第7話 謎の指輪 1

異世界でも修羅場は、たいへんです。


******************

【ユイナーダ学園新聞部部室】



あー忙しい!忙しい!!




放課後に図書室で起こった事件の号外の次は、子供向けの本の増刊号を書かないと!!




そうこうしている間に、いつも新聞のイラストや挿絵を描いてもらっている、スーズ先輩が駆けつけて来てくれました。




「エリーさんお待たせ。遅くなってごめんなさいね。

すぐに絵を入れますわね。」


先輩が来てくれたら百人力です。


「ありがとうございます先輩!

号外の方は、出来ていますのでイラストお願いします!」


「任せて下さい。時間までには、きっちり仕上げてご覧に入れますわ!」




先輩が号外のイラストを描き上げると、新聞部員達は、いっせいに印刷機を使って印刷を始める。 

この印刷機は私の依頼を受けた、タークちゃんが、作ってくれた物です。




現在は手動だけど、いずれ魔導力を使って自動的に印刷できるようにすると言っていました。 



コレ以上の物を作るつもりなんて、凄いですね。



号外が書き終わったら、次は今回の件を元に子供向けの本の製作にかかります。



草案はだいたい出来ているので、スーズ先輩と打ち合わせをしながら、どこにどんな挿絵を入れるかを決めていきます。



かなりたいへんな作業なのにスーズ先輩は、華麗に素敵な挿絵を描いてくれます。

先輩、いつも私の修羅場に付き合って頂き、ありがとうございます。



翌日、ほぼ徹夜明けで新聞部員達と一緒に一旦部室から出ました。



因みにスーズ先輩は、昨日の内にお帰りになりましたわ。

相変わらず仕事が早いですね。



学園街にある早朝から開いているお店でモーニングを食べ、皆んなでまた学園へ戻っていたら、ナルキス様にバッタリ会ってしまいましたの。



せっかく校了明けで良い気分でしたのに……



私達を見つけるなり、彼は数人の女性を侍らせながら


「フンッ!男を侍らせて朝帰りか⁉︎」


そのセリフを聞いて呆れました。



どこをどう見たら、そういう発想になるのでしょう?

私の周りにいる新聞部員の中には、女子生徒もかなりいるじゃないですか!



もしかして隣にいる副部長の事ですか?

副部長(騎士科)の髪は、短いですが女性ですよ。

そしてそのセリフは、あなたにお返しします。



「ナルキス様こそ、その方達と朝帰りですの?

それと、私の隣にいる副部長のニナさんは女性です!

男性と間違うなんて失礼ですわよ。」

ニナさんは、きちんと女子の制服を着用しているのに

「うっ……。

と、とにかく俺様という婚約者がいるのに夜遊びなど許さんからな!!」

顔を真っ赤にして私達を指差しながら怒鳴る。



その指には、変わったデザインの指輪が嵌っていました。

自分の事を棚に上げていったい何を仰っているのでしょうか?

それと、『人を指差してはいけません。』って習わなかったのですか?



まぁ、ナルキス様(この人)を育てたのは、“あの下品な乳母”ですものね。

きっと習わなかったのでしょう。



「私達は今まで、徹夜で新聞部の仕事をしていたのですわよ。」



彼と睨みあっていると、ニナさんが助け船を出してくださいました。



「あの、部長そろそろ部室に戻って、仕事の続きをしなければ間に合いませんよ。」



そうでした。

まだこれから号外の配布と本の販売があるのでしたわ。



「それではナルキス様、私達これからまた仕事がありますのでこれで失礼いたしますわね。」



そう言って私達は、サッサとその場を離れる事にしました。



あら?そういえば彼がしていた指輪どこかで見たデザインでしたわね?

どこで見たのかしら?


「部長~早く~!」



「置いて行きますよー!」



「今行きますわ。」


思えばこの時、もっと真剣に指輪の事を思い出していれば、この後に起こる婚約破棄騒動を、穏便に済ませる事が出来た筈でした。



騒動から数日後、キヨミナさんは学園内だけでなく、学園街の方でも同じ様な事をしていた事が、学園風紀委員会の調査でわかりました。



学園風紀委員会から、衛兵隊に引き渡されたキヨミナさんは、『詐欺罪』『王族への不敬罪』で逮捕され学園を去って行きました。



(国立ユイナーダ学園シリーズ④参照)

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