第34話 エピローグ

 アメリアは、ナーヴェから眠っている間に起きたことの全てを聞いた。


 セルヴィスが語った自身についての真相。


 レクシアを愛していたこと。

 だからこそ彼女を失って、自暴自棄になり、後戻り出来ないほど自らを傷つけたということ。


 彼が初めからアメリアに辛く当たったのは、愛の感情を失っていた為で、それに対して、彼はずっと謝罪したいと思っていたのに何も言えず後悔していたということ。


 彼が残り少ない命を使い切ってアメリアを救い、亡くなったこと。

 だが、それは彼自身が望んだことで、アメリアが気に病む必要はないのだということ。


 亡くなったセルヴィスは公爵ナーヴェとして既に埋葬されたこと。


 これからは、ナーヴェが王としてセルヴィスに成り代わって生きること・・・。



 あの方もお辛かったのね・・・


 アメリアがセルヴィスの事情に巻き込まれて、酷く傷つけられたという記憶も事実も消すことは出来なかったが、彼もまた酷く傷ついていた一人だったのだろう、そう彼女は思った。


 アメリアはこれからのセルヴィスに、どうか安らぎが訪れるようにと祈った。



 ◇



 頬を膨らませて、抗議するアメリアが言う。


「放してください、陛下」


「駄目だよ。二人きりの時は名前で呼んで、アメリア」


「もう・・・ナーヴェ様」


 王の私室にあるソファの上で、アメリアを抱きかかえる様に座っているナーヴェは、甘く優しい瞳で蕩ける様に彼女に微笑みかける。


 琅玗の翡翠のようなそのとろんとした瞳に見つめられると、アメリアは胸が高まって目のやり場に困ってしまう。


「もう放さない・・・私の愛しい人」


 ナーヴェは、まるで壊れやすい大切なものにでも触れる様に、愛おしそうにアメリアの頬にその長い指を添わせた。


 竜は独占欲が強いのだ。


 自らが望んで一度手に入れたものは、決して手放しはしない。





 全部やり直そう、二人で。


 つらい記憶は、これから二人で塗り替えればいい。




 fin.

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