあそばれるのよ。それでネジ切れることも、ままあって。

 で、そうならないように……いや、これは後から周りの人がやってるのを見て気付いたんだけど。

 ホットキャップ、ってのを被せて守るのよ。


「ホットキャップ。あぁ、あの半球型の、透明プラスチックのやつか」


 そうそう。

 あれって、苗の周辺を温めたり、遅霜から守ったり、主に『温度がらみ』のものだと思ったんだけど、それだけじゃなく風よけにもなるみたいで。

 今回それをつけなかったのは、植えたのがGW直前で、温度的には問題なかったからで。


「で、風よけ効果を見誤って自爆、と」


 ぐひっ。


「ネキリムシなんざ、最初にそれ用の農薬を土に混ぜときゃいいだけだもんねぇ」


 そうなんだけど!

 一応言い訳させてもらえば、農薬には適用があって、全ての野菜に一律で使える農薬ってないわけ。

 なのに、たった2株のスイカに適用した農薬だけ買ってこれないでしょ?

 農薬って高価だし。

 農薬にだって使用期限あるし。

 そして保管場所だって、ちゃんとしてなきゃいけないし。


「で、もろもろ天秤にかけた結果、虫のエサにするための苗を植えた、と」


 ぐひひっ。

 言い方の殺傷力がヒドイ。


「はい、次。きゅうり」


 スイカの場合とほぼ同様です。

 ちょうどスイカの隣に植えてたんで。

 ただ、少し違った点もあって。

 おそらく1本は苗立枯病に罹患したかと。


「苗が最初の頃に枯れる病気か。それも農薬ケチったから?」


 うーん、ちょっと違う、かな。

 予測ミス?


「うわ、ケチより酷い理由」


 くっ。

 この病気は糸状菌、いわゆるカビの仲間によって引き起こされるわけなんだけど、これを発症前に農薬で抑えようってなると、病気の発生を前提に予防的な農薬を使わざるを得ないのよ。


「きゅうりを専門に作る人はやってんでしょ」


 そりゃ、それで生計たててるわけだからね。

 でも、自家消費用にそれやるのは労力・コスト的にキツイ。

 時間を掛けられる場合は、太陽熱を利用した、農薬に頼らない消毒方法もあるんだけど。


「そんな良い方法があるなら、やればよかったのに」


 良い方法だけど、手軽ではないの。

 透明のビニールマルチで土を覆って、太陽の光をたっぷりと浴びせて土の中の温度を上げに上げて、余計なカビなんかが死滅する状態を作り出さなきゃいけない。

 具体的に言うと、土中の温度を40℃以上、かつ24時間以上保つ……っていう。


「え? 土の温度を40℃以上って、そんなん出来るの?」


 7~8月の、真夏の太陽の下ならば。

 実際、トマトのハウスではやってるのよ。

 締め切ったビニールハウスの中なら、晴天が続けば春先でも可能になってくる。


「じゃハウスじゃない露地でやるってのは……」


 春だとなかなか難しい……ってか、効果が低いかな。


「ふーん。でも、そういったリスクがあるってのは、承知の介でやったんでしょ?」


 ワ、ワンチャンあるかなって……。


「アンタ、バカ」


 アスカですら語尾は疑問形だったのに。


「ナス。そんであと、オクラ」


 これもどっちも苗立枯病かと。


「はい、アンタ、大バカ」


 ええ、ええ。

 こうなったら、大バカのそしりも甘んじて受けますよ。

 オクラはとくに顕著でした。

 定植3日後くらいに、まとまった雨が降ったんだけど、その直後にテキメン2株とも枯れていったからね。

 立枯病の菌は水カビの仲間だから、雨水の流れにのって、オクラにヒャッハァアアアアッって感じだったんでしょうよ。


 まー、土の物理性、この場合は特に排水性なわけだけど、ここの改善って言うか、作り込みもロクすっぽしないままに苗植えちゃったからねぇ。


「……なんか、理由聞いてるとさ」


 いかに露地栽培ってのが、難しいものか分かるでしょ?


「ほぼ全部、コジカの準備不足、いや想像力不足ってことに尽きない?」


 そ、そそそそそそそそそそそそそ、そんななななことわわわわわわわわわわっ!


「だって、ワンチャンいけるかな~って、やってみて、あ、やっぱりよくある失敗に着地しましたぁ~あはは~ww って感じじゃん」


 ぐ……ふひゅっ……。


「まぁ、自家消費の家庭菜園だから手抜きしたってことなんだろうけど、でもだからって、少なくとも、農家のやっていい失敗じゃないよね?」


 か、かえす言葉もござぁません……。


「まー、見事に? 今回はタイトル通りの内容だったってわけだ」


 は、はい。

 仰る通りで。

 ごめんなめてた露地栽培、です。


「アンタ、バ……もういいわ」


 うわ。

 アスカにまで見限られた。

 ヒギィイイイイイイイイイイイイイイイッ。

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