第14話 強力な助っ人?


「きらーん!!ひーろみたいでかっこいいでしょー!」


 えっへん。胸を張るリルは、確かにヒーローみたいだった。

 リルの天真爛漫さに僕の心は僅かに和らぐ。


「だ、誰ですか?」


 あんなの警戒した声音に、しまったと顔をしかめた。

 僕はリルを知っているけど、あんな達は面識がなかったのか。

 とりあえず、あんな達に、リルを紹介しなくては。


「ああ、えっと。シンヤってやつの眷属だよ。名前はリル」


「リルだぞー!がうん。お姉さんたち、よろしくー!」


「こ、こんなに小さい子も眷属になれちゃうんですね……」


「……それで、他の吸血鬼の眷属が何か用でもあるんですか?」


 可愛らしく挨拶をするリルに対して、双子の反応は違っていた。

 あんなは、口元に手を当てて目を丸くし、かえではだいぶ焦っているみたいで苛立ちが隠せていない。

 僕としても早くミュナのもとに駆け付けたいので、気持ちは分かる。


「リルが僕たちを助けてくれたってことか?」


 僕はリルの前にしゃがんで聞いてみた。後ろでは、かえでが腕を組んでいて、彼女がピリピリしているのが伝わってくる。背中が刺されてるのかもと思うくらい視線が痛かった。


「んーん。リルじゃないよ。シンヤ様だよ!なんかね、こんなんでいなくなったら気に食わないから今回だけ特別!だって」


 ああ。やっぱり。リルが独断で僕たちを助けるなんてするわけがない。


「リル。シンヤは?」


 この場に姿を現さないシンヤは、ならばどこにいるのか。


 リルは僕の質問に、満面の笑みを浮かべて答えた。天井に高く指を向けて。


「屋上だよ!」


 先ほどから、背後では「なんで他の吸血鬼が?」と訝しむ声が上がっているが、僕としてはシンヤは少なくとも顔を見たことがない他の王位継承者よりも出会った継承者よりも信じられるところはある。


 初めて会ったあの日、シンヤはあまりミュナへの敵意はないように思えた。


 もし、もしも、彼が今もミュナへ助太刀してくれているなら。


「———それなら、いいんだけどな」

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