第21話

「というわけだったのよ」

「回想なが!! って、まって? え? 最初っから計画だったの? ていうか盗聴してんの?」

「ええ……一生の宝物にしていいかしら。将来ね、子供が出来たらお父さんはね、お母さんの事をこうおもっているのよって教えてあげるの」

『俺がやります。俺が彼女を助けます。彼女には言いたい気持ちがあったんです。俺は逃げてきた、薄々感じてはいたけど気づかないようにしてきたけど……もう、逃げるのはやめようと思います。だって俺は彼女が姫奈が大好きだから』

「死にてぇぇぇぇぇぇぇ!! 待って、子供って早すぎない? てか、それを聞かせるのおかしいでしょ!!」



 店内に俺の絶叫が響く。しかし、みんなはほほえましいものでも見ているようにこちらを見つめている。いやいや、犯罪スレスレじゃないか。訴えたら俺勝てそうじゃないかな?


「その……ごめんなさい……引いたわよね……こんな女……」



 俺が叫んでいると隣に座っている姫奈がしょんぼりとしながら不安そうにこちらを見つめている。そんな彼女を見ながら何と答えようか悩む。いや、答えはもう決まっているんだよ。だけどさ、直接言葉にしたらこれが告白になるわけで……そうしたら俺達はもう、戻れないのだ。彼女を幸せにできるなんてわからないのに……

 いや、違うだろ。そんなのどうでもいいんだよ、大事になのは俺が姫奈をどう思っているかなんだよ。世間体とかさ、身分とかどうでもいいんだよ、目の前の恋愛に関してはクソザコなお嬢様ががんばったんだ。だったら俺だって……もしかして、父と母のように俺達の関係も破綻するかもしれない、だけどさ……これだけがんばってくれた彼女に対して自分がこわいからって理由だけで逃げちゃいけないと思うんだ。


「姫奈……その、幸せするとは保証はできないかもしれない……、でも俺は姫奈が好きだ。だから俺と付き合ってくれ」

「一夜……いいの……? 私は一夜の気持ちを知るためにこんな三文芝居をしたあげく盗聴をするような女よ」

「いいっての、それだけ俺を好きって事だろ。姫奈こそ俺でいいのか?」

「いいに決まっているでしょう、私も大好き!!」



 姫奈が泣きながら抱き着いてくる。それと共に周りから拍手の雨があふれる。いや、これまじで恥ずかしいんだけど……よく考えたら俺って部活の友人や同級生の前で公開告白をしたんだよね……



「七海」

「はい、お嬢様」



 姫奈がパチンと指を鳴らすとともに七海さんがなんかでかい本と一枚の紙をもってくる。何だこの辞書みたいな厚さの雑誌は……ゼク〇ィだぁぁぁぁぁ。ってことはこの紙は……


「さすがに入籍届は早くないかなぁぁぁぁぁ!! 俺達まだ高校生なんだけど!!」

「なによ、私たちは一緒に5年も暮らしているし、気心もしれてるじゃない。それとも遊びのつもりで告白したの?」



 俺の反応に姫奈が拗ねたようにこちらを睨んでくる。やっべえ、怒ってる顔も可愛いな。でもさ、まだ問題があるんだよね。



「嬉しいけど愛が重すぎるぅぅぅぅぅ。てか、王牙おじさんを説得しなきゃいけないだろ」

「それなら心配ないよ」



 俺のツッコミに厨房の奥から一人の男性が出てくる。王牙おじさんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! え、なんでいるんだよ。てか、さっきの告白は王牙おじさんにも聞こえてたの? さすがに死にたいんだが!! 

 彼は姫奈と俺を交互に見た後に大きくため息をついた。やっぱり気に喰わないよね……俺が説得しようと姫奈への思いをぶちまける前に王牙おじさんが口を開く。


「まずはおめでとうと言っておこう。やはり血は争えないな……実は私もね、妻の使用人だったんだよ。そして、君と同じように妻と相思相愛だったんだ。だけどやはり身分というものがあるだろう? だから中々私たちの関係もすすまなかったんだよ……」

「え? そうだったんですか、王牙おじさんの時はどうやって……?」

「ああ、高校二年の時にね、車が渋滞で来れないというから歩いて一緒に帰ったんだが、雷雨におそわれてね……雨宿りと称して誘惑をされてラブホにね……そこからはなし崩しだったよ……君はそうならないように貞操帯を身に着けてもらってたんだが無駄だったようだね……」



 マジかよ……どうやらあの貞操帯は姫奈だけでなく俺も守るためだったらしい。というか姫奈のお母さん会ったことないけどマジでやばいな。どうやら、姫奈のやばさは遺伝の様だ。いや、一緒に寝た時に襲われなかった分姫奈の方が常識があるのかもしれない。俺がちょっと恐怖を感じながら彼女を見つめていると、照れくさそうに確認をしてくる。



「ねえ、一夜……これからは恋人でいのよね?」

「ああ、色々突っ込みたいことはあるけどさ……その……よろしく頼む」

「そう、あと一つだけ否定させてもらうわね、あなたは私を幸せにする自信がないっていっていたけど、あなただけが頑張るなんておかしいでしょう? 一緒に幸せになるのよ」



 そういって満面の笑みで抱き着いてくる姫奈はとても可愛くて、魅力的で、あと胸の感触がやばくて……俺の愛馬が暴れそうになり激痛が走る。いや、マジで洒落にならない!!


「うおおおおおおおおおお」

「どうしたの、一夜?」

「いやなんでもないから……大丈夫だから……ちょっと一瞬だけはなれてまじで」

「なんでよ」


 そう言って俺が彼女から距離を置こうとすると唇を尖らせて不満そうな顔をする。まさか、貞操帯をつけさせられていた後遺症とは言えずに俺は笑ってごまかす事しかできない。




「まあ、いいわ。いつかちゃんと理由を説明してもらうんだから。それでね……一夜と色々と行きたいところややりたいことがあるの」




 そう言って目を輝かせてこれからの事を語る彼女は何ともまぶしくて美しかった。これからも、まだまだ困難はあるけれど俺は彼女の幸せな未来を作っていきたいと思う。




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というわけで完結です。

正直最後の展開がやりたかっただけです。

楽しんでもらえたらなによりです。


今後も新作は投稿しますので作者フォローしていただけると嬉しいです

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ハイスペック恋愛クソザコお嬢様である黒乃姫奈に手を出したら俺の〇〇〇が飛ぶ~好きすぎて我慢できないから距離を置こうと思ってんのにウチに住むってマジで言ってんの?? 高野 ケイ @zerosaki1011

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