最終話 コンティニュー赤ちゃん、動きます

『んっ、ネネが来たようじゃぞ』


「えっ」


 タタタタタッ コンコン …ガチャ


「ルーララ様にゃー、やっぱり起っきしてたのにゃ、ネネには分かるのにゃ♪」


 ネネさんは嬉しそうに私を抱っこして、【花水木ハナミズキな香りのおむつ】をポンポンと触った。


「おむつは大丈夫みたいにゃ」


 先程、寒いギャグでコントのように壁から落ちた額縁にネネさんが気付いた。


「にゃ?壁に掛けてた額縁が落ちてるにゃ、ピン止めが甘かったのかにゃ?直しとくにゃ」


 バサッバサッ …チュン チュン チュン


 窓に小鳥が止まった。


「にゃ?ルーララ様、小鳥なのにゃ!ネネは魚も好きだけど、鳥も好きにゃ、早くルーララ様と一緒に食べたいにゃ」


 それからネネさんは私を抱っこしたまま、窓を開け外を見せてくれて、木や花や虫、池に居る赤い魚や、池に居る黄色い魚、池に居る青い魚などの事を色々お話してくれた。

 …どれくらい時間が経ったんだろ、お話を聞いてたらまた眠たくなってきた。赤ちゃんだから仕方がないわよね。


 そしてウトウトし始めた時、今まで大人しかった魔王さんが突然声を荒げた。


『―――避けるのじゃ!!!いや無理か!早くわらわと交代するのじゃ!!わらわを【表】に!!むっ?体を動かせれる?いつの間にか既にわらわが【表】になっておったか、そういう事か』


 私はビックリして目を覚ましたが、魔王さんの尋常じゃない感じを察して何て声を掛けていいか分からなくなっていた。


 ―――次の瞬間 私の体はネネさんごとふっ飛ばされ壁に叩きつけられた…。


 ドゴンッ!


「ふにゃ!」「『うっ』」


 えっ?なに?あれ?壁に叩きつけられたのに私は全然痛くない?もしかして痛覚は別?はっ!そんな事より。


(ま、魔王さん一体どうしたの?何があったの?)


『痛っっ、何者か知らんが窓の外から攻撃を受けた!とっさだったので自分が魔王の感覚で思わず【表】に出ようと思ったが、いやすでに出ておったのじゃが間違いじゃ。わらわと交代、変わるのじゃ、念のため【コンティニュー】持ちのお主が【表】の方が安心じゃろ』


(分かったわ、あっネネさんは?)


 ネネさんは私を抱きしめながら倒れている。息は…あるみたい。ホッとし、手でほっぺたを軽く叩いてみた

 

 ペチペチ


「あぁう、あぁう、あううあうあ?」(ネネさん、ネネさん、大丈夫?)


「っにゃ?いたたたた、にゃ?いったい何があったのにゃ?、何か窓の外から飛んできたのにゃ、あっルーララ様は!?」


「あぁうあ、あううあうあ」(私は大丈夫)


 当然私が何を言っているか分からないネネさんは私の体を調べだした。


「にゃ、大丈夫そうかにゃ?痛いところはないかにゃ?あんなに飛ばされたのに怪我が無さそうですごいにゃ!」


 私も自分の体を見てみたが全然大丈夫の様だ。きっと魔王さんの防御力1000のおかげね。


『―――気を付けるのじゃ!来たぞ!!』


 スタッ


 窓から見たことの無ない冒険者風の金髪男が1人入って来た。


「なんだ?獣人と、がきんちょだと?間違えたか?あの魔力の高さは【くそ盗人勇者】だと思ったんだけどなぁ、まあいいか」


「にゃぁ?一体誰にゃ?なんでこんなひどい事をするのにゃ!」


「にゃーにゃーうっせーな!、それにしても挨拶がてらだし手加減したとはいえ…ピンピンしてるじゃねーか?魔法壁か?」


 ダダダダダッ ガチャッ


「王女様ーーーぁ!大きな音がしましたが一体何が?」


「あぁうあ!!」(勇者様!!)


「おー居た居た、よー久しぶりだなぁ【くそ盗人勇者】様、ご機嫌麗しゅう!ひゃーはっはっはっ」


「―――貴方は?……誰ですか?」


「なっっ!へーそうかいそうかいそーくるか!俺みたいな雑魚は覚えていないってか…」


「……」


「ちっ、…では思い出していただける様、改めて自己紹介させていただきます。王都での貴方様との御膳試合でボロ糞に負けて、称号をはく奪され屋敷も追い出され、魔王を倒し俺様が貰うはずだった地位も名誉も金も女もぜーんぶ、貴方様にかっさらわれた哀れな【元勇者】ですよ。どうぞよろしくってな。ひゃーはっはっはっ」


(元勇者…また厄介な者が・・・・・来ちゃったなぁ…。魔王さん見たことありますか?)


