ACT.7

 ほどなくして警察がやってくると、連中は相変わらずの嫌味を並べ立てようとしたが、こっちは殆ど聞いていないふりをして、拳銃と勝手に回していたICレコーダーのメモリーを渡してやると、それ以上は何も言わずに、遠山義彦の身柄を担架に乗せて連れて行った。

 幸い、俺の撃った弾丸は貫通しており、傷は恐らく全治十日程度で済むだろうとの事だった。


 翌日、俺は小山内渚の元を訪れ、報告書と共に、遠山兄弟の件について伝えた。

『・・・・ご苦労様でした・・・・』彼女はしばらく沈黙した後、やっとそれだけいい、封筒に入った金を差し出した。

 俺はそいつを手に取り、必要経費と危険手当分だけを数えてポケットに入れると、着手金として受け取っていた金も返した。

 今回の仕事は失敗だった。そりゃそうだろう。どんな理由があるにせよ、俺は依頼人を裏切ったんだ。

 これで金を貰ったら、それこそ”やらずぶったくり”ってやつだ。

 

 翌日、俺は事務所のドアに『本日より三日間休業させて頂きます』

 という札をぶら下げ、屋上のペントハウス・・・・いや、ネグラのテラスにデッキチェアを出し、寝転がっていた。

 小山内渚はどうなったって?

 どうにもならんよ。

 彼女の”ゲーム”については、当たり前だがどれも全部時効が成立している。

 仮にそうでなかったとしても、証拠らしい証拠がないからな。

 俺は自分の失敗に自分でペナルティを科したというわけだ。

 といえば恰好はいいがね。

 結局はサボりたかっただけさ。

 つまらん事件だったろ?

 現実に生きる探偵なんてのは、こんなものなのさ。


                             終わり

*)この物語はフィクションであり、登場人物その他は全て作者の想像の産物であります。

 

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見知らぬ婚約者(フィアンセ) 冷門 風之助  @yamato2673nippon

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