第17話「リビングは甘い空間」

 学校が終わった後、俺とアリナは帰宅し、リビングでくつろいでいた。


「夕方って何もやる気が起きないことってあるよね」


「そうですね。夕飯を作るのはもう少し後からにしますか?」


「そうだね。少し休もうか」


 俺たちは少し休んでから夕飯の準備を始めることにした。

 因みに今日も二人で夕飯を作ることになっている。一人で作るよりも圧倒的に効率もいいからね。それでいてアリナと一緒に作るのは楽しい。


 おっと、いけない。俺には夕飯の準備をする前にしなければならないんだった。

 俺はこれからアリナと行くクリスマスデートの前準備をしないといけないのだ。俺はクリスマスに少し高めのレストランに連れて行くつもりだ。少し高めとは言っても学生が払える範囲だが。


 もちろん、連れて行くのはレストランだけじゃないけど、予約をしないといけないのはレストランだけなので、今から予約の電話を入れる。


「アリナ、俺、少し電話してくるね。アリナは休んでていいからね」


「はーい! ん? 女ですか?」


「いや、違うから!」


「なら、いいですけど……」


 急に「女ですか?」って聞かれるとは思いもしなかったが、アリナの冗談だろう。


 俺はレストランに予約の電話を入れるため、寝室に入った。音が外に漏れないようにちゃんと、ドアも閉めた。

 レストランの電話番号を確認して電話を掛ける。


「もしもし」


「はい! こちら、○○レストランです! ご予約のお電話でしょうか?」


 アリナには女じゃないよって言ったけど、電話の相手、女でした。

 レストランの従業員だろうから、大丈夫だけど。


「12月25日の19時に予約したいんですが、空いてますか?」


「お客様、運がいいですね! クリスマスに空いてるのは19時の1テーブルだけですよ! では、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「はい。雪村です」


「雪村様ですね。かしこまりました! 何名様でのご来店の予定でしょうか?」


「二名です」


「かしこまりました! 12月25日の19時に二名様ですね。ご予約承りました!」


「それでは」


「はい、お待ちしております!」


 ツー……ツー……ツー……


 なんか異常に元気な従業員だったな。

 バイトで入ってる子なのかな?


 それにしても危なかった。クリスマスに空いているのが残り1テーブルだけだったなんて。やっぱり、クリスマスのレストランは人気なんだなぁ。


 予約の電話を終えた俺はリビングに戻った。


「電話終わったよ」


「早かったですね。隣で横になってみてください。気持ち良いですよ~」


 俺がリビングに戻るとアリナがソファに布団を持って横になっていた。きっと、俺の前使っていた部屋のクローゼットから取り出してきたのだろう。

 でも、アリナの隣って……。

 俺とアリナの家のソファは少し大きめだけど、二人で横になるにはギリギリだと思うんだけど?


「二人が横になるには狭くない?」


「いいんですよ。もしソファから落ちそうになると思うなら、私に抱きついてもいいですよ。というか、抱きついてください」


「照れるんだけど、本当にいいの?」


「はいっ! もちろんです! 私も翔くんに抱きつきたいですし……」


 俺は赤面しながらもアリナに従い、隣で横になり、アリナを抱きしめる。

 すると、アリナも抱きついてきた。


 抱き合いながら布団を被っているため、端から見ればまるでミノムシのような状態になっている。


「抱き合いながら横になると暖かいな」


「そうですね。ぽかぽかしている気がします」


「俺は最近よく思うんだけど、俺って本当に幸せ者だなぁ」


「私も思ってますよ。私って本当に幸せ者だなぁって」


「あはは、俺たちって思っていることまで同じなんだね」


「そうですね。やっぱり、相性が良いからじゃないですか?」


「そうだね。俺もそう思うよ」


 俺はゆっくりとアリナの頭を撫でる。

 さらさらの銀髪からは良い香りが漂ってくる。


 気が付けば外は暗くなっており、俺とアリナに段々と眠気が襲ってくる。抱き合っていることでぽかぽかでもう今にも眠れそうだ。

 本当は今から夕飯を作らなきゃいけないんだけどな。


 俺はアリナに尋ねる。


「どうする? 今から夕飯作る? それとも、少し眠る?」


「少しだけ眠りたい気分です」


「俺もだよ。少し眠ろうか」


「はいっ」


 俺とアリナは抱き合いながら眠りにつく。


 俺は本当に幸せを感じていた。


「アリナ、大好きだよ」


「翔くん、私も大好きですよ」








 結局、俺とアリナが目を覚ましたのは24時を過ぎた真夜中だった。

 深夜の食事は罪だと言うけれど、こんな日があったっていいんじゃないかと思う。

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