第20話 守りと攻撃

 ランちゃんの事が気になりサーチにて様子を伺っていたが。

『うん? 10体が3体?? どゆこと?』

 10体いた気配がどんどん消えていき3体になったのだ。

『あ!? また1体消えた!』

『ランちゃん、何したの!』

『うん? 1体……こっちに来てるじゃん!』


「皆さん、1体またドラゴンが来ます!!」


 私は大声で周りに示した。

「なに? 本当なのか?」エリオノールさんが聞き返す。

 遠くの空に何かがすごい速さで来るのがわかった。

「あれは……なん、だと……」

「どうしたんですか?」

「あれは……あれはアーク・ドラゴンだ!!」

「アーク・ドラゴンだって!」

 エリオノールさんの言葉に反応したのはガラムさんだった。

「アーク・ドラゴン?」

「アーク・ドラゴンは龍種の中でも上位のドラゴンだ。奴を相手にするならこの国が潰れる覚悟で戦わないと倒せないかもな」

「そんなに、ですか!」

「ああ、昔アーク・ドラゴンが一国を滅ぼした事を聞いた事がある」

「そんな奴がなんでここに、龍神は何をしているのだ」

「ランちゃん、いやランドロスはもう一体のドラゴンと相対している様です」

「なんだと!?」

 何度目かの驚きの声が出るエリオノール。

「アーク・ドラゴンより上のドラゴンだと!」

「なぜ、わかるのですか?」

「考えてもみろ、ランドロスは龍神だぞ! アーク・ドラゴンは確かに強い、強いが龍神を止められる程の強さはないはずだ」

「確かに、10体いたドラゴンですが一瞬で2体になりましたね」

「はぁ??」

「私にもわかりませんけどね」

「龍神が何かをしたのには違いないが、とりあえず今から来るアーク・ドラゴンだな」


「とりあえず、やれる事はやってみますか!」


 そんな事を言っていると早くも上空にアーク・ドラゴンがやってきた。

 そして、けたたましい咆哮と共に威嚇ををしてきた。

 すると、周りの雰囲気が一変する。

 それまで晴れていた空が暗く分厚い雲に覆われたのだ。


《聞け、下等な人間どもよ!》


『え? あいつ話せるの?』

 しかし、他のエリオノールさん、ガルムさんは特に反応していない。

『うん? どういう事?』

《これより、この街は破滅の道を進む。我が同胞がお前らを破滅へと誘ういざなうのだ》

『我が同胞? どういう事よ?』

 再度けたたましく咆哮するアーク・ドラゴン。


《やれ!》


 その声の後、アーク・ドラゴンがいる方角とは違う方の空から焼ける様な赤い物体が、飛んでくるのが見えた。

『何あれ? ……!!』

 私はすぐに魔法を構築、そして【プロテクト】を発動する。

『マズイ、足らない!』

 飛んできたのは火炎弾だった。それも10発も飛んできたのだ。

 ある程度は防げたが2発が街へと着弾した。

 一気に騒然となる。

「一体何が起きている!」

 サーチにて確認を行うと、少し離れた地点に約10体の反応が見えた。

「ここより少し離れた地点に10体の反応があります。おそらくこれらもドラゴンの、類かと……」

「くそ! このままじゃこの国はおしまいだ……」

『どうしよう! 私の魔法でも流石にこの数は……』




『ほっほっほ、今回は特別じゃぞ……』




『うん? 誰?』

 誰かの声が聞こえた直後、私の体を黒いもやが覆う。

『なに、なに? でも、これって……』

『ほっほっほ、我が主人よ、其方には死んでほしくないのでな、今回だけは助けてやろう』

『ある、じ?』

 私の中から何かが出てくる様な感覚に襲われる。

 すると、一筋の光が上空に走り天を貫いた。

 そして、今まで分厚く黒い雲が嘘の様に晴れ渡ったのだ。

 

 周りは、騒然としていて私を見る目は驚愕、不安、期待、色々な表情をしていた。


《なんだこれは? お前ら気にせずやってしまえ》


 アーク・ドラゴンが、再度咆哮し合図を送る。

 すぐに火炎弾が飛んでくるが、王国に届くことはなくその全てが、消滅していた。


《なんだと!》


『おお〜、なんか知らないけど壁が出来てる』

 そう、さっきの光はこの王国全てを覆う壁を作り上げたのだ。

 その壁のおかげで火炎弾は全く通らなくなっていた。

『なんかよくわからないけど、多分私の中の誰かが!』


 何度目かの咆哮をするアーク・ドラゴン、すると遠くに待機していたドラゴン10体が、飛んできたのだ。

『あれは、ワイバーンか!!』

 10体のワイバーンと、アーク・ドラゴンは火炎弾を連続で発射してくる。

 しかし、この壁に全てかき消され無にきしたのだ。


『ふん、じじいめ余計な事をしよって、めんどくさい!』


 また新たな声が聞こえたと思えば、黒い靄が再度現れたのだ。

『え? ええ〜?』


『ふん、俺はまだお前を主人とは認めてねぇ、がお前が死んじまうと俺が暴れられねぇからな! 今回だけだ、あの馬鹿の龍には腹がたってんだ。だから死ぬんじゃねぇーぞ!』


 一方的に言われた後、黒い靄が消えた………??


