巧妙なウソ

「同時にMBHは救命艇であり保険でもあったのですか。符号化した乗員を媒体ごと投下すれば、やがて余熱として老人星の輻射に組み込まれる。五分ごとに自分を含む局所空間をリセットする恒星の『寄生虫』として生き延びる」

「何ちゅう言い草だ。ノイズ―ジグソーパズルのセットとして佐伯君の情報は保存されている。五分おきにシャッフルされようとも手順に従えば復元できる」

その取説が頑固な生存欲求だというのだ。転生を超えて保存される強靭なメッセージ。

「見下げた自己中ね」

凛菜はプリントアウトを広げた。佐伯の顛末は予めシミュレートされ、頃合いを見計らって彼の再構築を促すキー情報が地球から発射される。

凛菜が銃撃戦の末に奪ったばかりの機密計画文書だ。乗員の若干名が教授に篭絡され、「勇者佐伯」復活後の老人星調伏作戦が記されていた。

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