③やって来た来た!恐竜娘

 第二新大陸からやって来た、プロペラブーメランの女子高校生が言った。

「よろしく、オレの名前は【ジュラ・光輝こうき】」

「あっ、こちらこそ。よろしく……カキ・クケ子です、傭兵やっています」

 第二新大陸から来た男のに挨拶をしたクケ子は、眼窩で光輝を凝視する。

(オレ? オレ女子の女の子かな?)

 クケ子が、疑問視をしているのを感じた光輝が言った。

「オレ、こんな格好しているけれど男ですよ……オレが通っている、第二新大陸の学校は、恐竜娘ばかりでオレみたいな男で生まれるのは珍しくて、男の制服が無いから女子の制服で通している漢だから……ちゃんと、男モノのパンツ穿いていますから、ご心配なく」


「そうなんだ」

 今度は光輝が、クケ子の二の腕骨を凝視しながらクケ子に質問した。

「この大陸には歩き回るガイコツは多いの?」

「いや、そんなにガイコツは歩いていないと思うけれど……あたしが会ったのは二体だけだから」

「腕の骨、触ってみてもいい?」

「別に構わないけれど」

 光輝はクケ子の赤い上腕骨をさする。

「骨密度が高い、骨太のいい骨だね……泥の堆積物の中に横たわっていたら、お姉さん最高の化石になりそう」

「あ、ありがとう」

 クケ子は、いい化石になれると誉められ、複雑な気持ちになった。


 光輝が言った。

「さっき、ぜらの魔女さんから聞いたけれど。温泉宿を探しているのなら、うちのひいひいおばあちゃんがやっている温泉宿なんかどう? ここから近いから案内するけれど」

「助かるわ、お願いする」

 クケ子たちは、光輝に案内されて、光輝の三百歳の祖母がやっている温泉宿に向かった。


 実はこの時、温泉村にはクケ子を狙う魔勇者の娘配下の、根性腐れ勇者たちの数グループと。

 第二新大陸から秘かにジュラ・光輝を追って温泉村に来ていた、恐竜娘数人がいた。


 魔勇者の軍門に下り、今は魔勇者の娘『甲骨』の配下に成り下がった。

 異世界パーティーのリーダー格グループ数十名が、温泉村の足湯に並んで浸かっていた。


 全身甲冑で膝から下の防具を外した、素足で足湯に浸かっている、腐れ騎士が呟く。

「甲骨さまが、今度パーティーのメンバーごとに分けた軍団を作るって言っているしな……その前に、赤いガイコツの傭兵女を倒して株を上げておかないとな」


 ビキニアーマーで海賊帽子をかぶった、女海賊勇者が続いて喋る。

「ここで、ガイコツ傭兵を倒しておけば。甲骨さまから、一目置かれるかも知れないね」


 数枚の盾で体を囲った、防御専門の無口なへたれ武人がうなづく。


 片肩吊りの腰毛皮を身につけて、全身に絆創膏を貼った。

 石器の打撃武器を持つ蛮人戦士が足湯の惚けた顔で言った。

「ふぅ……赤いガイコツ女を倒した者が、リーダー軍団の軍団長になるってのはどうだ? オレたち一度はパーティーのリーダーを務めたスキルがあるんだから、誰が軍団長になっても異存はないだろう」


 足湯を陣取って並んで座っている、数十名のリーダーたちはうなづく。

 いわゆる彼ら彼女たちは魔法などの特殊技能を持たない、肉弾派の連中だった。

 せいぜい、必殺技の名称を叫んで、技を繰り出すことくらいしかできない。


 鎧の中がサウナ状態で隙間から湯気が出ている。腐れ甲冑騎士が、自分が座っている周囲を見回して何かを探す。

「あれ? 近くに置いてあったオレのランチボックスが無い?」

 ふっと、少し離れた場所に目を向けると、平らなオブジェ石のベンチの上に胡座あぐらをかいて、金属製のランチボックスの中に入っていた食べ物をモグモグ食べている女子高校生の姿があった。

 恐竜の尻尾が生えていて、工事現場のヘルメットを頭にかぶった恐竜娘だった。

 女子高校生の近くに、ボストンバックが置かれているところを見ると旅行中の女子高校生らしい。


 甲冑騎士が怒鳴る。

「てめぇ! オレの弁当なに勝手に食ってんだよ!」

「あれ? 落ちていたんじゃないの?」

「弁当が落ちているワケねぇだろう!」

「えへへっ、完食しちゃった」

 ヘルメットをかぶった、恐竜娘が見せた空のランチボックスに激怒する、器が小さい腐れ甲冑騎士。

「ふざけるなぁ! 小娘! 弁当返せ!」


 甲冑騎士は、足湯から素足のまま飛び出すと、恐竜娘に向かって剣を向けて走る。

 女子高校生相手に剣を抜く、最低の男だった。

 ヘルメットをかぶった恐竜娘──パキケファロサウルス娘は、軽く剣先をかわすと。

 強烈な頭突きを甲冑騎士の胴体に浴びせた。

「ぐがぁぁぁ!」


 頭突きの衝撃で甲骨騎士が吹っ飛んだのを見た他のリーダーたちが、足湯から立ち上がって怒鳴る。

「ふざけやがって!」

「やっちまぇ!」


 武器を構えて、女子高校生相手にいきり立つ、リーダーたちの耳に別の女子高校生の声が聞こえてきた。

「探したよパキ、あれだけ野蛮なレザリムス大陸で、面倒なコト起こすなって念を押したのに……もう、厄介事?」


 インテリメガネをした女子高校生の恐竜娘と、首筋から背中にかけて飾りトゲが並んで生えている、おっとりとした雰囲気の恐竜娘が立っていた。

 パキケファロサウルス娘を『パキ』と呼んだ、知的な女子高校生が言った。

「あたしたちが、この野蛮大陸に来た目的はわかっているでしょう。

光輝くんの身に万が一のコトがあったら、第二新大陸の大きな損失よ」

 野蛮と言われて、リーダーたちが激怒する。

「ふざけるな!」

「いったい、なんだお前たちは! 第二新大陸だと! あぁ、あの未開の田舎大陸か」

 未開の田舎大陸と言われた、知的なメガネ女子高校生の両指から尖った爪が生える。

「そこまで言われて引き下がったら、第二新大陸の名折れ……アポは、しゅね!」

 長い爪の恐竜娘──テリジノサウルス娘が戦闘体勢に入る。


 おっとりとした雰囲気の恐竜娘──アマンガサウルス娘が、中国武器の縄鏢じょうひょうみたいな、忍具のクナイに縄をつけた武器を取り出して言った。

「あらあら、委員長は……偏差値が低そうな殿方には、相変わらず容赦がないですね……しかたがない、レザリムス大陸の方々と軽く手合わせしてみますか」


 パキケファロサウルス娘

 テリジノサウルス娘

 アマンガサウルス娘の三人と、根性腐れのリーダーたちが激突した。

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