泥酔した巨乳の美人なお姉さんを看病してそれで……朝目覚めると、全裸のお姉さんが俺に抱き着いて寝ていたんですけど⁈ これって、もしかして朝チュンですか⁈

本町かまくら

泥酔した巨乳の美人なお姉さんを看病してそれで……朝目覚めると、全裸のお姉さんが俺に抱き着いて寝ていたんですけど⁈ これって、もしかして朝チュンですか⁈


 鈴虫の泣く気持ちのいい夏の夜。


 たまたま通りかかった公園のベンチで、泥酔している巨乳の美人なお姉さんと遭遇した。


「酒おいちぃなぁ~♡」


 ……見るからにヤバい。


 なんといっても、はだけて乱れた身だしなみがヤバい。


 豊満な胸が、動くたびにぷるんぷるんと揺れていた。


「(……あれ、色々とマズいよな)」


 どうしたものかと見ていると、お姉さんが俺の方を見た。


「そこの好青年ぇん! 私と一緒に酒、のまなぁい?」


「……え、えぇー」


「なに不服なのぉ? お姉さん、寂しいなぁ……」


「いや、俺未成年なんですけど……」


「ハッ! 君も若い女の子がいいんだぁ……しくしく」


「お姉さんはまだ十分若いと思うんですけど」


「……もしかして、私口説かれてるぅ?」


「口説いてないから!」


「えぇーんショック~‼ ……すぴーすぴー」


「……え、切り替え早!」


 お姉さんが気持ちよさそうに寝る。


 さらに乱れる服装。


 ちらりと水色の下着が顔を覗かせていた。


「……これ、どうすりゃいいんだよ」


 このまま放置しておくのは……まぁ、マズい。


「しょうがない。関わったからには、どうにかしよう」


 酒臭いお姉さんに近寄り、体を揺さぶった。


「お姉さん? 家、どこですか?」


 致し方なく、家まで送り届けることにした。





    ▽





 何とか家に辿り着き。


 おんぶしていたお姉さんを、玄関に下ろした。


「むにゃむにゃ……さ、最高だよぉ」


 こちとら背中に当たる爆弾にドキマギしていたっていうのに。


「もう帰りますから」


「だめぇ! 行っちゃだめぇっ!」


「い、いや! 離してください」


「いやっ! 絶対にいやっ!」


 俺の足にしがみつく、お姉さん。


 完全に退行してやがる……。


「……はぁ、分かりましたよ。とりあえず、ベット行って寝てください」


 そして、何事もなかったかのように帰ろう。


「わかりましたぁ!」


 敬礼して、部屋のドアを開ける。


 すると広がったのは――まさに汚部屋。


 類を見ないほどの汚さだった。


「な、なんなんだこれは……」


 未知との遭遇。


 まるでユニバース。


 そこを躊躇なく進み、ベッドに倒れ込むお姉さん。


「おやすみなさぁい」


 そう言って、気持ちのよさそうな寝息を立て始めた。


「全く……なんて人だ」


 ほんと、色々と。


「それにしてもこの汚さ、想像を絶するな……」


 胸の中から湧き上がる、一つの欲望。


 抑えられない、この衝動……!


「くっ……だ、ダメだ……! 抑えられないっ……!」


 み、右手が疼く……‼





「この部屋、掃除したいッ!!!!!」





 ――俺は、掃除マニアなのだ。





    ▽





 チュンチュン。


「ん、ん……」


 小鳥のさえずりが聞こえる。


 気持ちのいい朝日がカーテンの隙間から差し込んできていた。


「なんか今日は、気持ちよく寝れたなぁ」


 大きく伸びをしようと、体を動かしたその時。



『むにっ』



 男にとって夢のような感触と、温もり。


 瞼を擦り、見てみる。


 すると隣には、全裸の巨乳な美人のお姉さんがいた。


「・・・は?」


 しかも、抱き着かれてるんですけど?


 つまりこの感触は……お、おっぱい?


