第12章 さくらへの誓い 【4】

 さくらの病室を出た俺は、ナースステーションで退室処理を済ませると、大急ぎで駐輪場へ向かった。

さくらの顔を見て、俺の覚悟は定まった。俺はあいつの幸せを守ってやらなければならない。

 そのためには。

……行くっきゃないだろう……

 どういう理屈かは分からないが、俺には"平行世界を渡る能力チカラ"が芽生えたらしい。

得体の知れない能力チカラが目覚めたことに恐怖感はあるが、同時に機会を手に入れたのかもしれない。

……例えどんな手を使ったとしても……

俺はさくらを絶望的な運命から救わなければならない。そのためなら、悪魔や死神と取り引きをしたって構わないくらいだ。

……行くか……

 俺は真っ直ぐ高空たかぞら線の高架下を目指した。


 高空線の高架下には闇が満ちていた。

そこにはさくらと初めて一緒に帰った通り魔事件の夜のような緊張感はないが、あの夜と同じような得体の知れなさはあった。

 ……やっぱ、止めりゃあ良かったかな……

俺は静かに広がる高架下の暗闇を見つめて思った。

しかし、ここで怖気おじけ付いていては、さくらを救うことさえ叶わない……。

……行くっきゃねぇ……

 俺は渾身の勇気を振り絞ると高架下の暗闇に駆け込んで行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平行世界から自転車(チャリ)で来た!! 赤音崎爽 @WyWsH3972

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画