最終話 戻りし日常


 日常が戻ってきた。


 世界から魔法は消え、それが当たり前のように動いている。


 驚いたことに、まりあと謙二は未だに付き合っている。

 彼女と付き合うことで自信を持ったのか、謙二は吃ることがなくなり、背筋を伸ばすようになった。少しでもまりあと釣り合うためにワカメヘアーに縮毛矯正をかけ、分厚いダサ眼鏡をやめてコンタクトにした。そうすると不思議なことに意外と顔の整った好青年に見えるのだ。最近、まりあの写真でコンクールの賞をとったらしい。幸せそうに惚気られたと梨紅が言っていた。


 そして、詠と梨紅は、付き合うことになった。

 もちろん、香夜は祝福して──


 ──くれなかった。


「あなたを彼女だなんて、ましてや将来の義姉あねだなんて絶対に認めないんですからね」


 覚悟してくださいね、と梨紅に言い放つ。


「意地悪姑並みにいびっていびって別れさせてやりますから」


 香夜はこれでもかというぐらい綺麗な笑みを浮かべた。


「それでも付き合うというなら、──わたしの屍をこえていってくださいね」


 その言葉に梨紅は獰猛な笑みを浮かべて、上等だ、と言った。


 これから始まるのは第何次梨紅香夜大戦だろう。


 世界の平和を憂いて詠は空を見上げる。


 魔法世界から元に戻っても変わらぬ日常がここにあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

I wish 〜妹はガチで兄を愛しすぎている〜 宮原陽暉 @miya0123456

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