2021/06/04:即興じゃない小説トレーニング。(甘いコーヒー)―#物語

 今日は「即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/)」を使って書いた「甘いコーヒー」を、時間制限を外して書き直そうと思う。今回も自己評価は行わないけれど、違いを感じて欲しい。


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タイトル:いつもどおりの甘いコーヒー

………………


 僕には彼女がいる。希未のぞみは粗暴な印象を初対面の人に与えている。彼女は昔から髪形を定めているそうで、その短い髪は高校から変わらない。制服を着ているとこだわりの髪形は個性として強調されていた。


「コーヒーは甘くしてこそよね。ブラックは只の強がりよ。」

「そうだね。」


 こんな調子で話すものだから、初対面でなくても敵を作ることがある。それでも友人が多いのは人柄ゆえだろう。


「あ、ヒロは違うのよね。コーヒーそのものの味を知りたいからって前に話してくれたの、忘れてないわ。」


 人を理解するわざに、僕はいつも頼っている。


「ありがとう。覚えててくれて嬉しいよ。」

「忘れないわ。……だって、初めてのデートのときよ、この話。」


 照れる彼女が可愛い。どんなことを思い出しているのだろう。

 初めてのデート。そのとき訪れたのもこの喫茶店だった。僕が彼女に一度でもいいから来てほしかった場所。思い出の場所。


「何度もこの喫茶店には来たけれど、あの時のことを忘れるなんて、ありえないわ。」


 でもね、この喫茶店は今日で閉店するんだ。だからサービスでケーキを頂いた。だからいつもくれるコーヒー一杯無料券もくれなかった。


「またきたいね。」

「そうね。何度だってきたいわ。」


 コーヒーカップのコーヒーが底をつく。窓の外を見て思う。


「こんな日がずっと続けばいいのに。」





「ずっと続くのは遠慮したいわ。」

「え?」


 否定されるとは思わなかった。しかし表情は真面目で、意地悪ではない


「何も起きないなら何もする必要はないわよね。普段と変わらない、安心できるものは大事だけど楽しむものとは思ってないわね。」


 僕は素晴らしい人間ではない。


「何もしなくていいと言われても僕はコーヒーを飲むかな。」

「どういうこと?」

「自分以外の誰かが何をしていようと、僕にはしたい事があるし十分な時間がある。普段通りに過ごせるなら僕はその境遇を受け入れるだろうね。」


 こんな僕の言葉を彼女は理解しようと考えてくれる。


「……あ、そっか。今が充分に幸せならそのままがいいわよね。」

「そのとおり。僕は今が幸せだよ。」

「……!、そ、それでも、毎日同じような服装なのはどうかと思うわよ。いつも真っ黒。」


 直感で好きな服を選ぶと黒色になり、コーディネートを考慮しないので黒一色となる。


「''黒尽くめの馬鹿''と言われてても反論できないわね。」

「君が許してくれるのなら、僕はこのまま生きていくよ。」

「それなら、今日は服を買いに行かないとね。」

「あれ?」


 希未は許さなかった。僕は少しずつ日常が変わっていくのを彼女と楽しみたいと思った。それでもいい。彼女とならより沢山の幸せに出会えると思うから。


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 今日は橘岬が来ない。いや、こなくていいのだけれど。


 人と会話することは、なぜか楽しいと感じる。実際に何か情報を得ただとか勉強になっただとか、確実なものに勝るほどに価値がある。

 チャットですら大して会話ができない私には、彼女のような人間は貴重だ。


(……どうでもいい相手の方が話しやすい。)


 おばあちゃんやおじいちゃんは大切な人だ。だから話せないこともある。人間なんて日本人だけでも1億人いるというのに、出会った人すべてに気を使って委縮して、傷つけないように生きることは窮屈だ。

 それでも他人の感情を考えてしまう。それならば、いっそ全く考えないように生きた方が楽しいのではないだろうか。この個性が生まれつき二度と変わる事の無い性格なのだとすれば、理性による制約を受けたとしても表面に漏れ出し、私を苦しめるだろうから。


(自立したいと考えているのに、どうして他者をそれほど気遣うのか。私にもわからないよ。)


 答えのない問題なんて考えるだけ無駄だというのに。

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