第11話 「5分で読書」チャレンジです
「ほう、全部で五本かね」
「さすがにホラーは書きながら怖くなっちゃったので一本で勘弁してください」
「ホラー、怖いのかね?」
「そりゃあもう。ですが、おかげさまで恋愛のもう一本、そんな怖がりの主人公をネタに書けました」
「どれどれ『甲斐さんは甲斐性無し?』という奴だな?拝見」
「今更ですが、目の前で自作をじっくり見られるのってある種の拷問ですね」
「公開するとだな、否応なしに晒されるのだ。むしろオブラートに包む分、儂の方がましじゃないのかね?」
「いまどき言わないですよね、オブラート」
「良薬口に苦し、だ。苦言こそ金言と言うではないか!でだ、この作品、苦み走って評して良いか?」
「上司に逆らう気力はありません」
「これ、公募の主旨を理解しているかね?どんな読者を対象としたコンテストかね?」
「……学生が朝の読書時間で読むお話を募集だそうです」
「主人公はおっさんで、相手も新人とはいえOLさんだ。選者にケンカを売っているようにも思えるが?」
「中学生にだって起業している子がいたり、社内恋愛に憧れを持ってたりするかも、しれませんよね?」
「狙う的が、小さすぎる」
「まあ、知ってました。そうそう学生の気分でお話しは書けませんでしたので等身大の自分を」
「体験談かね?」
「プライバシーの侵害です。でも、これはこれで挑戦させてください」
「ふむ。選者の思考がわからんのは確かだ。色物だからこそ引っかかる可能性もあるか……で、ホラーが『思草(オモイグサ)』か、どれどれ」
「ホラー作家ってすごいですよね。書きながら怖くならないのでしょうか?」
「エロ作家は自分で使えないとダメだと言うからな、本物の心霊体験を得たら喜んでネタにするのではないか?」
「恋愛小説はまったくあてになりませんけどね」
「脳内恋人と末永く暮らすのも選択の一つだぞ?で、これもまた、大学生とはいえ大人だな。通学路という指定なのに車通学とは」
「でも実際、車に乗ってるときって怖くないですか?私なんか後部座席に荷物置いて幽霊が座れないように予防するほどですよ?」
「儂は常に後部座席だからなぁ」
「ケッ、これだから社長様は」
「前だろうが後ろだろうが、いずれにせよ、車に乗る機会に乏しい世代には、この作品も共感は得難いのではないか?バーとか出てるし、酒も出てるし」
「未成年にはまずかったですか?」
「いや、異世界モノなどは成人が15歳とかで、飲酒描写も多い。潜在的な需要はあるだろうが、これも選者次第だ。だが、これが出版される場合、学校の図書館に置かれる可能性が高い。よってクレームを誘発する懸念は少ない方がいいのではないか?」
「酒やタバコといった小道具も時代の趨勢に勝てないというわけですね」
「きみ、どちらも嗜まんだろう?」
「健康に良くないじゃないですか。カッコよさとリアルは違うのです」
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