第6話
翌朝俺は、玩具メーカーで小さめのスリングショットを3つ作り上げた。浩美の分は全長10センチギリギリの大きさで作ってあり、性能は俺の持ってるスリングショットとほぼ変わらない。
違いはゴムの性能を変更した。威力は大きく落ちてしまうが、より軽い力で扱うことができるものだ。
子供たちの分は、それぞれの体の大きさに合わせてかなり小型な物を作り上げた。そして、ゴムはさらに楽に引けるよう調整をしておいた。
3人のスリングショットでは、おそらくゴブリンの頭に当てられたとしても即死させることは難しいだろう。
しかし、どこだろうと当てることさえできれば、十分にダメージは与えられるだろう。例え当てられなくても、俺の願いは魔物を倒して欲しいのではなく、牽制にでも使えればそれで十分なのだ。
それとこの世界では、繰り返し使い続ければいつか俺と同じ射撃スキルが発現する筈なのだ!レベル1でも持っていればかなり使えるものになるのは自分のことでよく分かっているので、それを積極的に狙っていこうかと考えている。
次に貯まったスキルポイントの利用方法だ。
昨日のことを受け、複数の敵に襲われても安全に家族を守る方法がないかと色々と考えた。スリングショットは連射ができない為、複数の敵に同時に攻められると、家族を守りながら戦うにはどうしても無理が生じてくるのだ。
俺は複数の敵に同時に攻撃する手段を考えた。しかし、俺のスキルとステータス、それにスキルポイントではそのような手段は見つけることができなかった。
では、どうするか…その答えはスキルを覚える為のステータスの組み合わせの例の中にあった。
要は家族が狙われなければ俺は敵に集中できるのだ!
俺は302ポイントあったスキルポイントを、HPに200ポイント、物理耐性に100ポイント注いだ。
HPは100ポイントで500上昇する。つまり1000上昇して2000となった。
物理耐性は100ポイントで500上昇する。つまり500上昇して2000となった。
これにより、HP2000、物理耐性2000、剣術2or盾1or格闘2の条件を達成し、新たに【挑発】のスキルを覚えることができた。
このスキルは、使用すると3分間、その場にいる敵対するもののヘイト(敵対心)を集めることができるというものだ。
本来はパーティーのタンカー役、つまり盾役が使うスキルなのだが、今回は目的は違うが、これで必要に応じて使用すれば昨日のような状況でも対処できるようになるだろう。
《ステータス》
[名前]
社 智也
[年齢]
40歳
[種族]
人族
[HP]
2000
[MP]
1000
[力]
2000
[物理耐性]
2000
[魔法耐性]
1500
[状態異常耐性]
1500
[器用さ]
2000
[素早さ]
1000
[魔力]
1000
[習得魔法]
なし
[習得スキル]
格闘レベル2
射撃レベル2
料理レベル1
挑発レベル1
[ユニークスキル]
玩具メーカーレベル1
玩具収納レベル1
[スキルポイント]
2ポイント
.....
....
...
..
.
「パパ、これもらっていいの?」
「あかりのもありゅ~!」
「私のまで?ほらみんな、せーの…」
「「パパありがとー!!」」
「良かった喜んでもらえて。最初は中々当てることが出来ないと思うけど、玉はパパがいくらでも作ることができるから、焦らずにたくさん練習したらいいさっ!」
「うん!頑張るー!!」
「あかりも~!」
「パパありがとうね。子供たちもあんなに嬉しそう!
子供たちは強いわね?こんなにいきなり環境が変わったのに、元気そのものだわ!私も見習わないと…」
「昨夜よく寝れなかったのか?」
「いえ、ちゃんと寝れたわよ!昔から何があっても寝れる体質なのよ。知らなかった?
ただ…正直この新しい世界にはまだ馴染んでないわ…今朝も起きたら元の世界に戻ってるんじゃないかって変に期待してしまっていたわ。外を見てやっぱり現実なんだってショックだった。」
「そうか…やっぱり日本に戻りたいよな?正直どうすれば戻れるか俺にもさっぱり分からない。でもこの世界の生活に余裕ができたら、日本に戻る方法を探してみよう!」
「パパは日本に戻りたいとは思わないの?」
「俺は正直どっちでもいいんだ…日本での生活も好きだった。仕事も好きだったしな!
ただ日本での生活が幸せだったのは、全て家族が一緒だったからなんだ!ママと子供たちが居てくれたから俺は幸せだった。
この世界でも俺は幸せを感じてる!愛する家族が一緒だからなっ!!俺の幸せは、家族を幸せにすることだ!だからママが日本に帰りたいなら、俺はママの幸せの為にそれを目指すよ!」
「パパはぶれないわね!相変わらず家族が一番なのね?日本でも飲み会に誘われてもほとんど断ってたものね…「家族に早く会いたいから、今日は帰ります!」っていつも断られるって米田さんが嘆いてたわよ!」
「米田か!あいつはいい奴なんだが、毎日飲みすぎなんだ!俺の家族との時間を奪う権利はあいつにはないのさ!!」
「そんなこと言ってるからパパは友達少ないのよ!そこだけはちょっと心配になるわ。」
「友達もちゃんといるさ!ちょっと…かなり連絡を取ってないだけだ…」
浩美は軽いジト目で俺を見ていた。
俺がこんなに家族を大事に思う性格になったのにはもちろん理由がある。
っといっても大した理由ではない。俺の父が俺以上に家族を大事にする人だったからだ!家族の為に何かをすることに何の躊躇いもない人だった。
家族の為に酒も煙草も止め、俺と同じように毎日夜7時過ぎには当たり前のように帰ってくる。小さい頃には休みの日は俺や妹を必ずどこかへ連れていってくれた。
母方の祖母が病気になってからは、20年もの年月の間、欠かさず毎週末片道2時間半の道のりを運転していた。
俺は聞いたことがある。
「父さんは婆ちゃんのことよっぽど好きなんだね?」
父の返答はこうだった。
「父さんはあの人のことは実はそんなに好きではないよ。20年お世話をしても、感謝してる様子もなく、文句ばかり言ってくる人だからね!でもね…父さんの大好きな母さんを産んでくれた人だから大事にしてるんだ!
それにね、父さんがあの人を見捨てることは簡単だ。でもそうしたら母さんはどうなる?母さんは毎週電車やタクシーを使って実家に帰るだろう。親だからね。
そうしたら、母さんは疲れて、誰にも頼れずに笑わなくなっちゃうかもしれないだろ?父さんの幸せは母さんの笑顔を見ることなんだ!
だから、父さんがしてることは自分の為でもあるんだ!!」
当時の俺には正直よく分からなかったが、すごいとだけは思った。
その父が、俺の結婚の報告を聞いたときにこう言った。
「智也自身が幸せになれるように、家族を大事にしなさい。」
と…正直、大した言葉ではない。普通な言葉だ!しかし、この父が言うと途端に重い一言に聞こえるから不思議なものだ。
俺はこの父の背中をずっと見てきた。だからこそ、この一言の重みが俺の家庭を持つ基礎となったのだろう。
俺は家族を大切にしてきた父を尊敬する。それは自身が父親になってからより強くなった。
だから俺はどんな状況においても家族を幸せにすることが、俺の一番の幸せだと自信を持って言えるのだ!!
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