第25話

 文乃さんと打ち合わせをした翌日も朝から雨が降っていた。

 母さんはすでに仕事に出ていた。

 リビングのテーブルの上に置かれていた朝ご飯をレンジでチンして食べ、学校に行く準備をする。

 どんなに忙しくても朝ご飯をちゃんと用意してくれる母さんにはほんとに感謝しかない。

 学校に行く準備を終え、傘を持って家を出る。


「結構降ってるな~」


 さすがは梅雨といった感じだった。かなり雨足は強かった。

 これは学校に着くころには靴がビショビショかもな。

 俺は一旦家に戻って、替えの靴下を取りに行った。

 そして、雨の中学校へ向かった。

 学校に到着するころには案の定、靴はビショビショで靴下までも濡れていた。

 靴を下駄箱に入れて靴下を履き替えているところで声をかけられた。


「用意周到ですね」

「東雲さん。おはよう」

「おはようございます。久遠さん。替えの靴下羨ましいです」

「東雲さんは持ってこなかったの?」

「そこまで考えが回りませんでした」

 

 そう言って、東雲さんは濡れた靴下を脱いだ。

 エロっ……!

 靴下を脱いでるだけなのに、なんでっこんなに色っぽいんだよ……!

 靴下の下に隠れていた足先が露に……。

 東雲さんのそんな仕草から俺は目が離せなかった。


「あの、そんなに見られると恥ずかしいんですが……」

「わ、悪い……」

「まぁ、見られるのは嫌いじゃないんですが……」

「え?」

「いえ、何でもありません」


 東雲さんの仕草を見るために止まっていた手を動かして、俺も靴下を履き替えた。

 そして 、東雲さんと一緒に教室に向かった。


「それにしても嫌な天気ですね」

「そうだな。東雲さんは雨嫌い?」

「雨も嫌いですけどジメジメしたのも嫌いです」

「俺は雨は好きだけど、ジメジメしたのは嫌いだなー」

「雨好きなんですね」

「そうだなー。雨は好きだな」

「羨ましいです」


 この前のデート以来、東雲さんとの距離は縮まっていた。

 教室でも下駄箱でも会えば、話すようになっていた。それに関して、何か言ってくるような生徒は特にいなかったのは幸いだった。もっと、いろいろと聞かれるかと思ったが、詮索してくる生徒は一くらいなもんだった。


「どうして、雨が嫌いなんだ?」

「私、体が弱いんですよね」

「そうなのか」

「はい。昔から、雨にぬれると風邪をひく確率が高いんですよ」

「確率ね……今日は大丈夫だったのか?」

「たぶん、大丈夫かと……少ししか濡れてないので」


 そう言って、東雲さんは自分の髪の毛を触った。

 その髪の毛はほんのりと湿っているように見えた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【週間ランキング20位✨】学年一美少女の裏垢を見つけてしまったんだが、どうしたらいい? 夜空 星龍 @kugaryuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