小説の専門学校ってどんなとこ?

さかたいった

それは21歳のある日の出来事

 その直感は突然に訪れた。


「もしかしたら、小説家も面白いかもな」→「よし決めた、小説家になろう」


 僕はその日、ほんの数秒の間に小説家になることを「決定」した。



 僕はいろいろと普通の人間ではない。昔からちょっと変わっている。たぶん、生まれた時から。

 僕は高校生のころから、自分は会社勤めの仕事をしないことを決めていた。しないというより、性質的にできない。自由を愛し、自由に生きる人間だからだ(良い風に言っています)。

 僕は普段はとても温厚で(自分で言う?)、とても優しい人物なのだが(自分で言う?)、心のどこかでは常に「俺に指図できるのは俺だけだ」みたいなアレン・アイバーソンばりの尖った部分を持っている(最近はだいぶ丸くなったけど)。こんな狂犬、そんじょそこらの会社が飼い慣らせるわけがない。僕は性質的に、組織に向かない人間なのだ。

 そして僕は、学生時代から将来は自分のやりたいことを仕事にすると決めていた。「好きなこと」ではなく、あくまで「やりたいこと」。似てるようで、全然違う。僕は小説を書くことも読むこともまったく好きではない。

 僕は中学・高校のころから、自己啓発本の類をよく読んでいた。そのころから、自分の人生を大きく変えたいという気持ちがあったようだ(よっぽど鬱屈した学生時代だったのか?)。周りに道を示してくれるような人間がいなかったので、僕の先生は常に「本」であった。僕は本から得たその「知恵」を参考に、その後の人生を組み立ててきた。それが僕の生き方の原点と言ってもいい。

 高校の修学旅行の時、泊まりのホテルの部屋でそういう自己啓発本を読んでいたら、周りにちょっと引かれてしまった。ませているというより、変わっているのだ。高校の卒業式の日、終わって僕がとっとと帰ろうとすると、「最後までマイペースだね」と言われたこともあった。ちなみに、高校の時の僕の卒業文集は「一番面白い」と巷で好評だったりした。このころから文才があったんだな(自分で言う?)。

 僕は勉強が大嫌いな人間なので(高校時代は一切勉強をしなかった)、大学に進学するつもりはまったくなかった。このころはまだ自分のやりたいことが見つかっていなかったので、高校卒業後はバイトをしながらフラフラ生活していた。フラフラしたり、バイトしたり、宇宙人との交信を試みたりしていた(本気にしちゃだめ)。

 そんなある日だ。

 僕は家で、小説を読んでいた。あるRPGのノベライズ本だったと思う。

 その時に、冒頭の直感が降ってきたのだ。


「もしかしたら、小説家も面白いかもな」→「よし決めた、小説家になろう」


 こんな一瞬で自分の人生を決定する人間はあまりいないと思う。だけど僕は自分にとって重要な事柄ほど「直感」で決めることにしている。この決心は、この瞬間から現在まで片時も揺らいだことはない。「なりたい」ではなく、「なる」と決めたのだ。

 さて。小説家を目指すぐらいだ、さぞかし本好きで、文章を書くのも好きなのだろうと思う人もいるかもしれない。だけど僕はまったくそんなことはなかった。週刊少年ジャンプなら10年以上毎週買って読んでいたけど、小説は滅多に読まないし(ハリーポッターぐらい?)、当然自分で小説を書いたこともない。それなのに突如として小説家を志したのだ。「なぜ?」と訊かれても、この大きく果てしない宇宙の謎ぐらいわからない。他の職業を目指した可能性も大いにあった。僕の直感が選び出したのがたまたま「小説家」だったのだ。

 小説家になることを決めて、僕が初めにしたことは、小説の書き方を学ぶための学校を探すことだった。なんたって小説のしの字も知らない人間だ。

 そして僕が見つけたのが、東京にある2年制の専門学校だった。他にもいくつかそれっぽいところがあったと思うけど、そういう特殊な学校は全部東京にあるようだった。

 僕はすぐにその学校に願書を送りつけた。学費は1年で100万円とちょっと。学費さえ払えばとくに条件なく通えるようだ。翌年からその学校に通うことになる。それまで僕は小説の勉強もまったくすることなく(少しだけ小説を読み始めるようにはなった)、学費を稼ぐためにただバイトをしていた。


 僕は学校にちょこっと通ったぐらいで立派な小説家になれるとは微塵も思っていなかった。ただ小説を書くための最低限の知識を仕入れることが目的だった。


 こうして、楽しい楽しい(?)2年間の専門学校生活が始まることになった。

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