■KAC お題 焼き鳥が登場する物語
学校から下校途中、10分経過。
彼に与えられているのは立派な仕事だ。中学生で帰宅は夕方。普通に学校へ行くというのを心掛けないといけないのか、最寄駅までの10分間、問題点を聞き出せていない。
誰に聴かれるかも分からない。外で言うのは禁止になっているのかもしれないな。
「それじゃあ、ぼくはここで」
帰り道、途中に駅を通るからと、無理やり隣を歩いてきた。言い訳の効力もこれで終わりだ。
「学校ではありがとう、お疲れ様でした」
スッ──と、紺野くんは視線を飛ばす。でも、何事もないように挨拶で終わる。「昴さん、仕事のことでしばらくは学校なんですよね? また明日も、話せたら嬉しいです。お疲れ様でした」
第六感……君の眼には何が映ったんだ。
電車に乗るのを見届けてから、紺野くんが見ていた所へ呼び掛ける。
「もう出てきてもいいんじゃないですか?」
ビニール袋を掲げ、中年男性がひょっこり現れる。
「第六感、聞いてはいたけど、鋭いなぁ。ジャーナリストに欲しいよな?」
「来たら俺らクビですよね」
「そうなるな~」
なんて呑気な相槌。
先輩が張り込みしてたから、紺野くんが話してくれなかった説が出てくるな。普段から下校に通る道を変更するのは、明らかに変に思われるし。条件が悪かった。そうして切り替えるしかない。
「そこで仕事してる生徒に何か特徴はあったか?」
「自分が持っている能力を買われてますからねー、存在意義を持てるのはメリットかもしれません」
「取材した生徒の交遊関係は?」
「ほぼ俺と話してたんで、居ないと思いますよ。本人も同年代と話していいのか悩んでるみたいでした」
先輩は溜め息をひとつ。「遊びたい盛りだろうになぁ~」
柔らかな風にのり、タレの絡んだ焼き鳥の香りが鼻腔を刺激する。
「張り込みなのに、何を買ったんですか」
「焼き鳥、食べる?」
まだまだ仕事はある。学校から出てきて、少し肩の力が抜けたらしく、腹が鳴りそうになる。ビニール素材の包みから焼き鳥を1本取り出した先輩。
「頂きます」
───…つづく
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