おまけ 応援したいです

「パトロンシステムだ!」

「なんで何事も無かったように始めるんです?終わったんですよ?」

「どうしても言い忘れたことがあったのだ」

「それがパンタロン?」

「何が胃薬か! パンシロンはだな、後援者や支援者、または便宜を図ったり財政支援をする人のことだ!」

「はいはいパンクラチオン乙、それにパトロンって、もうすでに私にとっての社長がそうですよね?」

「先日の話を思い出したまえ。雀の涙の話だ」

「涙はやがて大海に変わるですか? ですから乾燥しますって」

「雀がたくさんいればどうかね?」

「……ああ、それがパトロンシステムですか」

「きみにこだわる必要はなかった!」

「どんでもない暴言ですが、気付いてなかったんですか? ウチの利益は本が売れればそれでいいんです。誰が書こうなんて関係ありません」

「盲点だったな! 実際、なんでこれが埋もれてる? といった凄まじい作品は多い。だが、読者による評価システムが過剰に過ぎて、まるで本物から目を逸らせるような意図も感じてしまうぞ?」

「仕方ありません。星は無限に付与できるのですから」

「作品を読もうが読むまいが、な」

「そこはもう諦めました。応援コメントと文章レビューが心の支えです」

「そこに一石を投じたいな」

「それがパトロン?」

「スパチャシステムでも投げ銭でもなんでもよい。金のあるヤツが、金を出したい作品に有料星を付ける。その有料星はリワードに足される」

「なるほど、有料星とやらを課金で買って、それを贈る。星には無制限の無料星と、有限の有料星、二つが評価対象になる……金持ちの考えそうなことですね」

「CDの握手券を否定するのかね?人気投票が札束で買われるなんて普通のことだぞ?株や先物取引といった価値予測売買を否定するのかね?」

「金の無い人はどうするのです?」

「そのための無料星だ。それだけのアカウントが評価してくれたという事実は変わらんだろう?」

「そこはヤバいんで人って言ってください」

「それにな、一冊二冊程度、書籍化されても食っていけんだろ? さらに言えば、カクヨムの現在のリワード程度ではお話にもならない。それでは生きるか死ぬかの二択になってしまう」

「だから普通に生きるための活動をしているんです」

「それだと、執筆にかける時間が得られんだろう?」

「……金払いのいいパトロンに目を付けられ、じっくりと作品を書く時間を与えられる。あれ、なんだかモチベーションが上がりますね?」

「もちろん上限は必要だろう。慣れや慢心は人をダメにする」

「でも、飢餓感の中からしか生まれない作品だってあるはずです」

「そんなベストセラーチックな超大作じゃなくてもいいだろう? この作家さんの作品好きだな! もっと書いてほしいな! もっと読みたいな! そんな「書籍化は別に望まないケド、お小遣い稼ぎになるから書いてあげてもいいんだからね!」的な!」

「はあ、わからなくもないです。星が無くても、私や一部の方が評価する作品は、たくさんありますからね」

「その通り! 書籍化やコンテスト以外に、多くの作家さんが報われる可能性を秘めた道だ。さっそく運営に要望を上げたまえよ!」

「めんどくさいからいやですよそんなの。第一この仕組みが安定したら、書籍化にこだわる必要ありませんよね?出版業界の未来はどうするんです?」

「住み分けは可能だろう? 作家のモチベーションが上がれば質も上がる。結果として書籍化につながる」

「なるほど、量より質ではなく、高品質を大量に生み出すわけですね? 確かに、我が社も潤う良い提案に思えます。でも、結局は、金で評価が変化するのですか……」

「金はな、触媒なのだ。なんにでも変化する。大事なのは使い方なのだぞ?」

「わかりますけど、投稿サイトが、札束で殴り合う無法地帯になりそうです」

「その懸念に対する妙案もある。儂は『投稿作家ギルド』を設立する!!」

「定時なんでお先に失礼しますね」



―― 今度こそ完 ――

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出版業界が斜陽産業で書籍が売れないからってただのエンジニアにベストセラー作家になれ!って倫理的にどうなんです?そもそも小説なんて書いたことないんですが? K-enterprise @wanmoo

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