無人バスに乗って村に帰ろう

鉄道博物館内にいるヒロシ一行。


アスタもようやく弁慶号の前を離れゆっくり、じっくりと他の展示物も見ていく。


時々立ち止まっては展示物の前に書いてある案内文をヒロシに読んでもらい、分かっているのかいないのかはよく分からないが、とにかく真剣に展示物を見ているようだ。


やがて出口も近くなってくるとヒロシの周りに全員が集まってきた。



「みんな楽しかったかい?」


「「「はーーーーーーい」」」


「じゃあまた来ようね。」


「「「はーーーーーーい」」」


ラシンさんの声が一番大きのはご愛敬か。


「ヒロシー!お腹すいたよーー!」


「もうこんな時間かあ、お昼を食べて帰ろうか。ミーア何がいい?」


時間はお昼を結構過ぎている。


「ハンバーグ!!!!」


「わかったわかったよ。じゃあ、近くにファミリーレストランがあるからそこに行こう。」


「おーーーーーー!!!」


「「「オーーーーーー!!!」」」


ミーアがはしゃいでいる姿を見て楽しそうなことがあると直感する子供達。


ミーアの真似をしてはしゃぎ出した。


博物館を出て少し歩くと目的のファミレスに到着。


ステーキとハンバーグを売りにしている全国規模のチェーン店だ。


「ハンバーグランチーーー!!!」


席に案内されるとメニューを見る前にミーアが叫ぶ。


2人でお出かけした何回かの外食ですっかりハンバーグランチの虜になったようだな。


「「「ハンバーグランチーーー!!!」」」


子供達も合唱。


レンさん達大人は初めて見るカラフルなメニューに目を奪われている。


エルフ達も肉は食べる。基本野菜や果物が中心ではあるが肉も食べないと体がもたないのは我々と同じ。


ただ肉は切って焼くだけ。調味料も無し。


当然メニューに載っているようなカット・ステーキなんかも自分達の思っているものとだいぶ違う。


「レンさん、決まりましたか?」


「エーっと、よくわかりマセン。子供達と同じものをお願いします。」


「わたしもソレデ。」


「わたしは..........???いっぱいあって決められないデスー。」


ラシンさんは情報量が多すぎて混乱しているようだ。


「じゃあハンバーグランチを全員分と、ステーキを何種類か、それとサラダバーを付けましょうね。」


「やったーサラダバーだーーー!!」


「「「やっターサラダバーダーーー!!」」」


「「「???????」」」



注文すると、サラダバーの取り皿が人数分配られる。


「とりあえずレンさんと、ムムさん、ラシンさんの3人はついて来て下さい。」


ヒロシは3人の大人を伴ってサラダバーへと向かう。


ミーアは子供達とお留守番。


サラダバーで3人に取り方を説明する。


「ここにある野菜は好きなだけ食べていいのですよ。

でもあまり一度に取らないようにね。何回取りに来てもいいですからね。

あとここで食べる分だけですよ。持って帰れないですからね。」


3人共目の前のカラフルな野菜に目を奪われながらもヒロシの話しを真剣に聞いている。


以前榎木広志は取引先であるアフリカの原住民の方を同様の店に案内したことがあるのだが、いっぺんに大量に取ろうとしたり、取った野菜を持って帰ろうとされた苦い経験があったのだ。


その経験を踏まえ、日本人なら当たり前と思われることも細かく説明していく。


レンさん達も日本のマナーをある程度オンライン学習で勉強してきたので理解するのに時間はかからなかった。


実際に3人に試してもらったが、目移りの激しいラシンさん以外は特に問題もなく普通に終えることが出来たようだ。


「ラシンさん、何回取りに行ってもいいですからね。早く選ばないと他の皆さんに迷惑ですから。」


「うううううっ」


「じゃあレンさん、ムムさん、子供達の分も取ってあげて下さいね。」


「「はいッ!!!」」


「ミーアの分は俺が取るね。」


数分後、全員にサラダが並ぶ頃、注文した料理が届いた。


ハンバーグは家でも作ることがあるからみんな見たことがあるが、鉄板の上でジュージューいっているそれは別物に見えるようだ。


「さあ食べましょう。いただきます。」


「「「「「いただきまーーーーす(マーーーース)」」」」」


大合唱に周りの人達も生暖かい笑顔を向けてくれた。


「「「おいし(シ)ーー」」」


「ヒロシー、サラダお替りーーー!」


「「「お替りーーー」」」


「....ぼ僕もいいデスカ....」


小さな声で囁くアスタにレンさんが微笑んで「当たり前でショー。さっきと同じくらいでダイジョウブ?」


「ウン!!」


アスタの元気そうな声に一安心。


「ほらあんまり慌てて食べないようにね!」


「ヒロシー、サラダお替りーーー!」


「「「お替りーーー」」」


こんな感じでワイワイガヤガヤの食事時間は2時間近く続いた。


騒がしたことを店員に詫びて店を後にする。


「さて。帰りはバスにしようか。みんな行くよー。」


すぐ近くに地下バス停があったため、そのまま地下のバス停に向かう。


地下の一般車道の下には公共バス専用の道がある。


縦横無尽に張り巡らされた巨大な地下トンネルには無数のバス停が存在し、無人バスに乗って行先指定をすれば、混雑時でなければ最適な経路を検索して目的地まで向かってくれる。


エルフ達が驚いている間に、最初の公園近くに到着。


見つからないように慎重に林に向かい、魔方陣に乗ったヒロシ達だった。

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