STEP:4

衒学編集長の了承を得た鵲が研究室に通い始めて三日目の朝。

怒号と激しい物音が出迎えた。玄関先には酒瓶と鶯が転がっている。

「最高の歓迎だったわ」

スカートに張り付いたシチューを手洗いしながら皮肉ると鶉が食いついてきた。

「自堕落な女は嫌いよ!つか、自分を律する為に私を作ったっていうし」

下着姿の鵲に鉄人はドレスをお仕着せて来た。「貴女もよ!」


「鶯センセは昔からああなの?」

「質問攻めは沢山。つか、貴女本気で私と距離を縮めたい?」

鶉が言うには友達とは対等の関係を指すのだそうだ。そこで鵲は略歴を語った。

「入社理由? 科学も魔道もやりたいテーマは一巡したしね」


先が見えた。聞こえはいいが自分に限界を感じたのだ。それで両者から距離を置く批判家になった。


「貴女、本当は挫折したんでしょ」

鶉の慧眼は既に黒歴史を発掘していた。卒論や書きかけの原稿が壁に投影される。

「未練がましい? 何とでもお言い。元彼の本心を聞きたくて霊界通信を企てるなんてね」

想いの人は苏格拉底號の武官だった。

「プロポーズの返事は聞けずじまい? でも、死んだのよ」

魂を持たない鶉に天国の概念は理解しづらいだろう。それでも鵲は粘り強く説いた。

「私を見守ってくれるか、ノーか聞きたいの。ふっきれなくて」

蘇生術が発達した現代でも肉体が喪失した死者の復活は不可能だ。

鵲は暫く霊界ラジオの研究を励みにしていたが、新しい出会いに軸足を移した。

「あたし、応援する。半端な女は嫌いなの!」

真っ直ぐな眼差しに鵲は射抜かれてしまった。

まったく、とんでもない発明をしてくれたものだ。

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