「……、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」


 なんで俺、お姉さんと寝てるんだ⁈


「ん……おはよふはぁ……」


「こ、これは一体……」


「え? これって、何?」


「こ、この状況ですよ! っていうか、服着てください!」


「……あぁーほんとだ。私全裸だ」


「今気づいたんですか⁈ もっと早く気づくべきでしょ!」


「ごめんごめん。私寝るとき、絶対裸なんだよね」


「とにかく! 何か着てください!」


「んぅ、しょうがないなぁ」


 眠そうにあくびをして、お姉さんがタンスをごそごそと漁った。


 もちろん、俺は目をしっかり閉じている。


 あんなの見てしまったら、きっと鼻血が出るだろうから。


「はい着たよ? だから、そんなにがっちり目を隠さなくても大丈夫だよ」


「そ、そうですか……っていうか、第一なんで俺はお姉さんと一緒に寝て……って、シャツ一枚じゃないですか‼」


「応急処置、みたいな?」


「全然応急処置できてないですよ!」


「そうかな?」


 首を傾げているが、全くできていない。


 だってシャツ一枚だけで、色々と見えちゃいけないところがちらちら見えている。


「無防備にも程があります! 俺、こう見えても男ですよ⁈」


「むぅ~しょうがないなぁ」


 今度こそは、ちゃんと下着も着てくれた。


 おかげで、まだ刺激は強いがギリギリ見れるまでにはなった。


「それで、なんで俺はお姉さんと寝てたんですか?」


「昨晩君が、綺麗になった部屋の床で寝てたからだよ」


「え? 俺が?」


「うん。掃除してくれたんでしょ?」


「そ、そうですけど……俺、寝ちゃってたんですか?」


「すごくやり切った感じで」


 そういえば、足の踏み場すらない部屋を夜通しで綺麗にして、達成感に満たされて気が抜けたんだった。


 なお、床に寝転がるまでの記憶はなかった。


「あぁーこれは、俺の責任ですね。ほんと、すみません!」


「いいのいいの。むしろ私が抱き枕にしちゃってごめんね? 掃除してくれたのに」


「いえいえ! それは別に気にしてないので」


「ほんと、助かったよ。私、部屋を掃除する余裕なくって……」


 部屋を意図的に汚い状態に放置しておくはずがないだろう。


「余裕、ないんですか?」


「うん。実は仕事がストレス溜まる上に疲れる仕事でね。毎日上司に怒られてばっかで、家に帰ってきても、家事する気にならないんだよね」


「だからあんなに弁当とかカップラーメンとかが多かったんですか?」


「えへへ、恥ずかしながら」


「健康に悪いですよ?」


「わかってるんだけどね。でも、めんどくさくって」


 確かに、疲れた日は帰っても何もやる気が起きない。


 それを毎日……かなり大変なのだろう。


 お姉さんが、天井を仰ぎながら呟いた。




「あぁーあ、家事をしてくれる旦那さんが、いればいいんだけどなぁ」




 叶うはずのない夢を呟くようだった。


 そんなお姉さんの姿を見て、俺は無意識のうちに言っていた。



「じゃあ俺が家事をしますよ」



「……へ?」


「俺、高校生で暇ですし、家事好きなんで」


「で、でも……」


「なんなら、こっちからお金払ってでもしたいくらいです」


「……それは、マジ?」


「マジです」


「…………」


「…………」


 視線が交ざり合う。


 何かお互いに歯車がかみ合ったような、そんな気がした。


「私、菅原穂乃美(すがわらほのみ)です」


「俺、前川諒太(まえかわりょうた)です」


 ――こうして、何故か俺は穂乃美さんの家事を代行することになった。





    ▽





 穂乃美さんの家事を代行して、数日が経った。


 ここ数日で気づいたのだが……かなり穂乃美さんはだらしない。


 俺がいることをいいことに、平気で服とか脱ぎっぱなしにするし、ごみもそこらへんに捨てる。


 せっかくの美人が台無し、とはこのことか……。


 とりあえず、下着だけは洗濯籠に入れて欲しい。(魔が差して見てみたら、穂乃美さんはIカップだった)


「穂乃美さん、起きてください」


「んんぅ……やだ」


「もう朝ですよ!」


「……ふはぁ」


 二度寝に突入しようとする穂乃美さんを叩き起こし。


 無理やり食卓に座らせる。


「今日もおいしそ。いただきます」


「はいどうぞ」


「今日、帰り遅くなると思うから」


「分かりました。じゃあ夜ご飯、パックに詰めて冷蔵庫に入れておきますね」


「うん、ありがとう」


 ぶっちゃけて言えば、ここ最近かなり充実している。


 何だろう。


 ほんとにだらしなくてどうしようもない人なんだけど、だからこそ庇護欲をそそられて、家事をしたくなってしまう。


 穂乃美さん、年上だけど。


「なんか最近、熟年夫婦並みの安定感だよね」


「そうですか?」


「……なんかね、安心する」


「ふはぁっ⁈ な、何言ってるんですか⁈」


「……なるほど、やっぱり諒太君は、年下だね☆」


「な、なんかムカつく……」


 ときたまこういう風に、大人の余裕を醸し出してくるので、かなり扱いに困る。


「だって諒太君、どんなに私が無防備な姿でも襲ってこないし」


「そ、それは当たり前でしょう! だ、第一そういうのは好き同士がするもので……」




「私は、諒太君のこと、好きだけどね?」




「っ⁈」


「ふふふっ、今日も朝ごはんがうまいっ!」


「……はぁ」


 家事のほとんどを年下の高校生に任せてるだらしない人のくせに!


 女性に対する耐性があまりないことをからかって……!


「よしっ、今日も一日頑張れる!」


「そうですか。それは、よかったですね」


「おうよ!」


 ……それにしても、俺は穂乃美さんをどう思ってるんだろうか。


「(……この人、子供のようで大人の女性だから、よくわかんねぇな)」


 ここ最近は、そんなことばかり思っていた。





    ▽





 今日は帰るのが遅くなると、穂乃美さんが言っていた。


 そういう日は決まって、俺は家事をして帰る。


 ……でも、なんでだろう。


「――おかえりなさい、穂乃美さん」


「……諒太君?」


「早く風呂、入っちゃってくださいよ」


 今日は、やけに「ただいま」を言いたかった。


「……もしかして、私のこと好きになっちゃった?」


 楽しそうにそう言う穂乃美さん。


 俺はジョークを言うみたいに、鼻で笑う。


「さぁ? どうでしょうね?」


「……ぷっ、やっぱ面白や、諒太君は」


「そうかもしれないですね」


「最高だよ」


 

 穂乃美さんのことを好きになるかは、わからない。


 ――けど、一つ言えることがある。



 世の中、どんな出会いがあるかわかったもんじゃない。




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