第2話

「ねぇ、お願いがあるんだけど」

 アイが父さんに連れられて他の研究員達と研究室へ消えたのを確認してから、僕は遅れて研究室に向かう母さんを捕まえて言った。

「あら、マサキ。今日はありがとう」

 これが数ヶ月ぶりに母さんが僕に向けて発した言葉だ。

 僕は僕の両親を取り上げたアンドロイドの研究と、アンドロイドたちが嫌いだった。

そんな僕がアンドロイドの相手をしたら絶対に研究は失敗する思って、僕はこの研究に参加したのだ。

「アイを僕に頂戴。二代目ができてからでいいから」

 それがこんな事を言うようになったとは、僕自身が一番驚いている。

「もちろん、いいわよ。今までのお礼に研究が終わったらアイは貴方にあげるわ」

 そういう母さんは嬉しそうに笑う。

自分の実の娘として育てて来たアイを簡単にあげるだなんて簡単にいう母の気が知れなかった。

「本当にマサキはアイが好きになったのね」

 自分の研究がようやく息子に認められて嬉しかったのかもしれないけれど。

「だって、アイは僕と恋するために造られたアンドロイドでしょう」

 僕はずっとアイに両親を取られたと思っていた。けれどアイも僕も同じだった。同じ母さんと父さんの実験道具だった。

 僕と上手くいかない両親がアンドロイドのアイと上手く親子関係が築けているはずなかったのだ。

「母さんと父さんの研究がはやく上手くいくといいね」

 僕はこの日、初めて母さんと父さんの研究を応援した。

 研究が終わったら、アイと二人きりで色々なところに行きたいと思った。

楽しいことがないなんて、もう言わせたくなかった。

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恋するアンドロイド p @p2p2p

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