アーモンドの花

 Almond blossom in the spring sunshine

 Fuji-Yama gracious lady

 Island treasure home of lovely things

 Shall I never see you again?...

『The Shape of Things to Come(1933)』


 アーモンドの花が咲き誇る 春の太陽の光の中に

 富士山 優雅で美しく凛とした女性

 宝の島 かわいい者達に満ちた家庭

 僕はそれ等を もう決して見る事は出来ないのだろうか?

『H.G.ウェルズの予言された未来の記録』


「The Shape of Things to Come(邦:世界はこうなる)」は、イギリス人作家のH.G.ウェルズが1933年から2106年にかけての世界の出来事が、ひとつの超国家が人類のすべての問題を解決すると推測されている。ウェルズ的予言の代表的一冊である。


 一部では予言書のように扱われているが、ガス兵器など当時でも予測可能なものだけが的中しており、年代等はほとんどではずれている。映画化もされた。


 この小説が、日本で一時期盛り上がったのは、ノストラダムスの大予言で有名な五島勉氏が、数十年ぶりに「H.G.ウェルズの予言された未来の記録」という本を発表したからである。


 その中で、「アーモンド四行詩」の翻訳に関してのいきさつが問題となった。


 邦訳の『世界はこうなる』(吉岡義二訳) が出版されたのは1959年で、吉岡氏に、以下のような要請があったらしい。


 ―――『H.G.ウェルズの予言された未来の記録』―――――――――――――――

「おお、あの詩に手を出してはならん。特に日本人は手を出すな。

 世の中には日本人が知らん方が良い事もあるぞ。日本の事を思うなら、あの詩をあのまま日本語に訳すのは止めろ。君のためだぞ。」


「ミスター・ヨシオカ、貴殿のウェルズ作品の翻訳の成功を祈ります・・・。ただ、あのアーモンドの詩を、あのままの形で訳してひろめるのだけは、止めていただけないでしょうか。決して悪い意図で言うのでは無い。あの詩があのままの形で訳されて日本に広まると、間違ってとられるリスクがある。だから日本の未来のため、世界の未来のために、あの詩の訳にはアーモンドという言葉を入れずに訳して欲しい。また、なるべく無意味な、つまらない詩として扱って欲しい。それさえ受け入れてくれれば、後は全部、貴殿の好きな様に訳して構わない。それについて、我々も今後一切、何も申しません。アーモンドの入らないつまらない詩にして下されば・・・。」


「その場合、貴殿はその邦訳本を出せなくなります。我々にはそれを出せないようにする力があります。しかしこれは強制では無くお願いです。あの詩の訳にアーモンドという言葉を出さない。あの詩全体を目立たなくする。その二つだけを我々はお願いするのです。」


「理由は知らない方が宜しいと思います。何しろあれはナンバーズの秘儀ですから。」

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そのため、四行詩は、「アーモンドの花」を「桃の花」に変えざるを得なかったらしいのである。


 しかし、日本と言えば桜、なぜ、吉岡氏は桜にしなかったのであろうか?


 この詩は、小説の中で、戦地で死ぬ日本兵が、日本を思って歌った詩である。

 ならば、この詩を桜とするのが普通ではないだろうか?


 五島勉氏の「H.G.ウェルズの予言された未来の記録」では、あまり深く探っていない


 そのためか、様々な解釈が生まれた。

 これが、後に、20世紀末に流布したヒトラーの予言を「日本人は神人になる」とすることや、ミタールタラビッチの予言を「東洋(日本)から救世主が現れる」という解釈にリンクさせることとなる。

 そして、日本の世界的に重要な役割をなす。黙示録の預言は、日本がキーとなると言った、思想を好意的に捉えた考えをうながした。


 しかしながら、

「・・・だから日本の未来のため、世界の未来のために、あの詩の訳にはアーモンドという言葉を入れずに訳して欲しい」と言った人物は、「世界の未来のために」と言っており、日本人真実を知ってほしくない、と言うわけではないようだ。

