好きと嫌いの狭間

 好きだなぁ、と思ったときには時既に遅しで、

 嫌いだなぁ、と思うほどには早計過ぎて、


 好きと嫌いの狭間の中で、

 私という人間が出来ていく。


 人間とは人と人との間に出来るとよく言った物だ。


 人を嫌いになって、

 人を好きになって、


 そこでようやく個性が出る。


 個性が出ると生きにくいが、

 個性が出るほどに研磨され、鈍く光っていく。


 好きだなぁ、と人を想い、

 嫌いだなぁ、と人を思い、


 その感情すらも、その人がいなければ感じる物ではなかったと気づき、

 自分のもろさを知る。


 自分とはなんだろうか。

 己とは存在するのだろうか。


 この人がありふれる社会で、

 自分はどれほどまでに自分として生きていけるのだろうか。


 その為には、

 人を嫌い、

 人を想い、

 嫌われ好かれ、生きていく。


 嫌いな人は多い方が良い。

 そうすれば人に期待しなくてよくなるから。


 好きな人は多い方が良い。

 そうすれば嫌な事を忘れるから。


 あらまぁまぁ、

 どっちも必要じゃないかい。


 上手いこと出来た世界だわね。

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