第36話 上告控訴趣意書②

 以下,原告供述と目撃者供述の信用性について詳論する。


第3 原告及び目撃者証言の信用性

1 原告証言について


⑴ 原告証言の概要

 原告の供述によれば,被告人が原告の身体を触ったのは,原告が腹筋台で腹筋をしている時と,前屈をしている際の2回であり,そのうち腹筋台で腹筋をしている際の接触行為は,被告人が『原告の膝から太ももにかけて触った』という内容なので,公訴事実記載の犯行内容にはなりえない。


 一方,原告が前屈をしている際,被告人は右手で原告の『お尻からつけ根まで撫でるように』触ったというのであり,これは検察官の誘導質問を前提とすれば『太もものつけ根からお尻の左真ん中あたり』という意味であり(122丁,123丁),その態様は『撫で上げられた』(128丁)というものであった。

 但し,原告は前屈状態であったので,被告人が実際右手で触ったところを目視したわけではなく,上記の記憶はあくまでも、接触した際の感覚的なものであるし(121丁),被告人の手と原告の臀部との接触回数は1回(128丁),時間にして1秒未満である(127丁)。


⑵ 原告証言の信用性

 被告人供述と原告証言は,原告が前屈動作をするに至った経緯や言葉のやりとりなど,細かい点においては不一致もあるが,被告人においても,原告が前屈をしていた際に,右手で原告の太ももに触れ、手を上にスライドさせていった際に,親指の上(指先という意味か)あたりが原告の足と臀部のつけ根あたりに当たった可能性を認めているので,原告供述のうち殊上記⑴記載の部分に限定するならば,概ね信用できる。

 但し,原告はあくまでも被告人が臀部に触れる行為を目視したわけではないので,裁判所の『太ももからお尻にかけて、撫で上げられたという感じですか』の問いに対して『はい』と答えた部分は,原告が『撫で上げられたように感じた』という程度に理解するべきである。


 また,原告は本件より前も被告人から『セクハラ発言とか,肩とか手を触られたことはありました』(但し,被告人は否認)と述べていることからして(125丁),原告が被告人に対して、悪い感情を抱いていることは明らかであるから,原告供述と被告人供述が一致しない部分については,原告供述の信用性を安易に認定することはできないし,被告人供述を安易に排斥することもできない。


2 目撃者供述の信用性


⑴ 目撃者供述の概要

 目撃者供述の概要は以下のとおり。


・目撃者は本件当時,Kスポーツジムのカウンター受付業務に従事しており,当初は原告と被告人の様子を鏡越しに見ていた(130丁)。


・原告がいたカウンターから鏡までは12.3メートルあった(135丁)。


・原告が腹筋をしている際,被告人は原告の肩を触ったり背中を触っていた

(131丁)。


・原告が前屈をしている際,被告人は原告の左側のお尻を右の掌で上下に手

を動かして触っていた(136丁)。


・目撃証人は鏡越しからも,また直接的にも被告人が原告の臀部を触っている

ところを見た(137丁,142丁)。


・目撃証人が受付カウンターからマシンジムエリアに移動する時間は4秒か

ら5秒程度である(142丁)。



to the next Episode.



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