第18話「罪深き夜更かしご飯」

「何食べようか」


「こんな時間ですけど、お肉が食べたいです」


 深夜のキッチンで俺とアリナは、今から作る罪深き深夜飯について話し合っていた。

 深夜に食べるのは罪。でも、お腹は音を鳴らしてしまいそうなくらい減っているのだ。今日だけは許してもらおうではないか。


「じゃあ、今から言う二つの中から一つだけ選んでね?」


「はいっ! わかりました!」


「唐揚げか手羽先」


「鶏肉しかないんですか?」


「うん」


「じゃあ、唐揚げで!」


「オッケー、じゃあ準備しようか」


 残念ながら今、我が家にある肉は鶏肉のみだ。先日まで牛肉もあったのだが、カレーライスを作ったときに切らしてしまった。今度、買いに行かないとな。


 俺は鶏むね肉を取り出し、まな板の上に置く。


「アリナ、この鶏むね肉のスジを取ってくれないか?」


「はい、わかりました!」


 アリナが鶏むね肉のスジ取りをしている間に俺はおろししょうが、醤油、そしてごま油を用意する。本当はおろしにんにくも用意したいところだが、明日も学校があるので今回はなしだ。


「こっちは準備できたけど、そっちはどう?」


「もう少しでできます!」


「今考えたら面倒くさい方をアリナに任せちゃったな。ごめん」


「いえ、全然平気ですよ! 大事なのは一緒に作るという事ですから!」


「それならいいんだけど」


「翔くん! できました!」


 俺はアリナがスジ取りをしてくれた鶏むね肉をジッパー付きポリ袋に入れて、そこにキッチンに元々置いてあった塩とこしょうをふりかけてから揉みこむ。その後、用意したおろししょうが、醤油をかけて再び揉みこむ。そして最後にごま油を少しだけかける。

 そこから5分程度待つ。


 5分待った後は、衣付けを始める。普通は卵入りの衣にすることが多いのだが、今回は卵なしの小麦粉と片栗粉を使った衣にする。


「ここからは一緒にやろうか」


「はいっ!」


「よし、小麦粉を揉みこもうか」


 俺とアリナは鶏むね肉をジッパー付きポリ袋から取り出して、まな板に置いてから小麦粉をしっかり揉みこむ。そして、片栗粉を表面にまぶす。

 片栗粉は揉みこまずまぶしたのは、こうすることで外側はカリッと、内側はふわっと、二種類の食感を楽しめるからだ。


「それじゃあ、揚げようか」


「あの、翔くん……?」


「ん?」


「肝心の油を用意してません」


「あ……、急いで用意するから待ってね!」


「オッケーです!」


 俺は急いで揚げ油をフライパンに入れ加熱する。

 油が温まったらようやく鶏むね肉を揚げる作業に取り掛かる。


「時間掛かっちゃったけど、揚げ作業を始めようか」


「はいっ!」


「油が跳ねないように気を付けてね? 火傷しちゃうといけないから」


「心配性ですね、翔くんは。でも、そういうところも好きですよ」


 まさか料理中にもキュンとさせられてしまうとは。

 可愛すぎるでしょ。


 俺とアリナは一緒に鶏むね肉をフライパンに気を付けながら一つずつ入れていく。

 油が跳ねないように、慎重に。


 フライパンに入れると、ジュワ~っと良い音が鳴る。

 こんがりとしてきたら、フライパンから取り出し、しっかりと油をきったら完成だ。


「できたな!」


「はいっ! とても、美味しそうです!」


「それじゃあ、盛り付けようか」


 俺とアリナは皿を用意し、唐揚げと冷蔵庫に入っていたキャベツの千切りを同じ皿に盛り付ける。

 そして、お椀も用意し、そこには炊飯器から米をよそう。

 これで完璧に夕飯の準備が整った。


 盛り付けた皿とお椀をもって、二人でリビングに向かった。


 皿を卓上に並べる。

 時計を見てみると、すでに1時を過ぎていた。


「やっと夕飯だねっ」


「そうだね。唐揚げ作るの結構大変だったね」


「ふふ、じゃあ、食べよっか」


「うん」


 俺たちは「いただきます」をして、唐揚げを口に頬張る。

 作るのが大変だったのもあるだろうが、いつもの食事よりもおいしく感じられる。


 アリナを見てみると、アリナも美味しそうに唐揚げを口いっぱいに頬張っていた。それにしても、本当においしそうに食べるなぁ。


「どう? 美味しい?」


「うん! 美味しいよ! さすが翔くんだよっ!」


「いや、違うよ。これは二人で作ったから美味しいんだよ」


「翔くんは本当に私が嬉しくなることを言ってくれますね」


 俺たちはその後も食べ進めていき、全部食べ終わったころには1時半を過ぎていた。明日、寝坊しないかな?

 皿洗いをして、歯を磨いてから寝室に行ったので、俺とアリナがベッドに入った時には2時をまわってしまっていた。


 ベッドに入ってからも、俺たちは色々話していた。


「アリナ、また一緒に作ろうね」


「はい、もちろんです!」


「というか、もう2時過ぎてるけど寝坊しないかな?」


「ふふ、どうでしょうね。私も起きれる自信がないです」


「まあ、たまには寝坊しちゃってもいいかもしれないなぁ。起きる努力はするけど」


「そうですね。起きれなかったらその時は二人とも学校に遅刻ですね」


「一人で遅刻するよりはマシかな」


 俺とアリナはそんなことを話しながらベッドの上で横になっていた。アリナはいつも通り俺に抱きついているが。


 いや、気が付いた時には俺もアリナに抱きついていました。

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