『いや、わらわはないが、確かに中々厄介な物・・・・もっておるのぉ』


「あっ!あの時の…」


「どうやら思い出して頂いたみたいで光栄でございます」


 勇者様は壁に倒れ込んでいる私とネネさんを見て、【元勇者】をギロリと睨んだ。


「それでなんでこんな状況に…」


「おー怖い怖い!ただの勘違いでさ、てっきり【勇者様】だと思って、軽ーく【魔法弾】を打ち込んだだけですよ」


「【魔法弾】?こんな赤ん坊に【魔法弾】だって!!」


「やだなぁ軽ーくですって。その証拠に2人とも怪我してないでしょ」


 カチャリ


 勇者様は腰に差していた剣を抜いた。

 周りも騒がしくなってきた。多分他の護衛も異変に気づき駆けつけて来てるのだろう。


「まあまあ落ち着いてくださいよ。そういえばさっきその可愛らしい赤ちゃんを【王女様】って呼んでましたよねぇ」


 可愛らしいってもしかしたらこの人ただのツンデレでホントはいい人かも。


「もしかしてこの国のぉ―――オフィウクス王国の【王女様】ですかねぇ?」


「だったら?」


「やだなぁただの確認ですよ確認、御膳試合でボロ糞に負けた俺様から【勇者の称号】を剥奪した国王様のご息女様か如何かの」


 勇者様の纏っている空気が鋭くなったような気がした。


「怖いなぁ、やっぱり正面からだと勝てそうにないのでー今日は帰りますね!それではーーまた・・


【元勇者】は入って来た窓から飛び降りて出て行った。

 勇者様は剣を鞘に納め、窓に近づき【元勇者】が走り去ったであろう方を見ていた。


『お主!おい!どうした!?早よ魔法で攻撃するのじゃ!!後ろじゃ…おっお主気づいて居ったのでは無かったのか?しまったキチンと言っておくべきじゃった…』


(えっ?)


―――グサッ


「??にゃっ…」「??あぅあ」


『くっすまぬ…、わらわがもっと…』


 見ると私の胸とネネさんの胸に剣が貫通してた…。どうやら私はネネさんごと刺されたようだ。誰に…? 

 ネネさんの後ろにさっきまでこの部屋に居た【元勇者】の顔が見えた。


 ネネさんと私の胸から剣が抜かれた…。


 スッ ドサッ


 今の状況を察したネネさんは申し訳なさそうに涙を流しながら


「にゃ…拾って貰ったご恩を…ネネは返せなかったのにゃ…ごめんなさいにゃ…」


 そして赤ん坊の私をかばうように倒れた…絨緞に2人の血がにじんでいく。

 窓の外を見ていた勇者様は振り向き、何が起こったのか分からないような顔をしている。


「えっ?王女様ーー!!」


「ひゃーはっはっはっはっ、これで護衛失敗だなざまーみろ!!こりゃぁくそ国王様に怒られちゃうなぁ、ひゃーはっはっは」


「なんでお前がここに…さっき窓から…」


「ばーか!幻術だよ、げ・ん・じゅ・つ!俺様はあれから【幻術の魔眼】を手に入れたんだよ、まさかこんなに簡単に引っかかるとはなぁ、ひゃーはっはっは」


「なっ?幻…よっよくも…」


「今度こそホントにあばよ、ざまぁ!!!」


「誰が逃がすかーー!!」


―――パリンッ 何かが砕ける音が聞こえ【元勇者】はスーと光となり消えて行った…。


 魔王さんが何か言ってるけど…もう聞こえない…そして私の意識も消えて行った…。


 ……………

 ………

 …



 ガタンッ


―――壁に飾っていた立派な額縁の絵が床に落ちた。



【コンティニュー残り9】


【次の項目から1つ選んでください】


――――――――――――――――――――

1・自分のステータスの運アップ 

2・自分のステータスの攻撃力アップ

3・転移の石(転移先記録済み)      ←New         

4・錬金スキル:Lv1武具作成

5・土魔法スキル:Lv1クリエイトゴーレム

――――――――――――――――――――


 パチッ


 目の前に半透明な板が現れている。10日前に嫌になるほど何度も聞いた懐かしい音声が頭に鳴り響く…。


 あれ?

 そっか…

 また…

 ―――――――――――――始まるのね…


  

    べビべビべビべビべビベイビベイビベイビベイビべイベェ♪



               おちまい

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