第二章

第22話 戦いの後

 エルダー・ドラゴンが立ち去った後は本当に大変だった。

 まず火事だ、これは宮廷魔術師団の総師長をはじめ指導担当のロニオさんも加わっていたので直ぐに鎮火したそうだ。

 次に建物被害だが、こっちは甚大だった。

 広範囲の建物が半壊、全壊していた。

 それに伴って家を無くしたもの、家族を亡くした者も少なくなかった。

 私の魔法でも家を直すのは難しいためそこは、この世界の大工なり国王様の力量に任せることにする。

 あとは、負傷者だが……これはどこまでしたら良いのか迷った。

 宮廷魔術師団の人達がする【ヒール】は本当に少しの怪我しか治せないようだった。

 総師長さんが少し強めの魔法が使えるみたいだったが、それでも完治までは行えなかった。

 ちなみに負傷者達は一箇所に集められていたが他にもいないかみに行くことにした。


「この辺、酷いな。誰が居ますか? 居たら返事をして下さい」

『一応サーチで調べてみるか』

 ここら一帯をサーチにて確認をすると。

『一人……いや、二人か!』

「あっちか!」

 確認した方へ向かうとそこには瓦礫や山だった。

 再度サーチにて確認をすると確かにここに二人いる。

 まだ生存を意味する青色だ。

『ランちゃんお願い力を貸して』

『もちろんです主人』

 私の両腕がランドロスの腕となる。

『これで行ける』

 サーチにて確認をしながら瓦礫を取り除いて行く。


「誰か〜、誰かいませんか?」

「……助けて〜、ここです。助けて下さい」

「聞こえた! 今助けますから」


 慎重に慎重に瓦礫をどけると、その下から女性が一人、そしてその下から小さな女の子が居た。

『この子は、あの時の』

 そこに居たのは、以前ソフィーと家に帰る際迷子になっていた女の子だ、するとこの女性はお母さんか!!


「あの時のお姉ちゃんだ! お願いママを助けて、お願い!」


「大丈夫だよ、きっと助けるから!」

 全ての瓦礫をどけ確認すると……

『くっ! これは』

 女の子には少しの怪我だけで特に大きな外傷は無かった。

 しかし……

『生きてるのが奇跡だね』

 足に重い物が乗っていたせいか、黒く変色しており軽く壊死えししていた。

『それにおそらく、サーチ! 内臓もヤバいわね』

 とりあえず安全な所へ運び、女の子を救出する。

 念の為女の子にもヒールをしておいた。

 女の子はお母さんにしがみつき泣きながら、名前を呼んでいる。

「お姉ちゃん、ママ大丈夫なの?」

「大丈夫、お姉ちゃんに任せて」

 手に魔力を集中させ、お母さんに特大のヒールを発動した。

 すると、足の色がみるみる良くなり綺麗な足に戻る。

 サーチにて内臓関係も確認するが問題なかった。

 ただやっぱり体力は戻らないようで、しばらくは起きないだろう。

「これでママは大丈夫だよ、ただ疲れて寝てるからそっとしてあげようね」

「うん、わかった。本当にありがとうございました」

「いえいえ」

 すると、女の子のお腹の音が聞こえた……。

「お腹減ってるの?」

「うん、後喉も乾いてるんだ」

「わかった、少し待ってて。何か食べたいものある?」

「パンがいいな」

「パンねオッケー」

『パンのイメージと飲み物かぁ〜、牛乳で良いよね』

 二つイメージをし創作魔法を発動する。

 見事にパンと牛乳が現れた。

「はい、どうぞ。パンと牛乳だよ」

「………」

「どうしたの?」

「魔法? 魔法なの? 今のって!」

「そうだよ、でも皆んなには内緒ね!」

 一緒に《シー》とする。

「この白い飲み物何?」

「牛乳だよ、知らない?」

「牛乳? うーん、初めてだよ」

「まぁ、パンに合うから飲んでみて」

 女の子はパンと牛乳を食べ始めると。

「美味しい、すごく美味しいよ。それにこの牛乳、パンに合うね」

「でしょう!」

 女の子が食べ終わるのを待ってからお母さんを運ぶことにした。

「ここじゃちょっとあれだから、お母さんを向こうに運ぼうと思うんだけど、君も来てくれる?」

「うん、わかった」

 その後女の子とお母さんを国軍が指揮している救護施設に彼女とお母さんを連れて行き説明をし、預けることになった。

「もう大丈夫だからね」

「ここでゆっくりして、お母さんが起きるまで守ってあげてね」

「うん、わかった。ありがとうお姉ちゃん」

「うん、良いよ。またね」


 その後他にも何人か瓦礫の下になっていたので助けて、大きな怪我は治しておいた。


「こんなものかな」


 他に人は居なさそうだ、私は宮廷魔術師団が指揮している所へ帰り、総師長さんにおそらくもう他に救助が必要な人は居ないこと等を伝える。

「ありがとうマユミ殿、あなたも疲れたでしょう、少し休まれては?」

「大丈夫ですよ、ありがとうございます」

「マユミ殿今回の件、最初から最後まで本当にありがとうございます。マユミ殿が居なければ、この街は、いやこの国はもう無かった事でしょう」

「そんな旺盛な……」

「いえ、それほど今回の事は大事だったのです」

「またいずれ御礼をさせて下さい」

「気にしないで下さい本当に、ではまた」

 そういうと逃げるように後にしたのだ。

『あのままだと大変な目に遭う所だった……』


 まぁ、でもそんなに甘くないのが世の常なんですけどね。


 翌日、王宮から手紙が来た!

 何で居場所がわかるかって……。そりゃソフィーの家にまだ泊まってますからね……。

『嫌な予感しかしない……』

 恐る恐る開けてみると。

 

『はい、出ました国王との謁見依頼書』


 だと思いました……。

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