「何も起こらないじゃん!!」

『おい、何をしてる? 早くしろ?』

『おお! ビックリした! 早くしろって言ったって何をすれば?』

『世話のかかる主人だな……。俺は〝堕蛇神〟という、俺の能力は擬態だお前の思う物に変化(擬態)できる』

『はぁ、堕蛇神さん?』

『お前の眷属の、堕蛇神だ!!』

『あ! あぁ〜! 〝ランちゃん〟と一緒の……』

『……ランちゃん? 誰だそれ?』

『ランちゃんは、ランドロスです……』


『…………ぶ、ぶはははははは!!!』


『あの〝龍神〟ランドロスと恐れられたあいつが……ランちゃん!! 傑作だな』

『そんなに変ですか?』

『変とかじゃなくてだな。お前、ランドロスが、どんな奴だったのか、知ってるか?』

『詳しいことは知らないです』

『あいつはその昔、この地一帯の王だったんだよ。だれもあいつには逆らえねぇ、逆らった奴はみな消し炭にされたんだ』


『へぇ〜、あのランちゃんがね!』


『……ぶふ、まぁ、良い! そういうわけで俺の能力は教えたぜ、あんたの技量確かめさせて貰う』


 そう言うと声は聞こえなくなった。

「よし! それじゃ……」

 ある物をイメージし始めると、先程消えた黒い靄が再び現れる。

 そして徐々に変形しある物が出来上がる。

「おお! これは凄い!」

 手には2丁の拳銃を、握りしめていたのだ。

「では、早速!」

 私はアーク・ドラゴンに銃口を向ける!


『当たるのか?』


 そんな不安を持ちながらも引き金を引いた。

「ギャーーー」

『あ!!』

 アーク・ドラゴンが落下してきた。

「私行ってきますので、皆さんはここで待ってて下さい」

 そう言い残し、ワープで移動する。

 エリオノールさん、ガルムさんはもう何が何だかわからないと言わんが如く口が開きっぱなしだ。

 それをほっといて落ちた地点へと向かったのだ。


「あお〜! いるね!」


 落下地点は街の一角で、見事に道の真ん中に落ちていた。

 そこには、ビクビクと痙攣したアーク・ドラゴンが居た。

「何で痙攣してるの?」

『あぁ〜、言い忘れてたぜ』

『だから、急に喋るのやめて!』

『俺の能力の二つ目は状態異常に出来る事だ!』

『どんな物があるの?』


『麻痺 毒 睡眠 石化 硬直 束縛 洗脳 魅了 操り 幻惑 侵食 寄生/感染 恐怖 バフ デバフ そして死だ』


『……で、今このドラゴンに撃った状態は?』


『麻痺だな、しかも強力な! ちなみに麻痺や毒には強度が選べる、まぁ相手がドラゴンだからな強力なやつにしてやった!』


『うわぁ〜、嫌味だ!』


『もう一発撃ってみろ!』

『次は何をする気?』

『良いから撃てって』

 仕方がなくもう一発引き金を引く、が……

『うん? 何も起こってない?』

『ふふ……いや、もう起きてるぞ!』


『ぶはぁっ!!』


 吐血した!!

「うわぁ! 何?」

『これは毒だ、中級のな!』

『毒……うぇ! てか何で中級なのよ!』


『そらぁ〜、決まってんじゃねぇ〜か! すぐに死んじまったら面白くねぇ〜からだよ!!』


『…………悪質ね!』

『ふん、どうとでも言え! 俺はドラゴンが、大嫌いなんだ! まぁなんだ、もうそいつは終わりだ』

「あとは、あそこのワイバーンか!」

 私はワイバーンに向かって銃を構え引き金を引く、が……


「届かない……」


 その間にもワイバーンは、遠ざかっていく。

「あ! 逃げた! 拳銃より、射程の長い物……」

 私は再度イメージをすると、手にあった拳銃が消え、新たな武器へと変化した。

 それは遠距離用ライフル銃……

「これはもう、何でもありだな……」


 普通ライフル銃はそれほど射程は長くないけど、それは現実の話、ここは異世界且つ能力によって作られた物だ、よって。

「よし!」

 ライフル銃を構えると「おお〜よく見える見える」

 ワイバーンの背中が丸見えだった。

 そして、もう一工夫。


「ふふ、これでよし」


 再度ワイバーンに、照準を合わせ引き金を引いた。

 見事に10体全てに命中、パタパタと落ちていった。

 もちろん撃った弾は麻痺弾だ。

 落ちたワイバーンの元へ行くと、10体がビクビクしていた。

「流石にこれはエゲツない、ごめんねワイバーン」

 そして再度拳銃に変え今度は普通にトドメを刺した。

 事が終わり、ガルムさん達の元へと戻り状況を説明すると、もう何も返って来なかった。




「さて、後は……」


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