 日本人のために知らない方がいい、と言ったのである。

 また、こうも言っている。

「あの詩があのままの形で訳されて日本に広まると、間違ってとられるリスクがある」


「何しろあれはナンバーズの秘儀ですから」という文言は、五島氏のによれば、旧約聖書の民数記(Numbers)の事だといいます。

 これが、アーモンド四行詩の核心となる所であることは間違いないだろう。


 小説は5つの章で分けられています。


 1、Today and Tomorrow: The Age of Frustration Dawns

 1933年までの近代ヨーロッパ

 2、The Days After Tomorrow: The Age of Frustration

 1933~1960。 日本の戦争参加など。アーモンド四行詩はここ

 3、The World Renaissance: The Birth of the Modern State

 1960~1978。理想社会、革命

 4、The Modern State Militant

 1978~2059。反乱、世界評議会

 5、The Modern State in Control of Life

 2059~2106。英語の標準化。


 この2、The Days After Tomorrow: The Age of Frustration

 で、武昌から敗走中に開封で殺された日本兵の日記を紹介するシーンで、上の詩がでてくるのだ。そして、死に近づく中で、二度と帰ることが出来ない日本を思いながら、書いたという設定である。


 五島氏によって言及された民数記、アロンの杖は、17章にある。


 ――――民数記 第17章―――――――――――――――――――

 17:1主はモーセに言われた、

 17:2「イスラエルの人々に告げて、彼らのうちから、おのおのの父祖の家にしたがって、つえ一本ずつを取りなさい。すなわち、そのすべてのつかさたちから、父祖の家にしたがって、つえ十二本を取り、その人々の名を、おのおのそのつえに書きしるし、

 17:3レビのつえにはアロンの名を書きしるしなさい。父祖の家のかしらは、おのおののつえ一本を出すのだからである。

 17:4そして、これらのつえを、わたしがあなたがたに会う会見の幕屋の中の、あかしの箱の前に置きなさい。

 17:5わたしの選んだ人のつえには、芽が出るであろう。こうして、わたしはイスラエルの人々が、あなたがたにむかって、つぶやくのをやめさせるであろう」

 17:6モーセが、このようにイスラエルの人々に語ったので、つかさたちはみな、その父祖の家にしたがって、おのおの、つえ一本ずつを彼に渡した。そのつえは合わせて十二本。アロンのつえも、そのつえのうちにあった。

 17:7モーセは、それらのつえを、あかしの幕屋の中の、主の前に置いた。

 17:8その翌日、モーセが、あかしの幕屋にはいって見ると、

 17:9モーセがそれらのつえを、ことごとく主の前から、イスラエルのすべての人の所に持ち出したので、彼らは見て、おのおの自分のつえを取った。

 17:10主はモーセに言われた、「アロンのつえを、あかしの箱の前に持ち帰り、そこに保存して、そむく者どものために、しるしとしなさい。こうして、彼らのわたしに対するつぶやきをやめさせ、彼らの死ぬのをまぬかれさせなければならない」

 17:11モーセはそのようにして、主が彼に命じられたとおりに行った。

 17:12イスラエルの人々は、モーセに言った、「ああ、わたしたちは死ぬ。破滅です、全滅です。

 17:13主の幕屋に近づく者が、みな死ぬのであれば、わたしたちは死に絶えるではありませんか」。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 このアロンの杖は、アーモンドの木で作られており、その杖が芽を出し花が咲いて実を結んだことからイスラエルの祭司族の祖となるレビが選ばれた。

 そのアーモンドの杖は、契約の箱の前に保存された。これは、民数記17章3節から10節に記述されています。

 この民数記を読めば、アロンが選ばれることに不平を言う人間を黙らせるための茶番であり、民の不平を鎮めるために神が提示した方法だったことが分かります。

 または、アーモンドが示すものが松果体であるという解釈もできます。

 その場合、アーモンドの花が咲くという奇跡は、アロンの覚醒です。


 また、民数記では、アロンは神の怒りを買い、約束の地へは入ることは許されなかった。

 そのことを、故郷に帰ることが許されなかった日本兵を重ねていることが分かります。


 ――――民数記 第20章―――――――――――――――――――

 20:7主はモーセに言われた、

 20:8「あなたは、つえをとり、あなたの兄弟アロンと共に会衆を集め、その目の前で岩に命じて水を出させなさい。こうしてあなたは彼らのために岩から水を出して、会衆とその家畜に飲ませなさい」

 20:9モーセは命じられたように主の前にあるつえを取った。

 20:10モーセはアロンと共に会衆を岩の前に集めて彼らに言った、「そむく人たちよ、聞きなさい。われわれがあなたがたのためにこの岩から水を出さなければならないのであろうか」

