04 クリスF級になる

 言われたとおり朝には城が見えて城下町も見えてきた。

 町へ入るため兵士に入場料を払うと、その門をくぐる。


 朝早いのに結構な人が歩いていた。

 近くのカフェで朝食代わりの銀貨一枚で果物を四つほど買う、歩きながら食べ残ったお金を数える。


 金貨が五枚、今食べている果物の値段を考えて節約すれば七日ぐらいは暮らせそうだ。



「無駄使いは出来ないし。ってか……よく考えたわよね、あの王子」



 私が何らかの手段で王国に戻ったとしても、既に婚約発表と私の国外追放は終わってるはずだ。

 最速で戻っても後の祭りだし、私の評判も地に落ちてるだろう。

 仮に評判が落ちて無くても、だからどうした。と、なる。

 あの聖女って子と王子の婚約が納得いかないって訴えてもねぇ……側室に入りたいわけじゃないし、ある意味よかった。


 考え事をしている間に冒険者ギルドについた。

 建物なんと三階建てであり、大きい。

 王国にも冒険者ギルドはあるみたいだけど、話はほとんど出てこない。

 この辺は自由な国を売りにしてる帝国のほうが活発的。


 扉を開けて中に入る。

 いくつかのボードが置いてあり、大小様々な紙が張られている。

 ちらっとみると、庭の草取りからネズミの駆除、魔物素材集め……中には結婚相手募集まである。


 カウンター前にいき職員を見て思わず口が開いた。



「うわっ! 亜人っ!」



 頭にウサギの長い耳がついた女の子が困った顔をして私を見ている。

 亜人、人の言葉を理解し人と共存する種族。

 ってのは習ったんだけど、王国の歴史では亜人の国と仲が悪いので本物を見るのは初めてだ。



「おはようございます。ギルドに何の御用でしょうか?」

「ごめんなさい。突然声出して……本物を見るのがはじめてなもので」

「いいんです、慣れてますから」



 慣れてるからと言って何も思わないのは違う。

 私だって豪傑、豪傑と呼ばれ慣れているけど嬉しいわけじゃない。



「本当っにごめんなさい。ええっと冒険者になりたいんだけど、どうしていいかわからなくて」

「大丈夫ですから。職員のミィと言いますね。えーとですね――」



 ウサギの亜人ミィちゃんが、色々おしえてくれる。

 特殊な素材を使ったカードを銀貨一枚で発行してくれて、再発行は金貨三枚と跳ね上がる。

 後はランクによって受けれるクエスト仕事が違い、ランクが上がるには同じランクの仕事の回数と職員の判断であがる。



「何から何まで説明ありがとう」

「いいえ、お仕事ですし、説明するの好きなんですよ」

「冒険者にならないとダンジョンとか行っちゃだめなの?」



 ダンジョン。

 迷宮。

 呼び方は様々なんだけど、世界中に突然現れたりする魔物の巣。

 その割り中には強い魔物がいたり、お宝もあったりする。世界のなぞ。

 一説には世界にながれる不純な魔力地下にたまり、その影響で魔物が発生するとか。と習った。



「その辺は特に問題ありません。ですが魔物の素材や貴金属などギルドを通すとスムーズに行ったりしますので、依頼される方もギルドを通しての方が多いですね」



 なるほど、買うほうもギルドを通したほうが安心を買えるわけね。

 


 ギルドの中が混んできた。

 私はもう一度ミィちゃんにお礼を言うとカウンターから離れる、すぐに他の冒険者がその席についた。



「さて、どうしよう」



 作ってもらった冒険者カードにはランクがFと書いてある。

 Fと書かれたボードを見に行くも、先ほど見た仕事内容で報酬も銀貨一枚とかである。

 もしくは物の支給。



「よーねーちゃん」



 あらやだ、昼間から下衆な男の声が聞こえるわね。



「なぁ、ねーちゃんよう」



 突然、背後から肩を組まれたので、その顔を見る。

 年齢は中年。使い込まれた革の鎧を着ていて口からでる息はお酒臭い。



「何のごようでしょうか?」

「おいおい、そんな邪険にするなよ。これでもC級なんだぜ、せっかく金に困ってそうな新人F級冒険者、しかも女に親切にしようとしてるのによう」



 使い込まれた冒険者カードを私に見せつけてくる。

 余計なお世話だ。

 


「ごめんなさい、目にゴミを入れて・・・・・・見えなったわ。ご用件は自慢だけ?」

「おまっ……たっく。目にゴミが入って見えないってのは聞くが、入れて・・・ってのはねーよ」



 自称C級冒険者は、それでも私から離れない。



「でだな」

「…………まだ話続けるの?」

「おうよ! 冒険者たるもの、こんなのは屁でもねえな。Fランクの仕事ってのは、いいのないだろ? でもC級やB級の依頼は受けれない」

「個人で受ければいいんじゃないの?」

「さっきの亜人も言っていただろ? 難しいって、なぁ俺のパーティーがあるから酒でもおごるからよ」



 男は私の手を強引に引っ張るとギルドの外へと出た。

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