第11話 シャラは愛娘が生贄にされると聞いて我慢が限界に達しました

それから18年が経った。


シャラは未だに無限地獄で苦しんで??? いた。


太くなった腕には剣を2本持ち、今日も鬼どもと戦っていた。


「どりゃーー」

「ギャアアア」

切られて鬼が叫び声を上げて事切れていた。


「おのれ」

シャラの剣がもう一閃する。


次の鬼が切られて吹っ飛んでいた。


シャラも最初はおしとやかな女の子だった。そこに目をギラつかせた鬼が襲いかかってきたのだ。条件反射で針山の剣を折り取るとその鬼の胸に突き刺していた。

地獄では何故か魔術が使いにくかったが、元々シャラは剣も幼馴染のビリーと一緒に小さい頃から慣れ親しんでいたのだ。シャラは襲いくる鬼達相手にその腕前を更に上げていった。そして、地獄の環境にも慣れてからは、魔術も徐々に使えるようになって今に至る。



「おのれ、コニーめ。良くもクローディアにあのようなことを、絶対に許さんぞ」

地獄で鬼から取り上げた遠眼鏡でシャラは愛しのクローディアの様子をよく見ていた。

最初はクローディアを可愛がっていたコニーらだが自らの娘が生まれると態度はガラリと変わったのだ。


「何が命に代えても大切に育てますだ。コニーのやつ、絶対に許さん」


それを見た後のシャラの荒れようは凄まじく、本当の無限地獄とかしていた。


自分の子供が生まれてからコニーのクローディアに対する態度は本当に酷いものだった。シャラは自分の判断ミスを悔やんでも悔やみきれなかった。


こんな事ならコニーを可哀想だとほだされて生贄を代わってやるのではなかった。


アイツを生贄にしてさえいれば、自分は今もかわいいクローデイアと一緒に生活できていたのだ。伯爵家で大切に育ててくれるならばとコニーを信用したのが間違いだった。泣き崩れるコニーが可愛そうだと思ってしまったのが間違いだった。クローディアに対する扱い、あれでは伯爵家の使用人いかではないか。あのコニーの野郎、絶対に許さん。


と息巻いていたが、神と約束したにもかかわらず、シャラは地上へは復活出来なかった。これは完全に詐欺ではないか。クローディアが幸せで無くなったら地上界に復活させてもらえる約束なのに。鬼どもを脅して閻魔に掛け合わせるもそんな事は知らんの一点張りだった。


国王との約束も国王が亡くなってからはそれも怪しくなってきた。皇太子がコニーの娘のアデラに惹かれ始めているのだ。

「おのれ、あの貧乳王妃め。またクローディアを辱めおって、私が地上に復活した折には絶対にギッタンギッタンにしてやる」


シャラは憤りに任せて剣を振るった。相手にされる鬼どもにしたらたまったものではなかった。昔は無限地獄に勤務することは鬼どもにとって憧れだった。何しろ公に人を殺せるのだ。それが今では殺されに行くようなものだった。無限地獄に行かされると聞くと鬼はそれだけはやめてくれと泣き叫ぶようになった。無限地獄はもはや人にとっての地獄ではなくて、鬼どもにとって無限地獄になっていたのだ。



地上では唯一ジャルカだけは、口は悪いがシャラの遺言を守って、きちんと娘に魔術を指導してくれていた。その嫌味な口ぶりは許しがたかったが、これは仕方がなかった。

元々ジャルカとは何も約束していないのだ。そもそも、ジャルカに何も相談せずに生贄を代わったシャラが悪かったのだ。



「シャラの姉御大変だ」

そこへ、ノルディン族の子分で怪力のステバンが飛び込んできた。

そう、鬼相手に奮戦するシャラはいつの間にか無限地獄の救世主となり、無限地獄の牢名主になっていたのだ。


「どうしたステバン」

「姉御の娘が生贄にされるそうだ」

「何だとクローディアがか」

「鬼どもが噂していた」


ピキッとシャラの中で何かが切れた。

あの愛しのクローディアが、シャラのように生贄にされる。何故だ。それではシャラが生贄になった意味がないではないか。シャラは思いっきり歯ぎしりした。


「もう許さん」

怒りに燃えたシャラが立ち上がった。


あれだけ命に代えても娘は守ると言っていた娘を生贄にするだと。


シャラの我慢の限界が来た。


「野郎どもを全て集めろ。今から地獄の門を突き破る」

剣を握ってシャラは静かに言った。


「しかし、姉御、地獄の門の前には閻魔がいるぞ」

そう言うチェレンチーをギロリとシャラは睨みつけた。


「ヒィィィぃ。わ、わかりました。すぐに全軍集めます」

チェンバレーはシャラにこれだけ恐れを抱いたことはいまだかつて無かった。こんな怒りをぶつけられたら閻魔でも耐えられそうに無かった。


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ついにシャラの怒りが炸裂します

本日もう一話更新予定です

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