第19話 襲来

「おっきぃー!!」


 上空にこの街をも飲み込んでしまう程大きな龍がある一点を、見つめ飛んでいた。

 彼が翼を羽ばたかせるだけで強烈な風が街に流れてくる。


『ランちゃん、もっと上空を飛んで! その距離じゃ地上は嵐みたいになってる』

『畏まりました』

 そういうと、一瞬で遥か上空へと昇っていく。

『ほへぇー! スゴ!』

 あれだけ上空にいるのにもかかわらず強めの風が吹いていた。

『確かにこれは災害級だね』

『主人、少しばかり貴方様のお側を離れる事をお許しください』

『良いけど、どうしたの?』

彼奴あやつと話してきます』

『わかった、何かあったら教えて!』

『承知!』


 そういうと、飛んで行ってしまった。


「……マユミ! あ、あ、あれは何なんだ!?」

 後ろから声が聞こえ振り向くとギルドマスターのガルムさんが驚愕の表情で飛んでいった方向を見ていた。

 彼だけではなくこの一帯いや、国中の人々が上を向いて驚愕したに違いない。

 私もその一人だから。

「あれは………」


「あれは〝神皇種〟じゃないのか!?」


 一瞬ビクッとしたが、声の方へ振り向くとそこには宮廷魔術師団総師長エリオノール・カレントがそこに居た。

「………」

「マユミ殿、あの龍はあの時、宮廷内で見た貴方の眷属ですよね?」

「…はい、その通りです」

「おい、エリオノールの嬢ちゃん! どういう事だ?」

「今さっき飛び立っていった龍はマユミ殿の眷属、召喚魔法にて召喚した召喚獣なのよ」

「なに!? あんなのが召喚獣だと!? 待て! 召喚獣ってこたぉ〜、とんでもなく多くの魔力が必要じゃなかったか?」

「その通りよ、でもマユミ殿はあれを具現化していた。見た感じマユミ殿の、表情は特に苦痛の表現は無かった。どうしてなの? あれだけの召喚獣ならかなりの魔力がいるばすよ」


「確かにあの龍は私の眷属です。彼は〝龍神〟ランドロス」


「〝龍神〟ランドロスですって!?」


「嬢ちゃん、なんだよその龍神ってのは?」

「〝龍神〟ランドロス、それは古の時代を生きたっていう伝説上の竜のことよ」

「なんでそんな奴がマユミの眷属なんだよ」

「そんなの私にわかるわけないでしょう! マユミ殿、彼は〝龍神〟は敵ではないんですよね?」


「大丈夫、彼は眷属で私の友達です」


「そうですか」

『ランちゃん! 無事に帰ってきてね』



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


 エルランド王国近郊の草原上空に〝龍神〟ランドロスはいた。

 そこに、エルダー・ドラゴンが率いる10体のドラゴンが近づいてきた。

 ランドロスは轟音の様な咆哮をし威嚇をする。

 その瞬間、レッサー・ドラゴン7体は失神し墜落していった。

 アーク・ドラゴンはなんとか持ち堪えた感じだ。

「ほう、根性があるではないか」

「やはり、貴方様でしたか。しかし、酷いではありませんか」

「なに、我が配下の力量を久しぶりに見たくなっての」

「ふん、我が配下ですと!?」

「違うのか?」

戯言たわごとを申されるな、貴方が王だった日々は遥か昔に終わっておるではありませんか」

「では、今はお前が王だと? ふははは」

「何がおかしい?」

 アーク・ドラゴンの一体がランドロスの言葉に対し不快感を示した。

「よい!」

「ですが、王よ」

「王か、お前が王とは龍族も落ちたものだな」


「貴様ぁ〜さっきから聞いていれば王を侮辱しよって!」


 アーク・ドラゴンがランドロスの挑発に我慢できず襲いかかる。

「ふん、若いな!」

 ランドロスは豪炎の炎を撃ち放った、すると一瞬でアーク・ドラゴンは消し炭となってしまった。


「なん、だと!」


 もう一体のアーク・ドラゴンが叫ぶ。

「ふん、弱いの」

「お前は下がっていろ」

 エルダー・ドラゴンが、声を挙げる。

「お前達はここへ何をしにきたのだ?」

「なに、昔の仲間が現れたと感じてな本当かどうか見にきたまでよ」

「見に来たにしては物々しいではないか」

「ここは我らの支配下にある土地だ、そこに変わった気配を感じたら確認が必要であろう?」

「なら、あの街には用はないという事か?」

「ふむ、変な事を言われる。貴方様がまさか人間如き下等な生物の街など心配されるのか?」

「あの街には大切なお方がおられるのでな」

「大切な方? それは誰なのです?」

「今の我が主人だ」

「ふははは、龍神と恐れられた貴方様が今や人間の下に付くのか、笑い物だな」

「そう、笑ってもいられんかもしれんぞ」

「どういう事だ?」

「お前より強いという事だ!」

戯けたわけたことを、ではそれを証明して見せろ!」


 アーク・ドラゴンに合図を送ると、王都の方へと飛んでいった。

「させるものか!」

「おっと! 貴方の相手は私だ!」

「お前に、俺の相手が出来るのか?」

「一つ良い事を教えてやろう! ここに来たのは我ら10体だけだと思っているのか?」

「何?」

「くふふふふ、どっちにしろあの街は終わりだよ」

「どういう事だ!?」 

「そのうちにわかる!」



「主人……」



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