 20:11モーセは手をあげ、つえで岩を二度打つと、水がたくさんわき出たので、会衆とその家畜はともに飲んだ。

 20:12そのとき主はモーセとアロンに言われた、「あなたがたはわたしを信じないで、イスラエルの人々の前にわたしの聖なることを現さなかったから、この会衆をわたしが彼らに与えた地に導き入れることができないであろう」

 20:13これがメリバの水であって、イスラエルの人々はここで主と争ったが、主は自分の聖なることを彼らのうちに現された。


 20:23主はエドムの国境に近いホル山で、モーセとアロンに言われた。

 20:24「アロンはその民に連ならなければならない。これはメリバの水で、あなたがたがわたしの言葉にそむいたからである。

 20:25あなたはアロンとその子エレアザルを連れてホル山に登り

 20:26アロンに衣服を脱がせて、それをその子エレアザルに着せなさい。アロンはそのところで死んで、その民に連なるであろう」

 20:27モーセは主が命じられたとおりにし、連れだって全会衆の目の前でホル山に登った。

 20:28そしてモーセはアロンに衣服を脱がせ、それをその子エレアザルに着せた。アロンはその山の頂で死んだ。そしてモーセとエレアザルは山から下ったが、

 20:29全会衆がアロンの死んだのを見たとき、イスラエルの全家は三十日の間アロンのために泣いた。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 アーモンドは、日本へは明治の初めに扁桃の名前で導入されました。しかし、日本の気候に適さなかったため栽培・普及にいたりませんでした。

 その花は、桃に似た花をつけ、その樹形と葉もまた桃によく似ています。

 アーモンドの花を日本兵の無念に当てたのは、約束の地に帰ることが出来なかった事と重ねているのでしょう。


 吉岡氏は、ただ単にアーモンドが桃に似ているからの理由で桃の花を当てたわけではない。

 恐らく、吉岡氏は、アーモンドの花の意味を理解していました。そのため、吉岡氏が、桜の花ではなく、桃の花としたのは、この辺りの解釈を理解していたからであろう。

 あえて、桃の花ににしたのは、桃の花が、百の花だからだ。


 白は菊の隠語で、菊を英語でキリストのマムである。その白に一を足すと百で、白の開花(覚醒)の意味があるからです。

 このことは、前回の「ア」「ヤ」「ワ」の言霊で書いた通りだ。https://kakuyomu.jp/works/16816452220155676320/episodes/16817139558162405758



 H.G.ウェルズが何故、アロンと日本兵をつなげたのかは、本当の所は判らない。だかしかし、ここに深い意味が存在していることは間違いないだろう。


 ウェルズの著作で、この日本兵が息絶えた場所が開封です。この開封はユダヤ人コミュニティがかつて存在していました。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E5%B0%81%E3%81%AE%E3%83%A6%E3%83%80%E3%83%A4%E4%BA%BA


 ―――開封のユダヤ人――――――――――――――――――――――――――――――

 歴史資料によると、開封のユダヤ人コミュニティーは遅くとも宋代(960年-1279年)には成立し、19世紀末まで存続していた。


 ワイスによれば、バビロン捕囚の後紀元前6世紀に、異民族との婚姻を理由に預言者エズラにより追放され、インドの北西部(石碑では「天竺」と記述されている)に移住した支族レヴィ族と司祭の一族が、開封のユダヤ人の起源であるという。彼らはそこに何世紀もの間定住していた。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 日本とユダヤ人の関係は諸説あるが、このレビ族は日本にたどり着いていた痕跡があるのです。

 詳しくは以下

 https://www.historyjp.com/article/237/


 恐らく、ウェルズは、このレビ族のアロンが約束の地に入ることが出来ないことを、レビ族の約束の地を日本に見立てていたのでしょう。

 また、「吉岡氏へのお願い」は、日本が本当の約束の地であったことを隠すためであった可能性も考えることもできます。


 日本が約束の地であることが知られてしまうことは、日本の為ではないというのはいったいどういうことであろうか?


 吉岡氏へのお願いをした人物が、件のフリーメイソンであったなら、彼らにとって、何か大きな計画の支障になりうることがあったとことが考えられます。


 ひふみ神示の五六七の世が預言され、日本が神の国であることが示唆されています。

 このことからも、約束の地との何かしらの関係性を感じずにはいられないのです。

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