第4話

「ケイン様は認めたというか、墓穴を掘りましたけど、あなたはこれでもまだ認めないのかしら? サキュバスさん?」


 エリンが小馬鹿にしたような口調で責める。


「その呼び方止めてよ! 認めるわ! 認めればいいんでしょ! でもね! スズメバチの巣を放り込むのはやり過ぎだと思うの! 色んな所を刺されて、あの後大変だったんだから! それに私がアナフィラキシーショックを起こしていたら、どうするつもりだったのよ!」


 完全に開き直ったサーシャが逆にエリンを責める。


「あら、私としてはショック死して欲しかったんですが残念でした」 


 エリンがサラッと怖いことを言う。


「鬼! 悪魔! 人非人!」


 サーシャが騒ぎ立てるが、それを無視してエリンは続ける。


「いずれにしても、これで他の曜日の方々との肉体関係も立証できましたわね」


「それはっ...」


 サーシャが言葉に詰まり、囲んでいる男性陣は目を伏せた。そこへ更にエリンは追い討ちを掛ける。


「ケイン様、曜日が上がるといいですわね。せめて火曜日か水曜日くらいに。頑張っ!」


 ついにケインは踞ってしまった。


「まぁまぁ、エリン様。これ以上煽らない方がよろしゅうございますよ? 寧ろ変な病気を伝染される前に縁を切った方がよろしいんじゃございませんこと?」


 そう言ってアリンの側にやって来たのは、子爵令嬢のオリンである。ちなみにカインの取り巻きの一人、教会司祭子息の子爵子息コインの婚約者である。


「お、オリン。そ、それはどういう意味だい?」


 コインが自らの下半身を抑えて怯えながら問い掛ける。


「いえね、私が紹介した男性の方々が口々に『あれは性欲の権化だ』とか『性欲魔人だ』とか『性欲の塊だ』とか仰るもんですから、相当に遊び回っているのは事実のようです。なので何かしらの性病に罹っていても不思議ではないかと思いまして」


「はぁ!? なに訳の分かんないこと言ってんのよ? あんたなんかに男を紹介して貰ったことなんて無いんですけど?」


 サーシャは可憐な乙女の皮を完全に脱いだようだ。はすっぱな言葉遣いになってしまっている。


「あら? ちゃんと紹介しましたわよ? 夜中に町の路地裏で」


「あ、あれはあんたの差し金かぁ! 皆さん、聞いて下さい! 私はこの女が仕向けた破落戸に乱暴されたんです! 怖かったぁ! 殺されるかと思ったぁ! カイン様ぁ! この女を捕まえて下さい~!」


 サーシャが涙ながらに訴える。


「えっ!? あぁ、そのなんだ...オリン嬢、事実なのか?」


 カインはもうどうでも良さそうな感じで聞いた。

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