第5話

「えっ!? 違いますけど!? 紹介しただけですよ?」


 オリンは心底分からないと言った表情で首を傾げてみせた。


「しらばっくれてんじゃないわよぉ~!」


 サーシャが絶叫する。


「そんなつもりはありませんが、どの辺りがご不満で!?」


「全部よ! 最初っから最後まで全部!」


「そう仰られても.. 」


「はぁ...」


 サーシャは蟀谷を指で抑えながら、長いため息を吐いた。


「いいわ...一から説明してあげる。いい? あんたが『紹介』だって言い張ってる破落戸どもはね、私を取り囲んでこう言ったのよ『よぉよぉ、お姉ちゃん。こんな夜更けに女の独り歩きは危ないぜぃ?』って」


「忠告してくれて良い人達じゃないですか?」


「まだよ! 最後まで聞きなさい!『良かったら俺達と良いことしねぇかい?』って言って来たから、私が『冗談じゃない! あんた達なんてお断りよ!』って言ったのよ!」


「え~とそれは...ツンデレ!?」


「違うわよ! 最後まで聞きなさいって言ってんでしょ! そしたらそいつらは『お高く止まってんじゃねぇ! おめえら、押さえ付けちまえ!』って言って、私のことを押し倒しのよ! どうよ!? これでもまだ乱暴じゃないって言うつもり!?」


 オリンはちょっとだけ首を捻って、


「えぇ、大人の恋の駆け引きではないかと...」


「ど・こ・が・よ!」


 サーシャは額に青筋を浮かべている。


「はぁ...分かりました。一万歩いや百万歩譲って強姦だったとしましょう」


「随分譲ったわね...」


「でもその後は和姦になりましたよね?」


「はぁ!?」


 サーシャはポカンとした表情を浮かべた。


「いえですから、最初はともかく途中からはあなたもその気になって、最後は自分から跨がって腰を振って来たって言ってましたよ?」


「そ、そんなことないもん!」


 サーシャが初めて焦りを見せた。


「娼婦よりも凄いプレイを堪能したって言ってましたよ? よっ! この床上手!」


「そんな呼び名は要らんわぁ!」


 サーシャがまた絶叫する。


「じゃあ『スケベナビッチ・オトコダイスキー』さんってお呼びしましょうか?」


「ブフッ! ちょ、ちょっと笑っちゃったじゃないの! ビミョーにありそうな名前なのがまた腹立つわね!」


「とにかく私は、オトコダイスキーさんにお似合いの男達を紹介しただけで他意はありません」


「その名前を推すのね...」


 サーシャはもう諦めの境地だ。


「あ、床上手さんの方が良かったですか?」


「もう勝手にして...」


「あの連中があなたのことを忘れられないから、もう一度紹介して欲しいって言われているんですが。あれ以来、どこの娼館に行っても全然満足できないそうで」


「全然嬉しくない! 絶対お断り!」


 サーシャの絶叫が三度響き渡った。


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