竜胆 〜 リンドウ 〜

Kohr.435円

第1現目 また1年、コイツと一緒かよ

4月、新定家高校の正面玄関前にて


この高校には何本か桜と梅が植えてある。今日から新学期で、この桜と梅の花びらがひらひらと舞う中、新入生や新たな学校生活を送ろうとする高校生たちがクラス発表ボードを見に来ていた。


すると、発表ボードの前で先生と生徒が争っているのが見えた。


〈古郡教頭〉おい!! お前今年もそんな感じで行くのか! こんな馬鹿みたいな髪色しやがって、この不良が! こんなのでは父親も悲しむぞ、林藤!


〈林藤〉ちっ! うるせえな! くそ古郡! この色はオレのポリシーだ!


〈古郡教頭〉先生に向かってなんていう口だ! 早くこのわけの分からん紫の頭、どうにかしてこい!


〈林藤〉うっせえな! オレの勝手だろ!


そう言うと、林藤は髪を掴んでいた教頭の手を振り払い、走ってその場から逃げた。


〈古郡教頭〉あ! 何処いくんだ! もうすぐホールルームだから出ろよ! まったくあいつは……


古郡教頭はどこか悲しい目をしていた。


林藤は体育館の裏まで来ていた。


〈林藤〉ハァハァ…… ここまでこれば大丈夫だろ


すると、突然声を掛けられた。


〈帯刀〉キ~リ! やあ!


〈きり〉うわぁぁ! な、たまげた~ 樫夫かよ……


〈かしお〉ははは! 相変わらずだね~


と、樫夫は笑っていた。


〈きり〉やあ! じゃないし! お前あほなの?ばかなの? てかなんでお前、そんなに気楽なの? おれと似たような髪色して


〈かしお〉なんでだろうね~


桐は紫色の髪色でワンピースのゾロばりにツンツンギザギザした髪型をしているのだが、この樫夫は赤色の髪にイケメン風のシュッとした髪型をしている。しかもこの男、わざと眼なんて悪くないのにメガネなんてかけている(伊達メガネ)。


〈かしお〉まあ、おれは優秀だからな


〈きり〉うるせえ!


その時、桐の耳元で「ねえ~ ひまカマってよぉぉぉ」という女の子の声が聴こえる。


〈きり〉うるせえな! お前に構ってるひまないの!


〈かしお〉は? お前なに言ってんの?


〈きり〉あ、あ、いやなにも……


そんなやり取りしてる時に女の子が1人間に入ってきた。


〈すみれ〉2人とも!


〈かしお・きり〉おん?


と、後ろを振り向くと中学からの知り合いの女の子で菫がいた。


〈すみれ〉2人とも、もうすぐホームルームが始まるよ!


〈きり〉菫かよ、別にお前に関係ないだろ?


〈かしお〉それがそうでもないんよねぇ


〈きり〉は?


〈かしお〉同じクラスだしー


〈きり〉はあ!? やめとけって! うそだろ!?


〈すみれ〉なにその嫌な感じは? あのね、かしおもきりも私と同じ2年B組よ!


〈きり〉えぇ、まじかよ!


桐は同じクラスにショックで頭を抱えた。


〈すみれ〉まあ、いいけど行くよ!


〈きり〉は? 指図すんなよ?


すると、菫はメガネを取った。


〈すみれ〉あ? 早くこい……


めちゃくちゃ怖い顔で桐を睨んでいた。まるで百鬼夜行に出てきそうな鬼みたいな目付きをしてあた。

菫は本当に目が悪いのだが、イラっとくると外して怒ることがある。

〈きり〉は、はい


きりは渋々、菫の後ろを歩いた。


途中、小声でボソッと樫夫が話しかけて来た。


〈かしお〉キリ……


〈きり〉ん? なんだ?


〈かしお〉さっきのってもしかして、あの例のやつか?


〈きり〉あ? あぁ、あいつが耳元で話しかけやがった……


実は桐には他の人とは違う特殊なところがある。

それは、桐に憑いてるクルンッとした凛々しい尻尾、お祭りで買うようなイノシシの仮面を顔にずらしてつけている。さらに女の子、いや雌で身体は細く、服は着物みたいな服装をしている。髪型はショートヘアぽい、青色みたいな水色みたいな髪色している。そして、耳はツンッと細長い。猫みたいに。


そんな雌が横でフワフワと浮かんでいた。


そう桐は去年の夏頃からこいつに取り憑かれた。


取り憑かれた理由は本人しかわからない。という、理由は絶対教えてくれない。1度聞いてはみるものの、なぜか頬を少く赤くさせて話してくれない。話してくれない理由はもう1つある。本人いわく、記憶が断片的だそうだ。そう、記憶喪失みたいな感じなんだそうだ。最初会った時は、夜の寝る時に金縛りに遭遇した時にこいつが出てきて話をするほどだったのだが、最近は慣れてしまったのか、普通に生活と共にこいつは現れて話したりできるようになっていた。見る限りだと恐らく、猪の化身かなにかだと思っている。でも、見ると普通のカワイイ女の子。しかも最近めちゃくっついてくる。しかもなんか力が強い!


ギュッとされる痛いのだ。細い身体のどこにあんな強い力がでるのか。


ただ、いい事も多少ある。それはオッパイ。くっ付くたびオッパイが体に触れるのだ。見事だ、見事だよ。その大きなオッパイが触れるのは。


桐はそんな邪な気持ちが少しだけあった。だが、本当にそれ以外は嫌っている。


この幽霊の名前は正式にはジャンシャン・エウドバだそうだ。そして、狛猪であり神使とも言っていた。


〈きり〉まあ、どうにかならんかね~


〈かしお〉ならないねぇ~


などと樫夫は他人事のように気楽に返事をしていた。この幽霊に関しては、一応この樫夫だけには話してある。


話してあるが、樫夫自体見えるわけではない。視えるのは桐だけだ。


そんな事をコソコソ話していると、菫が振り向いた。


〈すみれ〉なにコソコソしてんの? 早く付いてきて!


〈きり・かしお〉はーい


桐たちは3人は教室へと向かった。


桐はまたこの1年、この幽霊に翻弄されながら日常生活を送ると考えるとため息ばかりついていた。

どうしたものかと考える様になっていた。

さらに今日はホームルームだけだが、明日から授業も始まる。桐は憂鬱で仕方なかった。今日は活気のない顔を浮かべていた。


ある幽霊と桐との奇妙な非日常な高校生活がまた始まった。


ー 1現目 また1年、コイツと一緒かよ ー 続く

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