第35話 ドラゴンの巣窟

 出迎えてくれたエルダー・ドラゴンさんは以前の様な威圧感は一切なく、紳士的なドラゴンさんだった。


「エルダー・ドラゴンさん、今回はどうされたのですか?」

「マユミ殿、私の事は〝メリダ〟とお呼び下さい」

「わかりました。では、メリダさんと」

「はい、ありがとうございます。長旅でお疲れでしょう、中の方へいらして下さい」

 

 そう言われて、大きな洞窟内へと案内された。

 まぁドラゴンの住処という事もあって中は物凄く広かった。

 そして、その中には数多のドラゴン達が暮らしていたのだ。

 アーク・ドラゴン、レッサー・ドラゴン、そしてワイバーンも居た。


『ひえ〜、これは凄い! カメラがあったら撮りたかったな』


 メリダさんが案内をしてくれている為、私に突っかかってくるドラゴンは居なかったが、結構睨まれていた。


『まぁ、そりゃそうよね……。少し前にかなりの数のドラゴンさんを倒しちゃったからなぁ』


「メリダさん、私ここに来て良かったのですか?」

「大丈夫ですよ、確かに他の者達で納得がいかない者もいるでしょう。ですが、我ら竜種は強者を是とぜとしますので、マユミ殿に危害は向かいません」

「そう、ですか!」

「まぁ、もし痛い目にあわせてやって下さい」


『えぇ〜、それはそれで困る〜!!』


 そんな事を話していると、「着きました」と言われる。

 そこには、とてつもなく広い空間が広がっていて、メリダさんでも余裕で立てる場所だった。


『まぁ今まで歩いて来たところも広かったんだけどね』


「広いですね〜!!」

「そうですね、ここは古の時代から残る我らの聖地ですから! ランドロス様もここに住まれて居たのですよ!」

 そう話すや、小さいランちゃんが姿を表した。


「おお〜、懐かしいのぉ〜!」


「ランドロス様!」

 メリダさんがランちゃんを見て平伏しようとするが……。

「良い良い、もう我はここの王ではない。王はお主だ、

その王がで簡単に頭を下げてはいかん!!」

「ランドロス様……。はい、心に留めておきます」


『こうやってみたら、本当にランちゃんって凄い龍だったんだね』


「ところでメリダさん! 今日はどうされたんですか?」


「申し訳ございません。え〜と、ですね」

「うん?」

 なぜか歯切れの悪い感じで話し始めてたメリダさん。

 ついこの前、メリダさんの古い友人から助けを求められたそうだ。

 なんでも、死にかけていると。

 そこで、なんとか助けてくれないか!と言われたそうだ。

 しかし、メリダさんにはその知識が無く途方に暮れていたそうだ。

 そこで、私に白羽の矢が立って来てもらったとの事だった。

 

『なんか、壮大なプロジェクトだね……』


「メリダさん!」

「何でございましょう?」

「ちなみにっていつ頃の話しですか?」

「え〜と、だいたい100年前ですね」


『つい、って使いようよね』


「はあ〜、そうなんですね……」


「私も専門知識があるわけではないのですが……」

「まぁ、一回見て頂きたいのですよ!」

「はぁ〜……」

「では、早速行きましょうか」


『あ、もう行くのね……。中に入った意味って……』


 メリダさんに言われ、洞窟を後にしようとした時だった。


「ちょっと待って下さい、王よ!」


「うん? どうした?」

 一匹のアーク・ドラゴンがメリダさんに声をかけた。

「俺はまだ納得がいってねぇ!!」

「何の事だ!?」

「この人間が、我ら偉大なる竜種に勝ったなんて! それに、俺の……俺の兄貴はこいつに!!」


『あ〜、あの時のアーク・ドラゴンかぁ〜……』


 どうしよう……、と思っていると。

「あの戦いは、完全に俺達の敗北だ! 今更掘り返すなど竜種の恥だ!」

 また新たなアーク・ドラゴンが現れた。

「兄貴……、でもよ……」


『この方も、あのドラゴンの親族なのね……』


「やめろ、もうあの戦いの事は言うな! 我らの兄貴は立派に戦死したのだ!」


『へぇ〜、この方はしっかりしてるんだ……』


「だが! 過去は過去だが、今は今だ!」


『あれ? なんか変な雰囲気に……』


「マユミとやら、我と戦え! 兄貴の仇とは言わん! だが竜種の威厳というものがある!」


『やっぱり……、メリダさ〜ん』


 メリダさんに、助けを求めると……。

「まぁ〜、よかろう! 好きにせい」


『え〜! 止めてよぉ〜!』


「ありがたき幸せ! ではマユミ、覚悟せよ!」

「おお〜、兄貴! やっちまえ!!」

 周りの他のドラゴン達も、待ってましたと言わんばかりに盛り上がっていた。


「「「やってしまえ〜」」」


『いやいや、やっちゃったらダメだからね……』



 そんなこんなで連れてこられた場所は、古代のコロシアムの様な場所だった。


『何でこんな所にこんな場所があるのよ!』


「逃げ出すなら今のうちだぜ!」

『はい、逃げ出したいです!』

 コロシアムに巨大なドラゴンと、人間の私が向き合っていた。

「逃がしてくれないくせに」小声

「どうされました?」


「いえ、何もないです!」


 周りでは多くのドラゴン達が歓喜の咆哮をしている。

 もちろん、完全アウェーである。


『はぁ〜、とりあえず死にたくないので』


【プレディクション】


 予知の魔法をかける。

『これで死にはしないでしょう……』



「何をしたか知らんが、行くぞ!!」



「あはは、お気になさらず……。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私には結構凄い力があったみたいです。 MENON @kenichi_yuya2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