第10章 さくらとの出会い 【12】

 その後、俺は何事もなく自宅に帰り着き、白石しらいし先輩に『無事に家に帰りました。お休みなさい』とSNSでメッセージを送り、眠りに就いた。

ちなみに、高空たかぞら駅の通り魔犯は、その日の夜中のうちに2つ隣のまちのネカフェに隠れていたところを見つかり逮捕されたようだった。

「もしかすると白石先輩を迎えに行かなければならないかもしれない」と思い、いつもより早く起きた俺は、ネットのニュースを確認してガッカリした。

……なんだよ、早起きのし損じゃねぇか……

 アラームをかけ直して本来の起床時間まで2度寝するか? と思ったその時。スマホのSNSアプリにピコンと通知が付いた。

反射的に通知内容を示すバナーに目をやると、白石先輩のアカウントからだった。

「何だ?」

俺は迷わずチャットを開けた。チャットが開くと、すぐさまメッセージが表示された。

『おはよう😃

西浦にしうらくん。もう起きてる❓

高空駅の通り魔は捕まったみたいだけど、

お母さんが「せっかく約束したんなら、送ってもらいなさい」って言ってて😅

だから、五色田ごしきだ公園の東側の通りの真ん中辺りまで来てくれる❓❓』

 向こうから出迎えの要請をしてくれるのであれば、わざわざ早起きしたことも無駄じゃないだろう。

『おはようございます、白石先輩。

8時40分に「五色田公園東側の通りの真ん中辺り」にいれば大丈夫ですか?』

俺はそれを送信した。すると1分も経たずに白石先輩からの返信が来た。

『それで良いよ😊

またあとで』

ついでにかわいらしいクマのスタンプが来たので、俺は何だか微笑ましい気持ちになった。

大学の同科の女子とSNSのやり取りをすることはあるが、今まで「微笑ましい」と言う感情を抱いたことはなかった。

「よし、そうと決まれば、急いで支度したくしなくっちゃな!」

俺は取り急ぎ支度に取り掛かると、いつもより早い時間に家を飛び出していた。

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