第6話:「ちがう道えらんでも、きっと心はひとつ」なんてキレイごとで済ませたくないよ!

ところが、小学校5年生のとき、変化が訪れた。

クラス替えである。

いままでずーっと一緒にいたのに突然離された。

物理的に当然会話の量は減る。

付き合う友達も違ってくる。

そしてマーちゃんが澄ちゃんの店の手伝いを始めたので放課後遊ばなくもなった。

私も自分のクラスの友達との付き合いに没頭ぼっとうした。

私はマーちゃんみたいに強くないから友達づきあいをしないとクラスでは生きていけなかったからだ。

そして、決定的に別れを意識したのが、私の生理が始まったときだ。

母が澄ちゃんに言った。

マーちゃんとはクラス替えで行動を共にしなくなったけど、澄ちゃんは毎日のように家に来ていた。

そこで母が

「直子が生理始まったのよ」

と何だか淋しそうに嬉しそうにつぶやいた。

私は違う部屋に居たけど、ボロボロの公営住宅である。筒抜けだ。

ちょうど学校で性教育を受けたあとだったので、澄ちゃん、帰ってマーちゃんに言っただろうなあ……と何だか遠く遠く離れていく寒い感覚に襲われた。

私は女になってしまった。

でも、当時の私はまだ男子の友達なんていない。

でも、言い寄ってこられたら断る権利みたいな太い背骨のようなものができたような気がした。

結局これが決定的だった。

これで、マーちゃんが私に近付くか近付かないかは自由だけど、

少なくとも、マーちゃんから私に一方通行で近付いてはいけないような壁ができた。

当然、マーちゃんにも第二次性徴がきていたはずだ。

だから逆に、私も同じ。

男の子と女の子に互いに選択権は無いと。

あくまでも選ぶのは告白をされた方。

メスが戦いに勝ったオスを選ぶ、逆も同じ。

これ、生物界のおきて。なに言ってんだか……。

でも二人は、この性の原始的な約束ごとみたいなものに古くさくバカバカしく、でも強く変に固執した。

当然、私たちは意識して離れる。

そしてさらに中学に入ってもまたクラスは別々。

今度は違う小学校のヤツらがうじゃうじゃシャッフルになる。

私たちは自然と別々の道を歩いた。

マーちゃんはヤンキー。

私はガリ勉。

マーちゃんの要因は澄ちゃんのスナックだ。

夜遅くまで外で活動するので、夜遅くまで活動したい男子生徒が近付いてきた。

まあ、石川翔と沢田唯人である。

私の要因はライバルの登場だ。

浅野多久美たくみという同じくガリ勉女。

お互いこいつにだけは負けたくないと強烈に意識したので、その一心で猛勉強した。

そこに、前述した〝勉強するしかない赤貧の環境〟が拍車を掛けた。

浅野多久美……。

私が吉良きらという苗字だったら下らない冗談のような関係だ。

とにかく私を意識してくる。

実力模擬試験はいつも浅野多久美との一騎打ちだ。

浅野多久美は国語と英語、私は数学と理科をお互い譲らなかった。

ライバルの存在とは怖いもので、気が付いたら私と浅野多久美は学年一の秀才女と呼ばれる存在になっていた。

マーちゃんは校内一のヤンキー。

私は校内一の秀才。

別々の道……。

その二人が3年生のクラス替えで再び同じクラスになってしまったのである。

親同士のぶ厚い付き合いはあるももの、

私たちにとっては実質4年ぶりの再会だったのである。

どうすんの、これ?。

心も身体からだも無茶苦茶ややこしいよ……。

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