第27話「冬休み」

 アリナとのクリスマスデートを大成功で終えた俺は翌日に一日だけ学校に登校し、その次の日から冬休みに入った。


 うーん、何度考えてもクリスマス後の一日だけ登校させる必要があるのか疑問に思ってしまう。

 まあ、学校にも事情というものがあるんだろう。


「アリナ、もう朝だよ~」


 俺はリビングでテレビを見ながら寝室にいるアリナを起こす。

 いくら冬休みとはいえ、ダラダラと過ごすのは良くないから普段と変わらず朝に起こす。


 だけど、もしアリナに「一緒に二度寝しよ?」という言葉を上目遣いで言われてしまったときには俺はその誘惑にあらがうことは出来ないだろう。


「ふぁあ、翔くんおはよ」


 アリナがあくびをしながら寝室から出てきた。

 二度寝の誘惑はないようだ。


 すこし残念に感じている自分がいる気がする。


「朝食の用意しとくからアリナは顔洗って目を覚ましてきて」


「私も手伝いますよ?」


「いや、簡単なものだけだから大丈夫だよ」


「そうですか。それなら私は言われた通りに顔を洗ってきますね」


 アリナは自分がどんなに眠たくても手伝ってくれようとする。

 いつも思うが、本当に優しい人だ。


 俺も彼女に見合うようないい男にならなくては!


「よし、準備するか」


 俺はカリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグ、そしてトーストを用意した。

 やはり、この組み合わせが俺の中で最強なのだ。


「顔洗ってきました」


「目は覚めた?」


「はいっ、もうバッチリです!」


「それじゃ、食べよっか」


 俺とアリナは一緒に朝食を食べた。


 毎度のことながらアリナはどんなに簡単な食事でも幸せそうな笑顔で食べてくれるので作った側としては作って良かったと思わせてくれる。

 あ、そうだ。

 ちゃんと朝に起きたのは良いけど、何も予定を決めてないな。アリナは行きたい場所とかやりたいこととかあるのかな。


 冬休み一日目だし充実した一日を送りたい。


 俺はアリナに聞いてみることにした。


「アリナ、行きたいとことかある?」


「うーん、そうですね、温泉とか行ってみたいです」


「温泉?」


「はい、実は今まで行ったことがないんですよね」


「そうだったの? それなら、アリナのお望み通り温泉に入りに行こうか」


「いいんですか? 翔くんも行きたいところとかあるんじゃないですか?」


「いや、俺は特にないかな。それに、アリナが行きたいところは俺も行きたいから」


「それなら、よかったです」


「早速準備をしようか」


「はいっ」


 朝食を済ませた俺たちは食器を片付けてから、温泉に入りに行くための準備を開始した。


 温泉か……。

 俺自身も行くのは久しぶりなので結構楽しみだ。それに、久しぶりの温泉が愛する彼女と一緒なのだから余計に楽しみだ。


 そんなことを考えながら俺は準備を進めていった。


「よし、準備できた」


「私もできました!」


「ちゃんと暖かい上着にした?」


「もちろんっ、外は少し雪が降っているみたいですから出来るだけ暖かい上着を選びました」


「よし、それじゃ行こう」


「はいっ」


 俺とアリナは手を繋いで近くの銭湯へと向かった。


 *****


「着いた!」


「初めてきましたけど、これは凄いですね!」


「こんな近くにあるならもっと来るべきだったね」


「たしかにそうですね!」


 近くの銭湯に到着した俺たちはその銭湯の大きさに驚いていた。

 ここの銭湯はこの辺でも一番大きいらしく、多くの人が集まっていた。近くにこんないいところがあったんだな。


「アリナ、ここからは別々になるけど大丈夫?」


 ここからは俺は男湯で、アリナは女湯に入るので別々になる。

 アリナは初めての銭湯だけど、一人で大丈夫だろうか。夏海も呼んで連れてくるべきだったかな。


 俺はこんな心配を勝手にしていたのだが、その心配は必要ないようだ。


「いえ、私、以前から来てみたいと思っていたので銭湯の知識は予習済みです!」


「そっか、それなら問題ないかな。というか、そんなに来たかったなら言ってくれればよかったのに」


「翔くん、優しいですね。それじゃあ、次からは行きたいと思ったときに言いますね」


「うん、それじゃ温泉に入りに行こうか」


「はい、それではまた後で」


「うん」


 ここで俺は男湯へと向かった。

 脱衣所で服を脱ぎ終え、俺は温泉の湯につかる前に頭と体をちゃんと洗う。


 これは温泉に入るうえでのマナーと言えるだろう。


「よし、入るか」


 頭と体を洗い終えた俺は温泉の湯につかる。

 少し熱いくらいの温度の湯が体全体に染みわたっていくような感覚がある。久しぶりに入ったけど、いつ来ても温泉は気持ちがいい。


 周りを見てみると、色々な世代の男性がいたが、全員が幸せそうな表情で温泉を満喫しているようだった。


 アリナは初めての温泉を満喫できているだろうか。

 温泉から上がったら聞いてみることにする。


 とりあえず、今はこの最高に気持ちの良い温泉を楽しもう。


「俺はなんで長い間銭湯に行かなかったのか不思議だ」


 一人でそう呟きながら温泉を楽しんだのだった。

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俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。 夜兎ましろ @rei_kimura

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