第23話 主人公-最終話


 「さぁ、いくわよ」リョーコ

「負けて元々なんて思わないで、やるからは勝つわよ」あゆみ

「あれ、今日はあゆみちゃん、積極的ね」和美

「いいの。こっちの方が明らかに強いんだから」あゆみ

「そう?」恵理奈

「要は、気合よ。ね」リョーコ

「そんなことないわ。あたしも、こっちの方が強いと思う」ミキ

意気盛んな選手に負けないように活気のある声で由起子先生が言った。

「さぁ、お喋りはそのくらい。勝つ気でいるのね」由起子

「もちろん」一同

「じゃあ、こうしましょう。サンディ」由起子

「ハイ」サンディ

「三点まで、取られてもいいわ。それ以上取られそうだったら、ミキちゃんと交代。その後は、あゆみちゃん、ネ」由起子

「あたし、点取られないよ」ミキ

「まぁ、いいじゃない。顔見世よ。あゆみちゃんの勇姿も見せつけてやらないと」由起子

「意地悪」あゆみ

「嫌なの?」由起子

「あたしは、どっちでもいいわよ。要は、打って走れたらいいの」あゆみ

「思い切り打って、走り回って。どんどん走って攪乱してやりなさい」由起子

「なんか、先生、楽しそう」しのぶ

「もちろん。こんな機会なんてそうそうないからね。男だけが野球できるわけじゃないって思い知らせてやりなさい」由起子

「はーい」一同


          * * *


 『審判の呼び掛けに、円陣が解けて、ホーム前に整列しました。女子チーム、小柄ではありますが、華やかに見えますね』

『んー。なかなか、可愛い娘も多いし、いいね』

『えぇー、直樹さんでも、そんな風に女の子のこと見るんですか?』

『あのねぇ、俺だって、健全な男の子だよ。可愛い娘は、可愛いって言ってもいいだろ』

『じ、じゃあ、ついでに訊きますけど、好みのタイプの女の子は?』

『由理子』

『はい?』

『俺の好みは、由理子』

『あのぉ、それって、妹さんじゃないんですか?』

『でも、好みのタイプだろ。じゃあ、由理子』

『は…はぁ、そうですか…。まぁ、いいです。

 審判のコールで挨拶も済みました。後攻の野球部の面々がグラウンドに散らばっていきます。打席には、先攻めの女子チームの切り込み隊長、一番の清水朝夢見さんが入ろうとしています』

『楽しみな試合だなぁ』

『本当ですね。晴天の下、男女、互いにメンツを賭けて、いま勝負を始めようとしています』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

グリーンスクール - 主人公 辻澤 あきら @AkiLaTsuJi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